シェア時代に、あえて考えるメーカーのマーケティング
「シェアこそすべて」、確かに多くはそうだろう
下記の記事にあるように、多くの企業は「シェア」×〇〇 というビジネスの開発と参入に躍起である。
高度なコンピューター利用のおかげで、細かな時間での利用記録の取得と、少額決済技術により、ユーザーは、使いたい時に使いたい量だけ使うことができるようになった。この「シェア」というビジネス・モデルは、第4次産業革命時代に相応しいビジネスだろう。
そして、この記事に登場するソフトバンクがシェア・ビジネスに向いている理由もある。実は携帯電話事業は、まさにこの「シェア」ビジネスに非常に似ている要素が多いのである。携帯電話事業では、ソフトバンクは、携帯電話は提供していない。携帯電話の回線を提供している。そして、利用者も携帯電話の回線の繋がりやすさを、ソフトバンクに期待している。
マーケティング的に考えれば、「モノ」ではなく「サービス」のマーケティングを実践してきたのである。実は、「シェア」も同様に「サービス」提供である。「車を気軽に利用する」ことに期待値があり、車の品質は、その日の雰囲気で乗る車を変えたいくらいなので、2番目以後の期待値になる。この理由から、ソフトバンクは「シェア」ビジネスに向いているのである。
ところで、日本のメーカーは今まで、「モノ」の品質でマーケティングを行い、戦ってきた。「シェア」ビジネスで重要な「サービス」の品質ではマーケティングしてこなかった。つまり、「シェア」ビジネスへの参入ハードルがあるのである。では、メーカーはどうしたらよいだろうか。
メーカーは「モノ」品質土俵に残れば、良いのでは
さて、歴史は繰り返す。実は、似たような変化は、音楽という産業で起きている。音楽産業は、「所有」から「利用」というモデルに、すでに変化している。
昔は、音楽を聴くということは、レコードやCDを買うことだった。しかし、近年音楽を聴くということは、ネットで聞きたい曲を探して聞くことで、多くが月額利用料を支払って、好きな音楽を、好きな量だけ聞いている。つまり、音楽産業は、「所有」から「利用」というモデルに、変化している。音楽は、著作権を利用したビジネスなので、「シェア」にはならないが、この「シェア」の代わりに「利用」というモデルが出てきているのである。
しかし、ここに来て、コアな音楽ファンの間では、再度CDの購入や、アナログ・レコードの購入が人気である。
これはどう理解したらよいだろうか。多くのお客様は「シェア」や「利用」モデルのサービスを、便利だと思い使っている。そして、サービス品質の良いシェアモデルを探して利用する。
しかし、本当にその利用したい「モノ」自体の品質にこだわりたい人もいて、そのお客様は「シェア」や「利用」ではなく、「所有」にこだわりたいのである。
ということは、メーカーは「シェア」ビジネスに参入する以外に、本当に「モノ」の品質がわかるお客様のために、「所有」型のマーケティング、ビジネスを行い続けるという選択肢もあるのである。
大きな波に乗る前に、自社の強みを理解せよ
「シェア」ビジネスは、確かに第4次産業革命時代に相応しいビジネスであり、今後も伸びるだろう。まさに大きな波である。
しかし、この大きな波に乗る前に、本当の乗るべきか考えることが必要で、それは経営者の重要な仕事だろう。自社は、「サービス」品質で戦える会社なのか。それとも、「モノ」の品質で戦ってきた会社なのか。
それを理解せずして、「シェア」ビジネスに参入しても、波にのみ込まれるだけだろう。