トルコショックの読み方

一連のトルコショックを受けて、これまでトルコ(リラ)が置かれてきた環境などを簡単にレビューした上で、欧州の金融システムへの影響などをBISデータから簡単に考察し、最終的な懸念として難民危機再燃へと結びました。実際のところ、国際与信統計などを見る限り、欧州の金融システムへの影響は軽微と思われますが(数字関係はコラムご参照)、エルドアン政権がトルコ沿岸でシリアを中心とする難民を堰き止めているからこそ、一時的とはいえ、EUが難民危機に対処する時間的・精神的余裕が生まれているという事実は重要です。

ここに至るまでのエルドアン大統領の言動を見る限り、故意的に難民管理を杜撰なものにするリスクは無いとは言えません。故意ではなくともトルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も有り得るでしょう。イタリアやドイツの政情に鑑みれば、今、EU域内に難民流入が再開するのは非常に不味い話です。さらに2019年5月には5年に1度の欧州議会選挙もあるわけです。EU懐疑的な会派をこれ以上躍進させないためにも難民を巡る状況はやはり悪化させるわけにはいかないという事情があります。

金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されていますが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより強い脅威と考えたいところです。

https://www.businessinsider.jp/post-173086

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