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B2BセールスとB2Bマーケティングは互いにリスペクトすべきだ(向井俊介さん対談)

先日公開した「B2Bマーケティングの成功にはB2Bセールスの科学が欠かせない」には様々な反響が寄せられました。ありがとうございます。

まだまだ完成度の高い思考でも無いので、引き続きブラッシュアップを図りたいと思い、App Annie日本法人の代表を先日まで勤められた向井俊介さんにお話を伺いました。

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向井さんとの距離が縮まったのは、私たちJX通信社の提供しているニュース速報アプリ「NewsDigest」がコロナ禍でDL数激増した際に、様々な物の見方を教えていただいたからです。「優しい人でイケメンとか無敵なんじゃないか」と思いますよね。

さらに、先日インタビュー記事が公開されましたが、外資系マネージャーの経験から「セールスから見たマーケティング」「あるべきセールス」に関する知見の造詣が深く、いつかガッツリお話を伺いたいと思っておりました…ら、すぐさま機会に恵まれました。

B2Bのマーケターとして、セールスはどのように動き、どのように考え、どのようなコラボレーションが起きれば売上は増加するのかだけでなく、どのような心構えを持つべきかについて伺ってまいりました!

本noteは全部で1.1万字あります。移動時間、お昼休みにご一読いただいた方が良いと思います。


一気通貫が良いか? 分業体制が良いか?

ー私自身、B2Bビジネスの"マーケティング"だけに目が向いて視野が狭いと認識していて、どうやって"セールス"と手を携えてビジネスを推進すれば良いのか迷い続けています。迷いの森から抜けるには座学だけじゃなく、セールスの経験もある方に話を聞かなければならないと考えて向井さんに取材を申し込みました。まず最初に、noteの読者向けに向井さんがどういうキャリアを歩んでこられたのか教えて下さい。

B2Bセールスの経験がとにかく長いです。ネットワンシステムズ、ダン&ブラッドストリート、Gartner、App Annieと合計4社のサラリーマン経験があって、そのうち3社が外資系です。App Annieでは日本法人の代表を勤めた後に、現在は起業しています。

ちなみにApp Annieで代表を勤める前は、App Annie社内の既存クライアントチームを統括していていました。さらにその前は、新規ビジネスの統括をしていました。つまり、B2Bセールスの全体(マーケ、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス)をしっかりと把握して回るようにしてから日本法人全体を見るようになりました。

App Annieの前に在籍していたGartnerでは、マーケティングからカスタマーサクセスまで全部1人でやっていました。昭和〜平成の営業って、だいたいそうですよね。自分の食い扶持は自分で稼ぐ。自分でリードを獲得して、ナーチャリングして、クオリファイして、提案して、契約して、サポートする。それが普通だったんです。Gartner時代にこのプロセスを一人でゴリゴリ推し進めていた経験が僕のベースを作っていきました。

ーGartnerでの経験を踏まえてお聞きします。やはり1人が一気通貫で取り組んだ方が良いでしょうか? それとも、プロセスを分業した方が効率が良いでしょうか?

それは前提に依ります。リードがたくさん入ってくる場合は分業が善です。そうじゃなければ悪です。分業するとコストばっかり掛かりますし、組織が分断されますから。組織間の分断は必ず起こるんです。

ー豊穣な土地であれば分業した方が良い、ってことですね。元々デメリットが起きやすいけど、それを上回るメリットを享受できるならやった方が良いのか。なるほど。

App Annieもそうでしたし、その他の企業もそうですけど、月に数千件もリードが獲得できているのであれば、必ずインサイドセールスが必要です。そうしないと、数が多すぎて、どこにお金が落ちているのか全く分かりませんから。その見極めをしていくのが、インサイドセールスの大事な役割です。

言い換えると、月に100件ぐらいしかインバウンドでリードが入ってこないのに、インサイドセールスを置くのはダメですね。「その前にやらないといけないのはリードを増やすことです」と思います。ただしこれはインバウンドのビジネスモデルを行う場合、ですが。


お互いのKPIとミッションの相互理解

ー私が知る限りにおいては、マーケティングとセールス、インサイドセールスとフィールドセールスで対立は起きがちでした。そうした対立を起こさないチーム作りを誰もが心がけているのでしょうが、それでも仲が悪くなってしまう。どうしてなのでしょうか?

