DX時代に求められるリスキリング
「産業界のデジタルトランスフォーメーションをAIと人の協調により実現する」株式会社ABEJAの岡田です。
多くの企業がDXを進めるにあたり、専門人材の争奪が激化しています。
企業の経営幹部の皆様と、DXやAIについて話す中で、かなり高い頻度で出てくるトピックの一つが人材戦略です。
「デジタル人材をどう用意するか?」「AIを誰に担当させるか?」といった課題はずっと前から存在していますが、よりシリアスに議論されるようになったのは、やはりコロナがきっかけなのではないでしょうか。
オフラインを中心とした従来のビジネスモデルだけでは立ち向かえない、待ったなしの状況になって以降、デジタル化という課題とともにそこにセットになっているデジタル人材戦略の重要度があがった印象です。
しかし、中途採用での拡充にも限界があります。世界的にも、既存の社員を再教育する流れは強まっており、仕事上での新たなスキル・技術を習得させる「リスキリング」(リ・スキリング / 学び直し)が叫ばれているようですが、日本でもここ最近、よく耳にするようになりました。
リクルートワークス研究所は、リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
ただ、リスキリングは、個人の関心に基づいて学ぶのではなく、これからも職業で価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ、という点が強調されているのが特徴です。近年では特にデジタル化と同時に生まれる新しい仕事や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職につくためのスキル習得を指すことが増えています。
今月3日に行われた岸田首相の衆院本会議での所信表明演説では、個人のリスキリングの支援に、5年で1兆円を投じると触れられました。
目的は、構造的な賃上げの実現に向けた、人への投資です。
DXを担うデジタル人材の不足に対し、国を挙げて取り組む方針が示されたことを、多くの方が好意的に受け止めたのではないでしょうか。
では、リスキリングが必要となるのはどの層なのでしょうか?
私は、まず経営戦略を決める役職や権限を持っている方々に、デジタルを学んでほしいと考えています。
確かに、経営層が自ら、例えばプログラミングなどの実作業をする必要はないでしょう。
しかし、デジタルで何ができるのか、何を実現すべきなのか、ということをご自身で解像度高くイメージしていただくことが重要だと思います。
なぜなら、そこが起点になって、デジタルを使って〇〇しよう、という発想(経営戦略)が生まれるからです。そうでない場合、デジタルという手段ありきで進んでしまい、「とりあえずDXを進めよう」という曖昧な号令になりがちです。
課題があり、それを解決するためにデジタルを使う、というロードマップを策定することがあるべき姿なのではないでしょうか。
また、デジタルを学び、正しく理解することで、その指針を分かりやすい言葉を持って他者に伝えられることも期待できます。
実際に学びながら手を動かしている現場は、本当に上司が理解しているのか、そうでないのか、見ているものです。
デジタルプロセスを創るにあたり、どう設計するのか、構築するのか、ゴールはどうするのかと、自分の言葉で説明できる程度の基礎知識は学んでおいたほうがよさそうです。
経営層の多くを占めるであろう、ミドル・シニア世代の方々は、デジタルを学び直すと聞くと、大変そう・・・と億劫に思われるかもしれません。
しかし、ワードやエクセル、パワーポイント、スマートフォンなどの新しいツールを学ぶことを繰り返してきた世代です。
ソフトスキルが高いこの世代にこそ、ぜひデジタルをリスキリングしていただきたいと考えます。