コロナ禍の必須スキル!なぜ今「ファシリテーション」が大事なのか?
Potage代表 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずです。
日頃、企業の研修やイベントのプロデュース、コミュニティ運営などをお手伝いしていますが、そのためにとても大事な私のコアスキルがあります。「ファシリテーション」です。
ファシリテーションという言葉を聞いたことはあるでしょうか。最近はビジネスの世界でも広がってきましたので、聞いたことあるという方も多いかもしれません。
なんとなく「議事進行する人」という認識がある方もいるかもしれません。これは半分正解で半分不正解です。
ファシリテーションは直訳すると「促進」という意味で、会議やワークショップ、イベントでのステージ進行を取り仕切り、場のアウトプットを最大化するための機能です。ただ会を進めるだけではなく、アジェンダとゴールを設定し、プロセスをデザインし、場の合意形成をとりながら期待値どおり(時には以上の)アウトプットに導く、とても大事な役回りになります。
このファシリテーションのスキルは、近年、ビジネスの世界でも重要性がうたわれるようになりました。ビジネスの現場だけではなく、教育の世界や、行政でも注目されています。
そしてこの「ファシリテーション」の重要性は、今のコロナ禍においてますます強まっているのです。特に、チームをつかさどるリーダーやマネージャーにとっては、とても大事なスキルになりつつあります。
※行政の事例:職員がファシリテーション研修を受けて共創プロジェクトに参加している渋谷区の事例はこちら
リモートワークがもたらす2つの機能不全と「ファシリテーション」という処方箋
前回寄稿した記事でも書きましたが、コロナ禍は「1つの場所(オフィス)にチームを集結させる」ワークスタイルに大きな制限を課しました。結果、IT企業や一部大企業を中心に、リモートワーク前提のワークスタイルが急激に広まっています。
ところが、このリモートワークを従来のマネジメントの発想で推進すると、なかなかうまくいきません。様々な原因がありますが、最も根本的で大きな問題は、従来型のチームとのコミュニケーションの取り方が、機能不全に陥りがちという点にあります。
機能不全の原因は大きく2つあります。そしてその機能不全に「ファシリテーション」は以下のように処方箋として作用します。
機能不全の原因① チームコミュニケーションの難易度の上昇
同じ場所で空気を共有しないリモートワークにおいて、チームの合意形成をとるのはより困難になっています。ZoomやTeamsでの会議を思い出してほしいのですが、一部の人が言いたいことを言うだけで会議が終わったり、逆に誰も発言する人がいなくて形式的な集まりで終わることも増えたのではないでしょうか。阿吽の呼吸や暗黙の空気感が共有できないリモートワークにおいては、チームの円滑なコミュニケーションを促すために、場の持つ目的をよりしっかりと定義して、議論の流れを整理しながら進行していくことが、より大事になります。
(処方箋)きちんとアジェンダを立て、プロセスを考え、それぞれのものの見方を引き出しながら合意形成をとっていくファシリテーションのスキルは、この円滑なコミュニケーションづくりにとても役立ちます。
機能不全の原因② 自発行動を促すコミュニケーションの必要性増大
同じ場所に集めて分業制で仕事を進めていくと「上司は指示をし、部下は言うことを聞く」単純なコミュニケーションで、ある程度機能はします。ただ、この数年進む「働き方改革」や、急激な事業環境変化によりこのコミュニケーションの有効性は薄れていっていました。コロナ禍は、この傾向にとどめを刺したのです。
あらゆるタスクを細分化し、ひとりひとりに割り振ったとして、上司の監視の目が行き届かないリモートワークにおいてはなかなかうまくいきません。離れた環境でチームメンバーがパフォーマンスを最大化するには「指示を待つ」のではなく「自分で考えて動く」ことが必要になります。マイクロマネジメントはむしろその自律性をそぎ、結果部下のモチベーションを落とします。
現在のマネジメントにとってより重要なのは、一方的に指示をし、その進捗を測るだけのコミュニケーションから、部下の自律的行動を促すために、動機付けをしたり、チームのために何ができるかを自分で考えて本音で発言してもらう機会をつくることです。
(処方箋)このような場面においては、部下との日常のコミュニケーションや、1on1などの場面で、相手の本音を引き出しながら、効果的な会話を生み出すファシリテーションスキルが有効です。まず、自身からの信頼を伝えたり、動機付ける言葉を伝えたりしながら相手の気持ちを乗せて行きます。そして、今の仕事についてどう考えているのかを率直に伝えてもらい、その思いを受け取りながら、建設的な会話を構築することが必要なのです。
メンバーを自発的行動に導いていくためのファシリテーション
ファシリテーションは「与えられた時間内で」「設定したゴールに向けて」「参加者の合意形成を導き出す」プロセスです。そのために必要なのは、しっかりとゴールを共有し(共通課題の設定)何を発言してもいいという空気をつくりだし(心理的安全性の醸成)闊達な発言を引き出し(プロセスの設計)新しい発想や自由な発想に満ちたアウトプットにつなげる(ゴールの実現)ことです。
いかに場の参加者の間に短い時間で信頼感をつくり、気持ちよく会話できる環境をつくるか。ファシリテーションの妙はそこにあります。ちょっとした工夫で、アドリブも時に利かせながら、時に刺激も与えながら、会話を温めていきます。結果「ここだけの話ができる関係性」をその場で構築できると、アウトプットの質がどんどん向上し、新規性のあるアイデアが生まれたり、問題解決につながる発想につながったりします。
コロナ禍の働き方においては、限られた時間でメンバーの様々な視点を共有しながら、メンバー1人1人が自発的に行動できるように動機づけていくことが大事になります。チームの方向性(ビジョン)を1人1人の価値観を交換しながらみんなで決め、その方向性を実現するために何ができるかを1人1人がしっかりと考え、行動に移していく。それが、離れたメンバーで構成されるチームのアウトプットを最大化する秘訣なのです。
ファシリテーションスキルの身につけ方
どうやって身につけたらいいのだろうと迷われる方も中にはいるかもしれません。ファシリテーションについては本もたくさん出ていますし、世の中のニーズの高まりにあわせファシリテーションを学べる場も増えています。たとえば青山学院大学はワークショップデザイナーの養成プログラムを社会人に向けて提供しています。
また、私自身も、複業研究家の西村創一朗さんと一緒に、ファシリテーター育成の講座を開講しました。(9月開講の第2期を募集中です)イベントステージのファシリテーションの内容が主ですが、会話構築と場における合意形成づくりのスキルが身につくので、ビジネスの現場でも役立つと思います。もしご興味ある方いらっしゃいましたら、ぜひチェックしてみてください。
ファシリテーションスキルは、体系的な学習をしなくとも、日常のコミュニケーションを見直すだけでかなり改善するものです。チームとのコミュニケーションがうまくいっているのかどうか。分析しながら、自分なりの改善策をとってみると、いい変化が起きるかもしれません。ぜひ試してみてください。
参考:ファシリテーションの落とし穴について200秒で語っている動画です。