見出し画像

大事な場面で“楽しむ”ことができる人の特徴。適度な緊張をコントロールする。

皆さん、こんにちは。今回はこちらのお題企画「#スポーツから学んだこと」について書かせていただきます。

WBCで日本が前回王者の米国を下し、3大会ぶり3度目の優勝を果たしたばかりですが、日本中が熱狂の渦に巻き込まれた中、家族全員が野球好きの我が家にとっても3月は大熱狂、大興奮、大感動の日々を過ごしました。

日本を代表するスター選手たちの姿は、日本の多くの人に夢や感動を与えてくれ、「優勝」という結果以上に、彼らの礼儀正しさ、関わる人への感謝や敬意、チームで一つの目標に向かって心を一つにする大事さも改めて教えてくれました。

改めて、スポーツから学べることとは何なのか。
なぜスポーツ選手はあのような極度の緊張やプレッシャーがかかる場面で、いつも通り、もしくはいつも以上のパフォーマンスを発揮できるのか。
そしてそこから私たちは何を学び、どのように日常生活の中で意識していけば良いのかについて、考えていきたいと思います。


■スポーツを通して得られるものとは

「スポーツを通して得られるもの」を考えると、以下のような項目が挙げられます。

スポーツを通して得られるもの

1、チャレンジ・・・目標を掲げてチャレンジすること(できないことをできるようにする、新しいことに挑戦する)
2、コミュニケーション・・・適切なコミュニケーションをとること(教えてくれる人、チームメイト、対戦相手などと対話を通して成長する)
3、感謝/敬意・・・相手を敬い感謝の気持ちを持つこと(教えてくれる人、支えてくれる人、一緒にプレイする人、道具、環境などに感謝する)
4、モチベーション・・・モチベーションを持ち自分を奮い立たせること(やる気、根性、情熱などを維持・向上させる)
5、チームワーク・・・仲間とともに協力し合いチームワークを育むこと(チームの中で求められていることを理解し、調整・連携などを行う)
6、自信/勇気/覚悟・・・勇気や覚悟を持って物事に取り組むことで自信をつけること(少しずつ成長していく過程で自分に自信をつける)
7、個の理解/尊重・・・それぞれの強みや弱みを理解すること(人それぞれの個性などを受け入れて理解し、尊重する)
8、変化対応・・・変化に適応すること(どうすれば勝てるのか、どうすればより良くなるかを考えて行動する)
9、規律性・・・ある程度の規律の中で自分を律すること(決められたルールを守る、人との約束を守るなど自分自身を律して行動する)
10、メンタルコントロール・・・緊張する場面でも力を発揮すること(緊張やストレスに打ち勝ち、本番で練習の成果を発揮する)


このように、スポーツを通して得られること、学べることは多く、特にチームスポーツにおいては、対人能力を伸ばし、個々の違いを理解し、その違いから自分を知り、相手を知り、勝つための戦略を立て実行するといった、社会に出てからも確実に必要な能力を身につけ、成長する機会となります。

■仕事を楽しめる人と楽しめない人の違い

好きなことを仕事にすることは本当に素晴らしいことですが、「仕事」となった瞬間に数字に追われたり、責任が発生したり、日々極度のプレッシャーに追われて、とてもではないけれど「楽しむ」ことはできないという人は、どのような職業においても多いと思います。

それでも“楽しむ”ということができる人も中にはいるのかもしれません。同じ仕事をしていても、仕事を楽しめる人と楽しめない人がいますが、仕事を楽しめる人に共通する特徴とは何でしょうか。


◎当事者意識を持ち、仕事に対してやりがいや充実感、成長実感を持っている
→当事者意識を持って仕事をすると、自分の仕事に対する責任感が生まれ、どのように行動すればどのような結果になるかを考えて行動をすることができます。そうすると、目的を達成するために様々な困難を乗り越え、問題を解決する能力が向上し、やりがいを感じやすくなり、“楽しむ”状態を確立しやすくなります。

