いつまでInstagramを使い続けるんですか?バイトダンスのLemon8が牙城を崩せるか
Instagramって、もう何年覇権を握ってるのでしょうか?
日本ではインスタを打倒しようとするサービスはあるんですか?中国ではインスタは使えないのですが、機能は微妙に異なる小红书(RED)は圧倒的なポジションにいます。
そして、インスタを打倒しようと海外に挑戦するサービスは多々あります。なかでも、TikTokの会社のバイトダンスがチャレンジし続けています。
今年9月に、バイトダンス傘下のライフスタイルアプリ「Lemon8」が、米国App Storeのライフスタイルカテゴリで一時的に1位、総合アプリランキングでも上位20位にランクインしました。
Lemon8が米国市場に参入したのは2023年の春。当時から利用者やインフルエンサーたちは、Lemon8をPinterestとInstagramの機能を組み合わせたようなアプリだと評価していましたし、今も日本の記事や評価を見るとそのようなレビューが大半です。でも、中国のユーザーからすれば、Lemon8は小紅書(RED)の海外版のようなアプリに見えます。
個人的には、現在のREDはInstagramとの感覚はだいぶ違います。フォローしているアカウントも、していないアカウントも一つの画面に複数表示されていて、情報量はInstagramより確実に多い。
また、利用している感覚ではアルゴリズムの精度がインスタより高いと感じています。綺麗な写真や映える生活以外にも、積極的に日々の暮らしや知恵を共有するユーザーが多く、中国のXことWeiboよりももはや多いのではとも感じます。検索エンジンやQ&Aとしての利用が定着しています。
Webの世界での競争が激しすぎる中国では強いSNSが複数存在しているのですが、「これ、REDで流行ってる」よりも、「REDでこれが流行ってる!」の方が多いです(このニュアンスの違い伝わりますか?)。つまり、確固たる地位を築いて社会に絶大な影響力を与えています。バイトダンスがREDのようなアプリを前から作りたかった理由の一つでしょう。
ボクも今回Lemon8アプリをインストールして使ってみました。開くと、その位置づけやUIからREDの感覚が。1画面に概ね4つのコンテンツが表示され、画面上部で「フォロー中」と「おすすめ」を切り替えられます。「おすすめ」の下では旅行、ファッション、写真、グルメなどの細かいカテゴリを選べるなど、一部の機能がないなどを除けばほぼREDじゃないか!と。
■Lemon8がついにバズり始めたきっかけはなんだったのか?
すでにインスタが圧倒的なポジションにあるし、メタ社のお膝元である北米や英語圏で人気になるのは簡単ではありません。
実際、Lemon8が米国でサービスを開始した際は一時的な注目を集めましたが、公開されているデータによると、リリース数カ月後にはiOSアプリランキングで200位圏外、最低では410位にまで落ち込んでいました。日本でもリリース直後は多少ユーザーはいたかもしれませんが、今や全く話題になってないと思います。
それが突然バズります。今年9月からLemon8は「21日間日記チャレンジ」キャンペーンを開始、多くのユーザーを集めました。このキャンペーンは、ユーザーに日記形式で日々の生活を投稿させ、21日間連続で投稿した人にレモングッズを進呈するというもの。
この”挑戦型キャンペーン”の手法、実は2017年にバイトダンスが買収したmusical.ly(TikTokの前身)と一緒なのです。musical.lyは当初、ダンスや歌唱の挑戦コンテンツで米国市場を開拓。公式が主催する挑戦コンテストなどのイベントを重要な運営手段の1つとしていました。
報道によれば、Lemon8の現在の責任者は「陳颖(チェンイン)」さんで、レポートラインが「朱骏(ジュージョン)」さん。この朱骏さんこそがmusical.lyの共同創業者の1人で、musical.ly時代も陳颖さんの上司でした。musical.lyがバイトダンスに買収された後に2人はともにバイトダンスの一員だったのです。
そしてもちろん、TikTokの圧倒的な規模も本格的に活用し始めたことも大きい。同じ会社が運営するアプリによる簡単ログインと同様、Lemon8でもTikTokアカウントでログインが可能。
さらに別の方法でアカウントを作成した場合でも、「あなたのLemon8アカウントをTikTokプロフィールに追加しますか?」という吹き出しが表示されます。TikTokではLemon8に投稿したコンテンツを簡単に共有できるほか、TikTokのプロフィールページからLemon8アカウントに誘導することも可能。
成果は大きく、Appfiguresのデータでは、今年のLemon8の全世界でのダウンロード数は1600万回、そのうち640万回が米国からです。すごい。
■タイでの使われ方。インスタとは全く違う方向性にいく可能性も
北米でバズり始めたLemon8ですが、実はその前からバズっていた地域があります。タイです。すでに650万以上のダウンロード数があり、フォロワーを多く持つ人も現れている。
面白いのは、中古商品を告知してセールスする場所になり、中古販売のためのツールにもなっていること。こうした使われ方はインスタやXでも多少あって、見たことがある人が多いと思います。特に日本のメルカリは異常に手数料高いですからね。
『Lemon8のインフルエンサーにとっては、プラットフォームと収益を分け合う必要がないのは魅力的』とのコメントはあります。Lemon8で商品紹介や広告を行ってブランドからいくら報酬をもらっても、現状はそのままインフルエンサーの手に入ります。そのため、もともとInstagramで活躍していた多くのインフルエンサーがLemon8に移り始めていると言われています。
ただ、SNSとしての威力としては、ダウンロード数が650万を超えていても、InstagramやFacebookには遠く及ばないのも事実。タイ国内での旅行、チェックイン、口コミなどはまだまだ少数だし、実際に旅行に行ける人数(経済力)が備わったエリアでなければREDのようなポジションも築けない。
この北米でのバズりをきっかけに世界でのユーザー獲得に弾みがつくのか。どちらにせよ、独占している領域に果敢にチャレンジしていくことは素晴らしいし、応援したいと思います。Xや日本のニュースを見ていても、Instagramをはじめメタ社のやり方に不満は多いですよね。それなのに、いまだに日本の皆さんがInstagramばかり使っているなんて。
一方、TikTokがアメリカに睨まれようと、北米に切り込んでいくLemon8。いまの施策やプロモーションが落ち着いたときにどこまで人気なのか、もう少し時間をかけて観察する必要があるがありますが、Lemon8はバイトダンスがREDやインスタを意識しての4回目の挑戦だと言われています。
2018年にリリースした「新草」、2022年にリリースした「クロワッサン(可颂)」、2023年にリリースした「有柿」があるのですが、いずれも中国国内向けで、ここまでのところ全く成功とは言えません。今回は海外向けの事業でのファインプレイを期待したくなります。みなさんも興味があったら試してみても。
(参考資料)