App Annieに入社して、小さい所帯から少しずつ組織が大きくなっていく過程で、チームを作るためには「セールスとマーケティングの仲が悪くならないようにしよう」と僕も掲げました。

なぜミスマッチやコンフリクトが起こるか。それは、お互いが見ている時間軸とKPIが違うからなんです。KPIだけじゃないのが重要です。

B2Bビジネスで、セールスの見ている時間軸は3ヶ月です。マーケティングは半年、プロダクトは12ヶ月〜18ヶ月。だからプロダクトチームが提出するプロダクトエンハンストのマイルストーンに対して、セールスは「この時間軸はどういうこと?」と感じる。マーケティングは半年後のビジネスの種を作るのに活動しているけど、セールスは今すぐオポチュニティが欲しいと対立するんです。

そこで僕がしたのは「お互いのKPIとミッションの相互理解」です。マーケティング部門は何のために仕事をしていて、セールス部門は何のために仕事をしているのかをお互いが正しく理解する。理解がビジネスを推進するチームの根っことして、とても大事だと思いますね。

ー具体的には、どういう取り組みをされていたんですか?

新規ビジネスチームを統括していた際は、リードジェネレーションから新規案件のクローズまで、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの3部門を管掌していまいた。この3つのロールが集まる全体の場で、それぞれのポジションに求めるミッションと評価の仕組み、あと期待したいことを言い続けていましたね。

フィールドセールスって、俺が売上を一番作っていると自負すると、無意識的に「立場が上なんだ」と錯覚するんです。そうかもしれませんが、ビジネスプロセスで言えば「ただの役割じゃないか」という見方もできますよね。あなたの行っているアポやオポチュニティは、誰が獲得しているんだ。会社として金を払って広告を出して獲得したリードを、インサイドセールスがコミュニケーションして、花として実ったというプロセスがある。

個別のMTGでは、こうした内容をしつこいぐらいに話していました。なぜならフィールドセールスの振る舞いが、マーケティングやインサイドセールスの信頼を落としていきます。「良いオポチュニティだと思ったのに放置されている」と言いたくなる気持ち、分かります。意識が傲慢になっているなと気付くと、個別に正しに行っていました。

ー徹底して対話を通じて「マインド」「考え方」「態度」が自ら変わるように仕掛けていくんですね。

インサイドセールスやマーケティングには「プライドを持て」と話していました。結局、会社としてアポを獲得するのに、もっとも上流の部分、つまり会社として初めてお客様が接する機会を作っているのがマーケティングの仕事なんですから。さらに、この程度ができたら十分なんだけどな〜と思っているお客様のニーズは氷山の一角で、ビジネスインパクトが大きな隠れたニーズを見つけて引き揚げていくのがインサイドセールスの仕事なんです。セールスと同じぐらい、しつこく共有しています。会話をし続けるというのは絶対に手を抜いてはいけませんね。

ーメッセージを投げかけ続けることで、セールスの態度、モチベーションが改善され、組織としての良い状態が保たれ続けるんですね。

その通りです。特に会話の中に含めないといけないのは、僕らの給料がどこから払われているか。それこそが「商売の本質」です。

お客様がいるから、商売ができる。お金を払ってくださる方々がずっと使い続けてくれるから、僕らの会社が潤うし、コミッションも支払える。当たり前なんですけど、当たり前すぎて忘れちゃうんですよね。

このことを意識するだけで、インサイドセールスもマーケティングも視座が高まりますよ。「リード獲得」「アポ獲得」だけじゃないです。その後にどう商談に繋がるのか、いくらだったのか、そこまで意識しましょう、という話を繰り返しました。