◎自分が求められていることを理解し、期待に応えようとしている
→自分がどのようなことをチームや組織から求められているかを的確に理解し、その期待に応えられるように一つ一つ仕事を重ねていくと、自分の信用も高まり、より重要な仕事を任されるようになっていきます。その積み重ねで良い循環を作れると、さらに評価が高まっていき、どんどん仕事を楽しめるようになっていきます。

◎目標の置き方を工夫できている
→目の前の仕事を義務やタスクだと思ってしまうと、仕事が一気につまらなくなってしまいます。自分なりにモチベーションを高められる目標を設定し、自分に合ったやり方で成果を出していくと、どのくらいの負荷をかければどのくらい自分が耐えられるか、どの程度の目線を持つことがベストなパフォーマンスを引き出せるかが分かってきます。

◎失敗を引きずらない
→一度失敗すると「また同じ失敗を繰り返すのでは」と心配になります。そんな時に良くないことが起こると「この先も悪いことが続くのでは」と余計心配になっていきます。落ち込んだりイライラしたりすることからは避けられませんが、早い段階で不安を解消したり、気持ちを切り替えられるような、自分にあったやり方や習慣を見つけることができる人ほど、仕事を楽しめる傾向にあります。


仕事は楽しむものではないという考えの人もいるかもしれませんが、人生の中でも長い時間を仕事に投じるわけで、やりがいやワクワクする瞬間が多々あり、楽しみながら仕事に向き合える時間が長いに越したことはありません。

■緊張をコントロールするには

スポーツ選手でも今回のWBCやオリンピックのように、世界を相手に戦うというような大舞台を前に、緊張する選手の方が多いはずですが、そんな中でも結果を出せる人もいます。極度のプレッシャーやストレスがかかる場面においても、本来持っている力を発揮するにはどのようなことを意識すると良いのでしょうか。

「自分にとってのルーティンを作り、決めたことをこなすことで余計なことを考えないようにする」人もいれば、「リラックスできる方法を見つけ、自分にとって緊張を和らげる方法を実践する」人もいます。逆に「緊張を抑制するのではなく、自分を奮い立たせることで緊張感をあえて高める」人や、「緊張していることを自分自身に理解させながら、緊張とともに集中力を引き出す」人もいるでしょう。緊張やストレスのコントロールの仕方は人それぞれなのです。

◎平常心を保つための自分なりのやり方を見つける
→緊張感のある場面でこそ、いつもと同じような行動をとり、いつもと同じような環境に自分をセットすることで心を落ち着かせる方法があります。

◎ポジティブな自問自答をする
→自分で自分に問いを投げかけ、心の中でポジティブな回答を意識的にしていく方法もあります。たとえば、野球の場面であれば「ここで打てなかったらどうしよう」と思うよりも「とにかくバットに当てればチャンスが出てくる」などと、ポジティブに自分の中で会話していくのです。

◎ネガティブなイメージを極力捨てる
→「ここで打てなければ自分のせいで負ける」などと、打席に立つ前から必要以上に自分を追い込み過ぎる必要はありません。追い込むことで自分の可能性を狭め、勢いや挑戦心までをも失いかねません。自信を持って打席に立てるように、それまでの練習を通して不安要素を極力払拭することも大事です。

◎複数のパターンのシミュレーションをする
→「このパターンの場合はこういう対処をする」ということが、綿密に頭の中でシミュレーションできていれば、緊張してもし過ぎることはありません。全く考えていなくてどうすればいいか分からないという状態を回避し、できるだけ用意周到に対処法を考えた上で、安心して本番に臨むことが重要です。

◎緊張を味方につける
→緊張していることは決して悪いことではないため、「今、自分が緊張している」と自覚し、緊張し過ぎない程度に、ほどよく緊張している状態を維持しようとする方法もあります。「適度に興奮している」「適度にワクワクしている」状態が心地良い状態であると体も心も認識できるようになると、適性状態でパフォーマンスを発揮できる確率が高まります。


