計画維持だが、実は慎重?
大方の予想通り、4月のECB理事会会合で重大なニュースや政策変更はなし、3月に発表された政策正常化路線を維持した。
ECBは今後の経済指標次第で資産の純購入を2022年第3四半期に終了することへの確信を強めたまま、である。ラガルド総裁は6月の理事会でこうしたプログラムの終了に向けた具体的な日程を決めることを示唆している。資産の純購入を終了する基準が利上げ開始の基準よりも低いことやインフレ圧力が今後数か月にわたり高止まりすると見られることからすると、債券購入は7月に終了される可能性が大きい。もっとも、慎重なECBはバックストップ型のツールを検討しているとの声もある。政策正常化の中、金融市場、債券市場に悪影響が出たと判断された場合、適宜補助的に導入できるようなタイプのファシリティの導入があり得る。
一方、インフレ観測が継続していることもある。ECBは上振れリスクが「増大している」ことと、目標と整合する水準を上回っている長期インフレ期待を「緊密に監視」する必要があることを指摘した。ただし、成長への懸念が表れてきていることも注意したい。ECBの現在の見解をより包括的に把握するには6月に出て来るスタッフ予測を待つ必要があるが、成長率の低下によって中期的なインフレ見通しにも変化が出て来るかもしれないためだ。
今後は6月9日の会合に向けて、経済活動指標とインフレ率の両にらみで行かざるを得ない。前者については、PMIなど経済活動評価に加え、労働市場の指標も注視したい。後者については、家計と企業のインフレ期待と賃金動向に注意し、中期的な物価上昇圧力がどの程度のものかを見極めることが肝要ではないか、と考える。
こうしたデータがどう出て来るか次第で、利上げ開始のタイミングやスピード感が変わってくる。7月に債券買い入れが終了した後、利上げ開始は9月ないしは12月と読むべきか、まだ悩むところだが、様々な環境の変化により、現状の政策正常化路線維持に関わらず、ECBが今年50bpを超す利上げを実施することはないのではないか。インフレが急激に進んだことにより、金融政策には糊代が少ないことが否めないものの、現実を鑑み、ラガルド総裁率いるECBは慎重なスタンスを崩さないのではないか、と思えてならない。