生成AIで教員の働き方が変わるか?
生成AIで教員の働き方改革を目指す
文科省は生成AIを活用して、教員の長時間労働を効率化し、働き方改革を推進する実証事業を9月からスタートさせるという。
教員の労働環境の悪さは、近年、問題になっている。学生や保護者からは教員の仕事は授業だけにみえるが、実際には入試や進路指導などの学校運営や部活動の顧問、学内行事の企画・運営、地域の活動など多岐に及ぶ。業務過多で残業や休日出勤が常態化し、サービス残業として隠れて働いていることも少なくない。
生成AIの活用によって、特に事務作業の効率化を行い、教員の負担を減らそうというのが今回の狙いだ。
生成AIで教員の効率はあがる
新技術を導入するときには、最初期に混乱がみられるものだが、それでも中長期的な視野でみれば生産性を飛躍的に高める効果が期待できる。そして、このことは教員の業務効率に関しても同じことが言えるだろう。
私は大学教員であるため、上記引用記事の対象とは異なるかもしれないが、個人的にも生成AIを活用することで恩恵を大いに得ている。作業が効率化し、1日にこなすことができる仕事量が増えたという実感もある。
同様に、生成AIを活用し、事務作業の効率化を行うことで教員の生産性を向上させることはできるだろう。
しかし、作業の効率化を図ることは、はたして働き方改革を進め、労働環境を改善することに繋がるのだろうか。労働環境の改善に作業の効率化と生産性の向上は必要な要素ではあろうが、それだけで狙うが達成できるほど単純でもないだろう。
効率の向上は労働環境の改善につながるのか?
これまで私たちは、多くの技術革新によって生産性を飛躍的に高めることに成功してきた。しかし、生産性が高まった結果、できることは増えてしまい、労働の総量が増えてしまうということも繰り返してきた。
端的な例が携帯電話の登場だろう。携帯電話が普及したことによって、休みの日や営業時間前や後の時間など、いつでも顧客対応を求められるようになってしまった。その結果、効率は高まったが、労働の総量が増えて業務負荷が高まることになってしまった。最近ではメッセンジャーが広まったことで、即時即応がより一層求められるようになっている。
つまり、テクノロジーによる事務作業の効率化は、労働時間を短くするどころか、逆に伸ばす結果にもなりうる。できることが増えると、それまで手を付けることができなかった業務に取り組むだけだ。
事務作業の効率化によって労働生産性をあげ、働き方改革にまでつなげるのであれば、業務過多の原因となっている教員の役割の多さにも手を付ける必要がある。
事務作業の効率化は仕事の総量が増えるだけの可能性がある
生成AIの導入による教員の長時間労働の是正は良いことだ。この取り組み自体はどんどん進めてもらいたいと思う。その一方で、増えすぎた教員の役割の見直しにも同時進行で着手すべきだ。
そうではないと、効率化によって生産性が上がったことで、更に労働量が増えることにもなりかねない。やるべき仕事はいくらでもあるのだ。
現在の流れを続けながら、働き方改革のための既存業務の見直しも進めてもらいたい。