『ザ・フォーミュラ』というアルバート=ラズロ・バラバシ教授の本を読んだ。社会現象をデータから解析する中で見えた法則性を解説したもので、自己啓発本とは一線を画す内容に、いろいろと頭を刺激されてところがあった。

一番印象に残ったのは、第10章。成功に年齢は関係ないことがデータから示されたという。この分野で成功するには何歳まで、というような説をよくきく。しかし、データはこれを否定し、何歳まででも成功できるという。ただし、一般的な傾向として、年齢が高くなると、生産そのものが低下することが多いので(例えば論文の執筆数)、成功しにくくなるだけである、という結論である。ただ生産をし続ければ、成功の女神は若い人と同じようにやってくるという。

これは年齢を重ねた私のような人間には、大変心強い結果である。この本でもとり上げているが、過去にも葛飾北斎という大変素晴らしい実例がある。北斎は89才まで生き、その有名な最高の作品は、晩年の20年になってからだ。ドラッカーもそうである。有名な本の執筆は、ほぼ50代からで、90代までその創造力と質は落ちずに、むしろ高まっていったようにも見える。

年齢とともに成功に有利になる要因もいろいろある。明らかに、年齢とともに高まっているのは、人との繋がりである。これは段々蓄積していくのと、社会的な地位が高まることによると思う。更に、私の実感でいうと、年齢とともに明らかに高まっているのは、前向きなストーリーをつくる力である。視野が広くなるので、その気になれば、物事を前向きに捉える見方を見つけることができる。

最近、個人的にも年齢と成功との関係を再認識する体験をした。私は、人工知能やデータ解析に関する基本的なブレークスルーに関する論文を現在投稿中である。しかし、NatureやScienceなどの一流の論文誌に投稿しているが、なかなか通らない状況が続いてきた。過去8年間に約20回ほど投稿したが、一次審査(エディターの審査)を通らない状況が続いてきた。ただ、投稿して拒絶されるたびに、中身はさらによくなっているのが唯一の希望だった。論文を書ける年齢ではなくなったのでは、という懸念も正直どこかにないではなかった。ところが、先日、約21回目で、なんと一次審査に通った。今後さらに厳しい専門家の審査があるので、まだ落ちる確率の方が高い状況であるが、ともかく一つ殻を破れたのは素直にうれしいし、今後のさらなる挑戦への勇気を与えてくれる結果だった。そして、この本の結論が、これをデータで裏付けることで、次の挑戦への勇気をさらに高めてくれた気がする。

バラバシによる成功の法則は「不屈の精神があれば、成功はいつまでもやってくる」。不屈の精神をいつまでも持ち続けたいものだ。

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