ー向井さんの語られた内容って「普通」に聞こえるんですけど、普通じゃ無いんです。「血の流れた知見」のように聞こえています。

Gartner時代、上流から下流まで1人でやっていたからこそです。当事者として分かっていたからこそ、リードを獲得する大変さや苦労を知らん奴が「フィールドセールスだから」という理由で傲慢になるのはよく無いし、分からないなら伝えた方が良いなと感じたんです。

ー向井さんみたいに、一気通貫のプロセスを経験していた人はおられるはずです。でも、分業体制になって組織として動きがおかしくなっているのに、手当ができない人は結構いるような気がしています。この差は、どこで生まれるんでしょうか?

う〜ん…元も子もないですが、本質を見ているか否かではないでしょうか。そもそもマネージャークラスでは、自分を雇っている会社が継続的に商いができるために「こういうことをしないといけない」と改善する動きはできるんじゃないかと信じたいです。

会社の経営において、人に居て貰うコストと、そこから得られる収益のバランス、商売をやっている以上は気にするべきですよね。PL責任を負っているか否かは別として。マネージャーは「商売」視点を持っているかどうかは重要だと思います。


やっていることに1つもミラクルは無い

ー向井さんはB2Bビジネスの中でもセールスの経験が長かったと思うのですが、向井さんからマーケティングの活動がどのように見ていたのかが気になっています。何社かご経験がありますが、いつぐらいのタイミングからマーケティングとの協業作業を意識されていましたか?

ダン&ブラッドストリートに在籍していたのは2007年〜2011年なんですが、Salesforceとコラボレーションして、一緒に企業先に訪問するキャンペーンをしてたんですね。側から見ているとSalesforceってすごく機動的に動いていて、どういう風に仕事をしているのか興味を持って、いろいろと聞いてみたんですよ。綺麗に役割が別れていて、リードという概念があって…みたいな話を聞いて「そういう世界もあるんだ」と理解してGartnerに転職したんですけど、Gartnerではマーケティングがリードを獲得する、という活動はしていなかったんですよ。「あれっ?」と(笑)。

営業活動を通じて役職が高い方々とつながれたので、特にベンダー系の人と話すたびに、Salesforceの動き方を「御社もそうなんですか?」と聞いてみたら「うちはもう全然、セールスとマーケティングの仲が悪くて」みたいな話ばかりでしたね。内実を聞いてみると「そりゃ仲悪くなるわな」と思いながらも「俺は関係ないか」と対岸の火事のように見ながら仕事をしていましたし、App Annieに入社した時には反面教師にしました

ー逆に、リードジェネレーションのプロセスに準拠したマーケティング部門とガチガチの喧嘩を経験されてこなかったからこそ、「こうしよう」「ああしよう」というリストが作りやすかったのかもしれませんね。

僕がApp Annieに入社後、マーケティングマネージャーを日本で採用すると決まって1人入社したんですね。真っ先にやったのは、彼を食事に誘って仲良くなることだったんです。何を求められて、何を期待されて、何をどういう風にして欲しいって期待値のもと入社されるのか押さえておかないと、絶対にぶつかりますからね。マーケティングの責任者と、とにかく二人三脚で走ることを強く意識しました。

密にコミュニケーションを取っていると、喧嘩なんて起きないです。起きるとしたら、細かい施策レベルで意見が別れる程度です。

外資は特にそうでしょうけど、本社あるいはアジアのヘッドクォータがシンガポールにあるんですけど、マーケティングのレポートラインは正しくはそっちなんですよ。当時、カントリーマネージャーに就任したんですけど、マーケティングのレポートラインは僕では無く、シンガポールでしたから。

だから会社として指揮命令系統ではなく、ビジネスレポートラインのようなものを設けて、お互いが「日本のビジネスはこうなっていて、ここが問題だからこうしたいね」って話せるようにしました。

