見出し画像

“Bregret”(英国の後悔)でBrexitの見直しとなるか?

11月20日付のサンデー・タイムズ紙に英国が欧州連合(EU)との「スイス型の関係」を検討しているという衝撃的な記事が掲載された。どう解釈すべきだろうか。


結論として言えるのは、このようなことが起こる可能性は極めて低いと考えられる。実際、政府はこの案にすぐに冷や水を浴びせたし、そもそも、EUとの関係見直しには、EUへの予算支払い、移動の自由の受け入れ、欧州司法裁判所によるある程度の監督権、というEUからの要求事項を英国が飲む必要があり、それなしに、摩擦のない貿易というスイス型関係を手に入れることはできないことを考えると、Brexitの放棄は当然一筋縄ではない。とはいえ、有権者の意識の変化やBrexitがもたらすさらなる経済的逆風を背景に、中期的にはEUとの関係がより緊密になる公算は大きいかも知れない。理由は三つ。

第一に、過去1年半ほどの間に、有権者の意識が明らかに変化していること、である。英国のEU離脱を支持したことは間違いだったと考える有権者が今では過半数を大きく上回っているという。英国の有権者構成(人口動態など)の変化に帰せられる部分もあるが、最近のYouGovの世論調査でも、2016年に「離脱」を支持した有権者の19%が、今ではその選択が間違いだったと考えている。第二に、英国の成長モデルの後退、である。低税率適用(いわゆる「テムズ川のシンガポール構想」)が、トラス政権下のミニ予算に対する市場の反応を受けて事実上なくなったこと、である。第三に、英国経済が直面している逆風に対する抗力の弱まり、である。輸出や企業投資の回復が相対的に他国比低くなっているのはブレグジットのためである、との考え方からだ。

現実的には、喫緊にEUと英国との関係が大きく変わることは考え難い。保守党のユーロ懐疑派はそもそもEUとの関係見直しに強く反対するであろうし、労働党も2025年1月までに実施する必要がある次の選挙までに、対立軸にしたいとは考えないであろうから、だ。ただし、英国における経済の行き詰まり感、EU側はEU側でエネルギー危機に起因する問題に対して連携したいと考えるであろうことなどを想定すると、“可能性ゼロ”の無視できるシナリオではない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?