職場のセンサーって気持ち悪い
ビービットでは、より生産性の高い働き方を実現することを目的に、米国のマサチューセッツ工科大学のメディアラボ出身のHumanyze社のセンサーを利用した実験を、2015年に行いました。
従業員がIDカードサイズのセンサーを身に着けることで、以下の情報を取得できます。
・本人の会話の量/トーン/声の大きさ
・誰と会話しているのか
・活動の活発さ
・位置情報(どのエリアにどの程度いるか)
これらの情報に基づき、
・どういったグループが存在しているか
・グループの中心に誰がいるか
・誰が孤立しているのか
・どのチームが活性化しているのか
といった分析が可能です。また、声のトーンは感情を表すため、怒りや、落ち着きの度合いも把握できます。
さらに、営業など成果が定量化できるチームであれば、成果数値と各種情報を紐づけて分析することで、理想的な行動や問題行動を発見できます。
実際に米国ではこのセンサーに基づいた分析によって、コールセンターの電話での解決率を大幅に上昇させるなど、労働生産性の向上に寄与する実績をいくつも創出しています。
我々はコミュニケーションの偏りを発見し、改善施策を打つ段階で実験を終了したのですが、この実験を通じて私が一番驚いたことは、思った以上に参加者からの反発があったことです。
どんな会話をしているか内容は録音しておらず、音声の特徴を記録するだけになっているので、プライバシーは保護されているのが前提なのですが、それでも監視されるようで、身に着けることに抵抗を感じるメンバーが複数いました。
特にトイレに行くときなど、プライバシー確保がより意識される空間では、嫌がられる傾向にあることもわかりました。
さらにプライバシーの問題だけではなく、純粋にセンサーを身に着けたり、充電することを忘れる事象も多発しました。
現段階では心理的にも、物理的にも、一定の負荷が参加者へかかります。
なぜこの計測が必要で、本人に対して、どういったメリットがあるのかという動機づけが強く求められます。そして、計測結果が本人にとって不利な結果につながらないという確約がないと、安心してセンサー環境に身を置くことは難しそうでした。
もちろん、業務として強制力を持って実施することはできるかもしれませんが、採用難の現代において、常時の監視のようなセンサーの装着を義務付けるのは現実的ではないです。
プライバシーに対する感度は人それぞれですが、強く気にする人がいるのは間違いないので、その事実を前提とした活用が求められます。
現時点におけるセンサーとは、気持ち悪いものであるという認識が必要でしょう。