上から言われる、別のレポートラインから言われる、あとはイベント、ローカライズ、新商品プロダクトがあるからPR考えて…そういった時に優先順位が変わってぶつかる経験はありますけど、そこはこっち側が大人にならないといけないんです。本社の言っていることは、サラリーマンとしてはやらなきゃいけないので。

明らかにおかしい時は、プッシュバックするための理屈を一緒に考えるんですね。今、僕らが考えている施策をやらなきゃいけない理由、1ヶ月後ろにずらすことのインパクトを定量的に作成して「だから今これをやらないといけないから、この施策は後でも良いよね」なんて交渉はしていましたよね。

ーマーケティングとビジネスのコラボレーションができる、稀有な例のように聞こえています。

ただ、やっていることに1つもミラクルは無いんですよ。ゴールは一緒で、仲間なんです。もし相手側にその認識が無ければ、しつこくても会話をして仲良くなって信用して貰う。それが大事だと思うんです。そうした積み重ねを面倒くさがってやらないから、上手く行かないんじゃないでしょうか。


アポ=商談では無い

ーマーケティング部門は、KPIとしてアポやハウスリード増を設定しがちなんですが「それで終わり」で良いのかとモヤモヤしています。セールスの観点から見た時に「こういうの貢献できひんの?」という想いがあれば、ぜひ聞いてみたいです。

めちゃくちゃ大事な視点ですね。僕の考えだけですが、マーケティング部門は商談を作ることに集中して良いと思っています。ただ、会社によって商談の定義が違うと思うんですよね。商談って書いて字の如く「商売の話ができているかどうか」なんです。インサイドセールスがアポイントメントを作ったとイコールではないんですよ。

僕の中ではアポ=商談では無いんです。MQLです。商談とは、商売の話を進めて良いとお客様から合意をいただいた瞬間以降なんです。具体的には、初回訪問に行きました。これはまだ商談じゃ無い。営業が「これは商売になるな」と信じて、自分で責任を持って追っかけるとコミットしたら、これは社内的には商談だとSalesforceで商談を作ってもらいます。

その時の根拠として、お客様が前に進めることに合意をしたかどうかが大事なポイントです。案件のレビューにおいて、お客様はなぜ前に進めると合意したのか、ニーズは何か、ペインは何か、タイムフレームはどう考えているのか、バジェットはあるのかという、属にいうBANTは確認します。つまり商談に登場したお客様の購買に対する影響度は、どれくらいあるのかを必ずレビューをします。ある程度は営業が把握していれば「じゃあ商談としてオポチュニティ作っておいて」と初めてSalesforce上にレコードが作成されます。これをSQLと呼んでいます。

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MQLとSALは僕の中でほとんど一緒なんです。ただ、SALとSQLの間に結構な溝があるんですよね。僕の中での商談はSQLなので、MQLやSALを商談としちゃうと不毛な形になってしまいます。商談の数は増えるんですけど、制約につながらない。「商談作っているのに全然成約しねえじゃん」って喧嘩が始まっちゃうんです。

ー過去経験からして、マーケティングが作成したリード(MQL)からSQLまで見通せるのは良いと思います。

僕は実際、それをやっていました。作った商談の数と金額が、マーケティングのKPIになっていました。

ーえぇっ!? 実際にクライアント先に行くのは営業ですよね。SQLが作れないのは、最後の最後に現場に行っている営業のやり口が悪いからだ。そういう話は出なかったですか?

