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スウェーデンのグレタさんという少女をご存知でしょうか。気候変動問題に強い危機感を抱き、学校をストライキしスウェーデン国会議事堂前で抗議活動を始めた少女です。その強い危機感は瞬く間に同じ世代の共感を集め、本年3月15日には日本を含む世界約100か国で150万人が参加したとも報じられています。今やグレタさんは、ノーベル平和賞に最も近いとも言われています。

国連気候変動枠組み条約交渉が開催されたポーランド・カトヴィツェの街や、世界のリーダーが集まるダボス会議、英国議会等、様々な場で彼女は演説をし、彼女たちの「未来を盗む」大人たちを糾弾しています。「外部費用の内部化」なんていう心に響かない「用語」ではなく、大人たちの胸倉をつかむような危機感の詰まった「叫び」が多くの人たちの心を捉えるのは当然だと言えるでしょう。

ただ、申し訳ないのですがこれまでも何度もこうした若者のまっすぐな演説・行動はありました。さかのぼれば1992年のリオ地球サミットでのセヴァン・カリス・スズキさんの演説は今でも伝説となっています。

こうした数々のまっすぐな訴えがありながらも、なぜ気候変動問題が深刻化する一方なのかというのをよく考えてみる必要があると思うのです。行動しない、悪いor怠惰な大人たちに鞭をくれれば何とかなる話なのであれば、このやり方で良いでしょう。無意識に若者の未来をむさぼってしまっている大人もいますので、彼らを揺さぶり気づかせることは必要です。それをやってくれている彼女たちには感謝と申し訳なさしかない。ただ、それで問題が解決すると思っているとしたらそれは違うと思うのです。そしてそれは違うということを伝えることが、この問題を考えてきた責任ある大人の態度だと思うのです。

例えば彼らは「石炭火力発電所はCO2をたくさん排出する。今すぐやめろ」と言います。ただ現状温暖化に最も熱心な国と言われるドイツですら、電気の4割を石炭・褐炭に頼らざるを得ないのは、これを代替すると期待される再生可能エネルギーがコストあるいは出力の安定性という点で課題があるからです。これを克服するイノベーションが無いなかで、現状の技術の否定はゆがみをもたらしてしまう恐れが高い。

具体的に言えば、例えば日本メーカーが持つ高効率石炭火力技術の輸出をサポートする公的支援(輸出信用など)を廃止したとします。途上国が石炭火力発電所を建てたいと希望したとしても、日本メーカーはもうその高効率石炭火力技術を売ることはできなくなるでしょう。ではその途上国は石炭火力の建設を諦め、天然ガス火力発電あるいは再生可能エネルギーの発電所へと計画変更するでしょうか?

そんなことにはならないのがほとんどで、中国などの石炭火力発電所技術が売られることになるでしょう。中国の技術も相当効率は上がっていますので、単純に「日本の効率の良い技術ではなく、効率の悪い技術が普及する」とも言い切れませんが、重要なのは一部の先進国が技術輸出を断ったとしても温暖化を止めるという観点からは意味がないということ。解決策は、市場で自律的に普及する安価な低炭素技術・サービスを生み出すことなのです。

気候変動問題は、世界的かつ超長期的な、そして不確実性の高い難題です。誰かを批判することでは問題は解決しないこと、自分の庭先だけきれいにするのではなく地球全体での取り組みにしていかねばならないことを共有するところから始めたいと思います。という思いを込めて書きました↓


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