このように、大事な場面において緊張が高まるのは、その場面が自分にとって大事なものとしてしっかり認識できているからであり、パフォーマンスを発揮する準備ができているからとも言えます。

「緊張すること」をネガティブなものとして捉えず、適度に緊張への肯定的態度を身に着けていくことが重要だと思います。

『良い緊張は、パフォーマンスを最大化させる』。これを理解しておくだけでも、適切なセルフコントロールができるようになる第一歩となるのではないでしょうか。

■プレイヤーの力を引き出す上で、一番大事なこと

栗山監督の采配も大会を通じて素晴らしいものであったことは誰の目にも明らかですが、インタビューの中で度々出てきた言葉として、「選手をリスペクトして、あとは信じるだけ」「必ずやってくれると信じていた」という、選手らを絶対的に信頼し、最後まで信じ抜くという言葉が非常に印象的でした。(もちろん信じるだけの準備もしているはずで、相手を徹底的に分析し、選手が最大限の力を発揮するための環境も整えていることが前提です。)

監督として“押し付ける”指導を一切せず、個々の良さを引き出し、「選手の可能性を信じ、それをサポートしていくだけ」という今の時代にも合った指導スタイルが、選手一人ひとりの意欲や勝ちにこだわる気持ちだけでなく、チームの結束や一体感をも高め、最終的に「優勝」という結果にもつながったのだと思います。

負けたら終わりという緊張感のある試合の中で、若手選手が臆することなくメジャーの一流選手に立ち向かっていく姿は、このような言葉や姿勢があってこそではないでしょうか。まさに、チームを監督・指揮する側の立場としてプレイヤーの力を最大限発揮させるために一番大事なことを教えてくれたような気がします。

「日本の野球が世界に通用する、勝てるんだとみんながひとつになったこの期間、本当に楽しかった」

という大谷選手の言葉。さらに、

楽しく野球するところをファンに見てもらうことが大事」

というダルビッシュ選手の言葉。

記事の中には、

近年はプロでも少年野球でも強権的な指導者中心のスタイルが受け入れられなくなっている。裾野を広げるためには野球の楽しさを感じてもらい、個を重んじる視点がカギを握る。一般社会の変化を表した縮図と言えるような大会だった」

とあります。さらに、

ヌートバー選手の活躍について、元グーグル人材開発担当で経営コンサルタントのピョートル・グジバチ氏は「国籍や性別など多様な視点を尊重するダイバーシティー&インクルージョンのチームの姿勢がプレーに良い影響を与えたのだろう」と分析する。
生産性の高い組織には「安心して意見を言える『心理的安全性』がある」という。大谷選手が若手に「ため口」での会話を呼びかけたり、ベテラン選手が食事会を開いたりしたことがメディアで伝えられており、「チームが優勝に向かってまとまることができた要因ではないか」と話している。

ともあり、現代の社会、各企業において重要視されているような、「多様性」「個の尊重」「ダイバーシティー&インクルージョン」「心理的安全性」などという言葉が並びます。

話を元に戻すと、スポーツでも仕事でも「純粋に楽しむこと」「その楽しむ気持ちを多くの人と共有すること」が、人生を豊かに、そして充実させるために大事な部分であり、「なぜ一生懸命になるのか」「なぜ働くのか」を考えた時に、人が立ち戻る原点のようなものでもあるように思います。

繰り返しになりますが、スポーツから学べることは多々あれど、今回のWBCを通して、日本の選手らが「少年のように純粋に野球を楽しむ姿」が多くの人の心に強烈なインパクトを残したことは間違いなく、「真剣勝負の中においても楽しむこと」こそがスポーツの醍醐味であり、スポーツによって人の心が動く理由でもあり、スポーツから学べることではないでしょうか。



#日経COMEMO #NIKKEI


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?