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動機・パッション・ミッションの重要性:リソースを持たざる起業の強み

仕事柄、様々な事業について、その苦労やあるいは事業を始めることの難しさといった話題に接する機会も少なくない。こうした際に、様々なリソースの不足が一つのハードルとして挙げられる。資金はもとより、人材やスキル、知識、さらには文化や土地柄といったものまで、事業におけるキーとなるリソースは幅広い。

一方で、リソースを持つがゆえにうまくいかないのではないか、と思うこともある。特に一定の経験を積んだ人、スタートアップであればいわゆるシニア起業と呼ばれるような若い人ではない起業家のスタートアップについて、そうした傾向があるのではないかと感じることがある。

社会経験を積んでいれば、それまでに関わったビジネスについての知見や土地勘というものがあり、また仕事の中で生まれた人脈があったり、 その過程で稼いで貯めたお金といったものが、事業を始めるにあたってリソースとして活用できることもあるだろう。

 しかし、こうしたものがあるがゆえに今あるリソースに縛られてしまって、自由な発想やゼロスクラッチからの起業が難しくなるという、リソースを持つことによる制約を受けているケースもあるように思う。

これは何も個人の起業に限らず、既存の企業が事業の立て直しをするとか、自社内で新規事業を起こす場合もそうだし、もっと言えば地方のいわゆる地方創生といった場合でも当てはまる

様々なリソースも大切だが、一番コアになるものは、事業を始める動機、そのパッション・ミッションではないだろうか。今のままではいけないとか、あるいはこういったものがあるべきだ、という動機や思い、それに対する熱量=パッションや使命感=ミッションといったものがないと、むしろ既存のリソースは足かせになってしまうケースが少なくない

スタートアップというと若い人が起業するイメージであるが、アメリカの調査でもあるように決して若い人ばかりではなく一定の年齢以上の人たちも起業しているし、ま たそうした人たちの方が成功しやすいという分析もあるようだ。

一方で、シニアベンチャーには投資をしたくない、という投資家の話も聞いたことがある。これはやはり、リソースを持つものとしての制約があるということをこの投資家は感じているからではないだろうか。

年齢に関わらず、事業を始めることにおけるパッションや起業家自らが感じるミッションに対して、それを実現する「手段」として今あるリソースを活かしたり、 新たにリソースを獲得していくことが、スタートアップであれ事業の立て直しや新規事業であれ地方創生であれ、成功への道であるのだと思う。 リソースが「目的」となってしまうこと、つまりリソースありきで、 動機・パションあるいはミッションがはっきりしない状態では、うまくいかないのだろう。

この点で、日本は幸か不幸か、起業にあたって既存のリソースに溢れた国である。VCなど資金面では主に米国に比べた弱さはあるものの、高度成長期以来の経済活動の恩恵で、整った各種インフラや法律の制度や政治の安定、なにより、縮小しつつあるとはいえ一時は世界2位の規模を誇った市場規模など、事業を始めるためのリソースには事欠かない。 一方で、それだけに事業を始める動機、パッション・ミッションといったものを強く持つには難しい環境にある、とも言えるのかもしれない。

別に高尚で崇高な動機でなくていいのだ。建前はともあれ、むしろはっきり言えないようなことが本音の動機でもいいと思う。事業を始める人が熱量をもって取り組める理由がなにより大切なのだと、改めて思う。今あるものを使うことが出発点では、新しい事業は生まれ育たない。


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