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パーパスを明確化し、CEO,CHRO等の経営陣主導で、経営戦略と連動した人材戦略の策定実行する(人材版伊藤レポート③:経営陣が果たすべき役割・アクション)

こんにちは。弁護士の堀田陽平です。

広島での出張を機にワーケーションをしてみました。

さて、今回は、私が経済産業省の産業人材政策室(今は「課」)で執務しているときに担当した人材版伊藤レポートの解説の第3弾として、「経営陣の果たすべき役割・アクション」について書いていきます(情報開示の点は、別記事でまとめて書きますので今回は省略します。)。

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今回から、人材版伊藤レポートが求める具体的なアクションに入ってきます。人材版伊藤レポートの問題意識や課題背景は以下をご覧ください。


“パーパス”を定め、浸透させる


人材版伊藤レポートでは、経営陣が果たすべき役割・アクションとして、まず「企業理念、企業の存在意義(パーパス)の明確化」を挙げています。

これまでの解説で書いているように、これから質的にも量的に多様な人材が活躍していくことが求められます。
そうした“多様な人材”を組織に惹きつけるためには、全員に合った個別的な施策を設定することは難しく、抽象度を上げ、企業の存在意義、パーパスへの共感が必要となってきます。
特に、ミレニアル世代以降の若年者層は、「その企業・組織に属することで社会にどのようなインパクトを与えることができるか」という点を重視するといわれおり、こうしたパーパスを明確化し、浸透させることは、今後、人材を獲得していくうえで重要になってきます。

経営戦略と連動した人材戦略の策定・実行

人材版伊藤レポートでは、「経営上の課題と人材課題が密接に関連している」という前提のもと、経営戦略と人材戦略の連動を強く要求しています。

もともと、日本型雇用慣行も当時の経営環境に照らせば、「経営戦略と人材戦略が連動していた」といえ、日本型雇用慣行自体が悪いわけではないと思われます。

問題であるのは、経営環境は劇的に変化し、経営戦略もまた変わっているにもかかわらず人材戦略は旧来の雇用慣行を前提としたものとなっていることでしょう。

そうした問題意識から人材版伊藤レポートでは、経営戦略と連動した人材戦略を策定・実行することを求めています。
具体的には、例えば経営戦略上デジタル化が急務であるとした場合には、①「デジタル人材の獲得・育成」といった重要な人材のアジェンダを策定、②将来的に目指すべき姿(To be)に関する定量的なKPIを設定(〇〇年までにデジタル人材を〇万人とする等)、④現状(As is)と将来の姿のギャップを定量化、そして、⑤そのギャップを埋めるための人材戦略を策定・実行する、ということを求めています。

(参考事例)株式会社日立製作所では、グローバル化、デジタル化の中で新たな価値を創出するため、グループ・グローバル共通の人財マネジメン
ト基盤の整備等、CHRO が主導しながら、経営戦略から重要な人材
アジェンダを特定し、KPI を用いて変革を推進。

CEO、CHRO等の経営トップとの密接な連携
また、人材版伊藤レポートでは、経営戦略と人材戦略は密接に関連しているとの理解のもと、経営上の戦略を検討する際には、CHRO(Chief Human Resource Officer)とも連携し、CHROはこれに積極的に関与すべきであるとしています。
なぜなら、以下に素晴らしい経営戦略を策定したとしても、これを実行するためには、「人」 が必要であるからです。

しかし、これまで日本企業では、経営戦略の意思決定に人事部門が関与していなかったという実態があります。

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さらに、人材版伊藤レポートでは、CEO、CHROだけでなく、CFO、CSO、CDOといった経営トップ(人材版伊藤レポートでは「5C」と呼んでいます。)とが日ごろから連携すべきとしています。

(参考事例)株式会社サイバーエージェントでは、毎週2時間の役員会議を行い、人材に関して KPI の進捗状況や社員アンケート結果について議論。
アジェンダに応じて参加する役員は変わるものの、社長、副社長、経営本部役員、人事担当役員はコアメンバーとして必ず参加。

今後、CHRO人材の育成、設置が重要となる

上記のように人材版伊藤レポートでは、「経営戦略と人材戦略とは密接に関係している」という理解のもとで、経営戦略と連動した人材戦略を構築することを求めています。
そこで重要となってくるのは、CHROの役割であるといえます。
そもそも、日本においては、CHROの設置がまだ進んでいない現状にあります。

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これは、CHROという存在がこれまで認知されていなかったこともあるでしょうが(現在は認知も広がっていますが)、なによりCHROになり得る人材が不足していることが要因の一つとして挙げられるかと思われます。

CHROは、単なる「人事部長」としての人事のプロではなく、経営層の機関のひとつとして、経営的視点をもつことが求めれ、人事一本のキャリアパスだけでなく経営判断も行うキャリアも経験させながら、CHROの育成を進めていく必要があります。

CHROに求めらる資質については、以下の日立製作所での考え方が参考になります。

株式会社日立製作所では、「CxO は CEO。CEO で HR 関係を担当
するのが CHRO、CEO でファイナンスを担当するのが CFO」との
考えの下、CHRO についても、人材戦略だけでなく、事業に関する
も知見・経験も求めている。

次回は、取締役会が果たすべき役割・アクションについて書いてきます。

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