海外に進出するおにぎり、その先の展開は? ドイツから考える
ドイツのフランクフルトで2月10日、日本のおにぎり屋チェーン「おむすび権米衛」のポップアップ店が期間限定でオープンしました。筆者も現地でおにぎりを食べて、関係者の方からも少し話しを聞いてきました。
今回はこのおにぎりと、筆者の得意分野であるアニメ・マンガイベントやファン動向との接点について考えてみたいと思います。
(カウンターのショーケースにならぶ「おむすび」。4種類、各3ユーロ)
ドイツのおにぎり。。。
ドイツでは、おにぎりは日本ファンが集まるイベントや日本人が多く住むデュッセルドルフなどに行けば見かけることもありました。ただ、近年、存在感を増しつつあります。というのも、REWEといった大手スーパーがおにぎりの取り扱いを開始し、目にする機会が圧倒的に増えました。ただ、ドイツ化されすぎたのか、日本のおにぎりとの違いも感じていました。
今回、フランクフルトに進出した「おむすび権米衛」については、日経新聞でも2020年8月の記事と少し古いですが、ニューヨークやパリに出店し、コメの輸出にも貢献していると好調ぶりが報じられています。
現地の様子はこんな感じでした。お米は玄米を日本からチルド輸送し現地で精米、炊き上げ、会場でもスタッフが握っていました。
しかし、このコロナ禍です。インフレなどにより経済が停滞し、企業も日本から海外への進出が難しくなっているのではと思われます。そこで、今回のポップアップ店の出店について、関係者の方に直接質問してみました。
というわけで、1)フランクフルトを選んだ理由、2)ドイツのイベント出店の可能性、3)アニメ・マンガファンの位置づけ、について質問しました。
ドイツ初の進出地としてフランクフルトを選んだ理由とは?
パリにすでに店舗を構えているわけですが、欧州の他の大都市でもチャレンジしてみたいという思いがそもそもの発端のようです。大事なのは、日本食が認知されているか。寿司屋やラーメン店が進出している町であれば、おにぎりにもチャンスがあると考えたそうです。
たしかに、フランクフルトでは、近年、ラーメン屋や寿司屋、さらには懐石料理など日本食店が続々とオープンしています。
あとは日本へ/からのアクセスの良さを挙げました。フランクフルトは欧州屈指のハブ空港のひとつとして、日本からの直行便が多数就航しています。
筆者としては、既存のパリ店との相性もあるのかなと考えました。パリ・フランクフルト間といえば、高速列車であるフランスのTGV、ドイツのICEが相互乗り入れによる直通列車を運行しており移動が便利です。
イベント出店の可能性は?
フランクフルトには「マイン祭り」という日本イベントがあると教えてもらい、参加に興味があるとのことでした。ドイツは知らないことばかりで、これから学んでいくそうです。
アニメ・マンガファンってどう見えている?
おにぎり屋から見ると、アニメ・マンガファンはどう見えているのでしょう?これに関しては、パリのイベントに出店した時に感じたのは、その知名度の高さ。説明する必要がないほどだったそうです。
アニメ・マンガファンとおにぎりの関係とは?
アニメやマンガに登場する日本食が海外のファンの関心を集めているというのは、メロンパンやたい焼きなど、筆者の耳にも聞こえてきます。では、おにぎりに関してはどうなのでしょう。フランスのおにぎりとアニメ・マンガとの関係について興味深いNoteの投稿がありますのでシェアします。
たしかに『千と千尋の神隠し』のおにぎりを食べるシーンは印象に残ると思います。
今後もこういった形で作中の日本食が注目を浴びる機会は、継続するのかもしれません。
実はここからが本題なのですが、その先の展開が筆者には気になるのです。
海外進出したおにぎりの次のアクションとは?
日本国内では例えば「すき家」などがアニメ『エヴァンゲリオン』とコラボしていたりします。
つまり、海外に進出する日本の外食産業も、いつ登場するか分からないアニメやマンガに期待するようないわば受け身な体制でよいのかと筆者は考えます。
仮に現地の日本食関連の企業/レストランが特別コラボメニューを考えたとして、大事なのはそこにメリットがあるかどうかです。筆者はあると見ています。ドイツではアニメやマンガの販売ライセンスを契約し、ドイツ語訳を販売する企業が多数存在します。日本で行われているような外食産業とアニメ・マンガとのコラボは、ドイツ語版の販売促進という目的でもやってもいいのではないでしょうか。
加えて、ドイツでもアニメ・マンガファンがたくさん集まる大型イベントが年間を通じて各地で開催されています。現状はコロナ禍で難しい面もありますが、状況は徐々に戻ると考えて良いでしょう。大型イベントにはフードエリアもあります。例えば、会場でコラボメニューを販売してみればどうでしょう。もちろん他にもパッケージをコラボ仕様にしてドイツ語版アニメ・マンガと日本食の双方に向けた販売促進も可能かもしれません。さらに踏み込んでいえば、既存の作品とのコラボでなくても、アニメ・マンガ風のオリジナルデザインのパッケージでアニメ・マンガファンに訴求してみるのも面白いかもしれません。(例えばイケメンな米作りお兄さんがおにぎりを食べている絵があったとして、パッケージに印刷され、販売会場で等身大ポップと一緒に写真が撮れたりしたら。。。)
今回は以上です。現地のアニメマンガ人気を日本食の普及拡大にどうつなげていくか、まだまだ試すべきことはありそうな気がします。
みなさんはどう思われますか?
おまけ:フランクフルトにオシャレな日本食材店がオープン
今回「おむすび権米衛」のポップアップ店が出店したのは日本食材店の「IIMORI ICHIBA」というお店の一角です。実はこの日本食材店自体も今回新たに開店したお店となります。
2月10日の15時には、着物で盛装した関係者のみなさんにより鏡開きが行われ、日本酒が振る舞われました。
こういった日本食材店は今後、日本食を通じた日本文化発信の新たな拠点になるのかもしれません。おわり。
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・本投稿の写真はすべて筆者が現地にて撮影
・取材協力:「おむすび権米衛」
・加筆情報:おにぎりを作成中の写真と説明分を追加しました。(2022年2月10日23:27)
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