そういう他責にならないためには、繰り返しになりますがセールスとマーケティンの間での信頼関係が大事なんです。第一に考えるべきは、マーケティング側で様々な施策を実行しているのに、SQLが少ないのは自分の作成しているアクティビティの質に問題があるんじゃないかという自責にしないといけない。他責にしないために、営業は「ちゃんとやってるよ」ってことをお互いが会話をして信頼するしかないんです。他責にしないカルチャー作りがすごく大事。それがマネジメントとして1番大事なポイントです。

ーなるほど…これはすごいなぁ…。

いや、そんなにすごくないです。人のせいにするのは簡単なんですよ。その瞬間に放棄できちゃうんで。でもプロとして仕事してるんだったら、まず自分の仕事を見直したら? っていう話を、1on1で他責傾向が強い人には注意するようにしています。自分の仕事のクオリティを改善していく、高度化していくことが自分を高めるんです。


意識しているのはback to basic

ー今、様々なセールスプラットフォームありますよね。ちゃんと科学的に管理できているのかは、組織によってだいぶ温度差があります。これって、何が問題なんでしょうか?

僕が言うと「お前が言うな」と言い返されてしまう領域の話です(笑)。僕がフィールドしていたとき、SFAの入力めちゃくちゃサボっていたんで。そんなんやらなくても売ってくるからいいだろ、と考えていましたから。

でもマネジメントに就いて、ちゃんとデータが入っていないとしんどいんすよね。だから「お願い、ちゃんと入れて」と説き伏せていました。立場が変われば言うこと変わっちゃう最たる例です。

大事なことは2つです。1つ目は目的。情報はインプットしないとアウトプットできません。インプットがノイズだらけのゴミデータなら本当に意味がないので、極力正しい情報を入力してもらう必要があります。では、何をアウトプットしているのか。つまり、現場のメンバーのための目的が実はほとんど無いのではないか。多くの企業で「管理をするため」「見える化」「振り返って分析するため」とか声があがりますが、全部会社都合なんです。会社都合の目的に自分の時間を割くほど営業は暇じゃないので、後回しになってしまうんです。僕もそのタイプでしたけどね。データを入れることで君たちのためにもなるんだよと説得できるかどうか。

2つ目はSales Opsがいるかどうかです。セールスマネージャーだと、見せたくないものも誇張したいものもあるし、現場が忙しいほど入力が後回しになってしまう。ちゃんと管理するチームがいると、いついつまでに書いてください、死の果てまで追いかけますよとプレッシャーをかけながらトラッキングできるようになります。

ーデータは100%じゃないにしろ、だいたい入力されている。パイプライン管理もできている。SQL〜受注までフェーズ管理も見えている。今季の目標を達成するには、いつまでにこれぐらいSQLを作ろうと目処を立てられるお膳立ては整っている。でも、実際に数字を管理して「プロセスを遡って、いつまでにMQLをN本追加できないか?」と相談が生まれる例は少ないのではないかと思っているところがあります。数字を用いて再現性高く売上をあげて行こうぜ!ってマネジメントできる人は、意外と少ないのでしょうか。

う〜ん、できていないかもしれないですねぇ…だって、セールスマネージャーって職種で生きている人はほとんどいないと思うんですよ。日本の場合は単なる役割ですから。現場から叩き上げられた人が、セールスマネージャーになるんですよ。そこは日本とアメリカで大きな違いです。

つまり、彼らの過去を振り返って、科学的に自分の行動を振り返って分析したり分析されたり、そういう実体験や見聞が無ければ、できるわけないんですよ。だからその人に任せるのはすごく乱暴で、だからこそSales Ops、あるいはデータアナリシスできる人、ストラテジー作れる人が重要になるんです。アメリカだとそういう人たちがやるんですよ。

ーなるほど! つまり、アメリカなら分けて作業していることを、日本は1人に集中させているんですね。

全てSales Opsにおんぶに抱っこだと、出てくるまでのタイムラグがありますから、そこは慣れていくしかないですね。最初の期待値は「データをみながら科学的にはできないかもしれないけど、ちょっとずつ慣れてくれ」って期待値設定が会社には必要なんじゃないでしょうか。

ただ、ちょっと横道それますが、僕は「営業は科学できない」と思っているんです。科学って、ある意味で「あぁしたらこうなる」じゃないですか。それって僕はないと思っているんです。

