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不況を逆手にとる意思決定をしたAPAホテルに学ぶ #マーケティングトレース

昨日にこのようなツイートをしました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で株価が下落し、世界中が不況に陥っています。

経営の意思決定が難しい局面に陥っている中で、この不況をポジティブに捉えるヒントが欲しいですよね・・・

今日は、不況を逆手にとった意思決定をトレースし、この状況を好転させるための戦略思考ポイントについて考えていきたいと思います。

先に結論から。

Twitterで紹介した、アパホテルもニトリに共通しているのは、この4つのポイントだと抽象化してみました。

①不況を予測して備える思考
②逆手にとる思考
③ブレない戦略コンセプト
④トップダウンの意思決定

具体的にどういうことか?

本日は、アパホテルが2008年のリーマン・ショック後にとってきた戦略をマーケティングトレースしていきます。

参考にしたのはこちらのインタビュー記事です。

実は超優良企業APAホテル

先にアパホテルの概要を整理しておきます。
2019年11月期連結決算をみていきましょう。

グループ連結売上高:1,371億円
経常利益:335億円
経常利益率:24.4%
部屋数:全国に618ホテル98,174室
年間宿泊数:約2,613万名
目標:2020年3月末までにパートナーホテルを含むアパホテルネットワークとして10万室を目指す

超優良企業です!

この他ホテルブランドと差別化を図り、高利益体質の背景には何があるのでしょうか?

本日は、リーマン・ショック後の意思決定に焦点を当てて分析をしていきます。

アパホテルのリーマン・ショック後にとった戦略

アパホテルは、2010年以降、都心でホテルを集中的に建設しています。
この2010年の都心集中建設は「頂上戦略(SUMMIT 5)」と呼ばれているようです。

要は「都心に一点突破・全面展開」するぞ!!!!!

という戦略です。

外部環境としては、2008年にリーマン・ショック。
経済状況は落ち込んでおり、競合他社も投資を控えていたタイミングです。

そのタイミングで大きな投資で勝負をかけたわけです。

不況のタイミングでアパが優位性を確立するために、どんな戦略をとり意思決定してきたのでしょうか?

この4つの視点に分解しながら、アパの戦略ポイントを整理していきます。

①不況を予測して備える思考
②逆手にとる思考
③ブレない戦略コンセプト
④トップダウンの意思決定

①不況を予測して備える思考

なぜ、アパホテルはリーマンショック後に大きな投資をすることができたのか。

下記に元谷代表が言及しているように、不況の前にキャッシュをつくっていたことがわかります。

リーマン・ショックの影響で景気が悪くなり、地価が暴落しましたが、ファンドバブルの時に不動産を売却したため、借入金を返済した後も資金が残っていました。その余剰資金で都心部の土地を買い始めたんです。今の3分の1から4分の1の値段で買えたところもあります。今は全て値上がりしています。

実際、アパの経営陣がどこまでリーマンショックのことを先読みしていたかはわかりませんが、不況時に動ける蓄えをしていたことは事実です。

時間軸を長くして戦略を考えること。

この考え方の参考に「シナリオプランニング」というものがあるので、ご興味ある方は読んでみることオススメです。


②逆手にとる思考

競合は不況であれば、地価が高く、投資リスクも高い都心は攻めない状況です。
そんな中、アパホテルは都心一等地に集中建設をします。

エリアを絞った理由は、リーマン・ショックで最も地価が下落したところがその後に値上がりするだろうと考えたため。そして、リーマン・ショック後にどこが一番下がったかと言えば、前述したような都心の一等地です。

この時の意思決定が、現在のアパホテルの都心における占有率の高さをつくっていることがわかります。

差別化を図るためには、競合が意思決定できないタイミングで、一気にリソースを集中投下することが重要だとわかります。

競合との差別化を考える時は、「タイミング」の見極めを意識したいところです。

下記の記事にあるタイミングを見極める思考は見習いたい。(帽子かぶった広告で有名なアパ社長の言葉が重い)

プロは要る、要らないで判断せず、タイミングを買うのです。
その理由は、経済がサイクルで動いているからです。バブルだろうと、リーマンショックだろうと、上がれば下がるし、下がれば上がる。景気が変動する中で、どこで買うか、誰から買うかが大事です。

③ブレない戦略コンセプト

「頂上戦略(SUMMIT 5)」つまり都心集中建設という意思決定の軸となるコンセプトをもち、競合が投資を控えているタイミングで一気に投資をする。

このブレない戦略コンセプトをSTPの視点で整理します。

Sセグメンテーション:ビジネスホテル市場
Tターゲット:都心のビジネスパーソン
Pポジショニング:アクセス良くて便利、シンプル

ポジショニング戦略には、ブレない戦略コンセプトをつくり、一気に投資する!という姿勢が重要であることがわかります。

APAの中期経営計画は、戦略コンセプトと1点突破を学ぶのに素晴らしい教材です。

アパグループ次期中期5ヵ年計画 「SUMMIT 5-Ⅱ」を発表
https://www.apa.co.jp/newsrelease/1152

※投資意思決定の背景にあるビジネスモデル

また、この意思決定ができる背景には、アパの『直営方式』のビジネスモデルがあります。

同業他社がリスクが低いフランチャイズ方式や、優れたノウハウを有するホテル業者に運営委託する方式(星野リゾートが代表例)を採用しているのに対して、アパホテルは土地から自前で買い上げる直営方式をとっています。

不況時だから、とりあえずの逆張り判断をしているわけではなく、ブレない戦略コンセプトと土台となるビジネスモデルがあるから不況時に最適な意思決定ができていることがわかります。

④トップダウンの意思決定

最後に決め手となっているのはトップダウンの意思決定です。
これだけ明確な指示を現場担当に出して動かせるの強い。

用地取得の担当者には「このエリアの用地情報以外は持ってくるな」と厳命しました。アパはあちこちでホテル建設を進めているように見えるかもしれませんが、先ほど申し上げた地域でしか建てていません。

やはり戦略が絵に描いた餅になってしまったら意味がない。
不況時こそ組織の体質が試される。
とくに逆張り戦略で競合がやっていないことに一気にリソースを投下するときは「トップダウンでガッと動く」ことは重要であることがわかります。

APAホテルは元谷夫婦の家族経営で意思決定スピードが早い組織体質が成功要因だったのだと考えています。 

まとめ

APAホテルのリーマン・ショック後の戦略についてトレースしてきました。
改めて不況時の意思決定ポイントを要約すると4つです。

①不況を予測して備える思考
②逆手にとる思考
③ブレない戦略コンセプト
④トップダウンの意思決定

状況が悪いときこそ、根底にある戦略コンセプトや組織文化が試されます。

不況は10年に1度は訪れると言われています。
コロナ対策(経営の)も必要ですが、次の不況でも揺るがない経営をするために、強い組織をつくっておくことが大切であることを、アパの経営は教えてくれます。

上記の4つのポイントは、不況を逆手にとり成長してきた企業にも共通していると考えています。

今回はAPAホテルを例に考えてきましたが、時間があったらニトリやドンキホーテなどもマーケティングトレースやっていきたいです。

不況時の対応について参考になる記事