どちらかと言うと、僕が意識しているのは、back to basicなんです。商売の本質に立ち返って、常に商売として正しいのかどうか、何をすれば正しい方向に向かうのか、本質に回帰しないとテクニック論とかメソッドとかストラクチャーとかプロセスとか聞こえの良いものに手を伸ばしますよね。

「商売として俺たち何してるんだっけ」って原点をわからないまま、小手先でやっていくのは本当に良く無いです。私の場合、科学ができない代わりに本質さえ見誤らなければうまくいく経験があるので「科学ではなく本質に立ち返ること」を大事にしたいですね。

ーハウツーは「やってみよう」なのでチョイスしやすいですが、考える・本質に立ち返るって「具体的に何に思いを馳せれば良いかわからない」と言いそうです。

そんなに難しい話では無いと思うのです。

セールスからマーケティングに対してできることを考えてみましょうか。以前に、実務としてマーケティングマネージャーも少しの間だけ兼務していたんですが、我ながら良い結果につながったな、と思えることをやりました。

マーケティング活動の中に「リード獲得」と「リード育成」の仕事がありますよね。リード獲得のためのメッセージやクリエイティブの作り方、コンテンツの中身、ナーチャリングのプログラムや頻度について、マーケティングは顧客と直で接していないので、何をしたら正しいのか分からない場合があるんです。ただ、セールスは顧客が何をしたら良いか一番知っている場合が多い。営業がナーチャリングプログラムやセミナー企画のコンテンツを考えるだけで劇的に良くなりますよ。

私は、セールスをとにかく巻き込みました。メルマガのオーナーシップもセールスに移管しました。コンテンツもインタビュアーも、セールスに書いて貰いました。「使っていて何が良かったのですか?」って、セールスの目線が必要なんですよね。あくまで1つの正解なんじゃないかなと思いますが本質に立ち返ればこそ浮かぶ施策ではないでしょうか。

いずれにせよ、セールスからマーケティングへの情報のインプット、あるいはマーケティングがセールスに情報を取りに行く、どちらの場合においても双方に協力を仰ぐのが特に必要だと思いました。

ー事前に会話をしていたからこそ、ですよね。言い換えれば、このために信頼関係を築いていると言っても過言では無い。

そうなんです。いきなり言われても「はぁ?」でしょうからね。結局、自分たちにその活動の結果が降ってくるので、なぜ必要かを理解してもらわないといけません。

結局、コミュニケーションと信頼関係、ここに修練されると思います。

だから松本さんのnoteを読んでいて、ちょっと表現の仕方を変えた方が良いかもしれないと思ったのですが「営業の責任者の方が偉い」という言葉。ニュアンスは分かるんですけど、私の中では「偉いかどうか」ではなく「リスペクトできるかどうか」なんです。マーケティング責任者はセールス責任者をリスペクトした方が良いし、逆もそうですよね。

職務として分けるのであれば、営業部門の中にマーケティング組織を置くのが良いかもしれません。ただしそれは上下関係ではないんですよ。職務レベルでリスペクトがある関係、表現としてはこちらの方がスッキリするのではないでしょうか。

ーそうですね、表現として、言いたかったことど真ん中を突いて下さった気がします。お互いのリスペクトが、一緒の課題を解決していくキッカケになり、それが組織全体に浸透していくんですね。本日はどうも、ありがとうございました!


取材後記

久しぶりに取材をしました。ITメディアで活動して以来なので、1年ぶりでしょうか。緊張しました…。

それにしても、向井さんとの対談は奥が深く、新たな知見も得られ、気付きもあって、本当に勉強になりました。セールスのテクニックも大事なんですが、どうやって円滑に成果を上げていくのか、そうした本質に迫れた気がします。

当たり前の話も多く聞こえるかもしれませんが、じゃあ自分の胸に手を当ててそれができているかと問われれば言葉に詰まります。結局のところ、行動の積み重ねこそが事態を動かしていくのだと感じました。

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松本健太郎
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