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なぜ今、「自走する組織」が求められるのか?

日経朝刊「働き方イノベーション面」の企画として、「教えて!自走するチームの作り方」をテーマにしたオンラインイベントが開催されます。

ありがたいことに、この機会に登壇させていただくことになったので、登壇に先んじて「そもそも自走する組織」がなぜ今求められるのかについて、僕なりの視点から書いておこうと思います。
(本題は「自走するチーム」ですが、僕自身が組織開発に携わってる手前「自走する組織」として扱います。本質的な意味は変わりません)

自走する組織とは何か

まず、自走する組織とは何を指すのか、定義を抑えておきたいと思います。「自走」について辞書で調べてみると、こういう説明がされます。

他の動力によらず、自身の動力で走ること。(大辞泉)

これを組織の観点でいうと、「他人の力に頼らずに、自分の力で走る」ということになります。つまり、他者からの指示をもとに動くのではなく、自ら考え行動して成果を挙げられる組織ということですね。

マネジメント視点だと、いわゆる「マイクロマネジメント」と対極にあるのが「自走する組織」だといえます。

指示を具体的な作業レベルで行えば、メンバー個人は深く考えずとも作業を進めればいいので楽です。マネージャーにとっても、確実に狙った通りの結果を生みやすいので、マネジメントしやすい。そのため、書籍などでは否定されがちなマイクロマネジメントは、一向になくならないのです。

一方、「自走する組織」は、一人ひとりが、自らやるべきことを決め、主体的に行動し、必要な成果を挙げなければいけないので、個々の人材は一定レベル以上の高さが求めらる組織といえます。また、マネージャーにとっては、本人に任せる幅が広い分、管理する時間が減る一方で、成果が読みづらいため実はマネジメントの難易度は上がります

「自走する組織」が機能している典型的な例は、やはりNetflixでしょう。

Netflixでは自社の組織カルチャーを「自由と責任」と表現していて、各自に行動・判断する自由を与えています。一方で、その自由の裏側には成果をあげる責任が伴うという厳しさも込めているわけですね。

このように、厳しさの中で一定レベルの人材を採用しながら、自走する強い組織をつくり上げている好例がまさにNetflixといえます。

*記事からの引用
「ネットフリックスは自由と責任を与えます。知識や経験値があり、ネットフリックスのビジネスを良くしようと思っている人材であれば、会社のビジネスにおいて、いまこのときに何が適切かを判断できます」
優秀な人材だからこそ、下手に制約を設けるのではなく、自由と責任を与える。その人なりに考えてもらって、あとは実行に移してもらう。


「自走する組織」は他の組織モデルと何が違うのか

「自走する組織」という組織モデルがあるのだとしたら、それ以外の組織モデルもあるはずです。

これについてはまず、拙著「カルチャーモデル  最高の組織文化のつくり方」で紹介した、組織モデルの4象限と共に紐解いてみたいと思います。

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組織モデルは、この図のように4つに分類できます。
中央集権型のマネジメントか分散型のマネジメントかという縦軸と、変化を起こしながら成長するか、安定的に確実に成長するかという横軸とで整理されています。

「自走する組織」というのは、権限委譲しながら各々の判断に任せる「分散型」の組織マネジメントを行います。
また、決まった型通りに安定的に組織運営するよりも、各々が自走する中で、現場での化学反応的な変化に期待しながら組織を成長させていく側面も持っています。

そういう意味で、「自走する組織」は4象限でいうと「全員リーダー経営」の組織モデルをとることになります。

この4つのタイプは、「どれかが正しいということではなく、各々のビジネスモデルにフィットしたモデルを意図的に選定し、それをカルチャーモデルとして設計して組織的な強みに育てていくべき」と本では主張しました。

しかし、コロナ禍を経て、組織のあり方の前提が一変してしまったのです。

アフターコロナの社会において求められる組織モデルは「全員リーダー経営」、つまり「自走する組織」一択になったのです。

その理由を2つお伝えします。


(1)「密」から「疎」の組織モデルへ

そもそも中央集権型の組織モデルというのは、産業革命以降、工場などに物理的に人が集まることによって、圧倒的に生産性が向上することが証明され浸透していきました。
オフィスも同様の形を取るようになり、それに伴い、情報や権限を一極集中させることで組織全体の統制を取り、生産性を高め続けてきました。

こうした組織モデルは、電車や車などの移動手段、そして高く広いオフィスビルの設計など、技術的な進化によって可能となってきたわけです。

しかし、このモデルは「密」であることが組織づくりの大前提だったと言えます。

コロナ禍以降、物理的に距離をとった組織運営が必要とされるため、中央集権型の強みがどうしても生かせなくなっています。
こうなると、密の反対の概念としての「疎」の社会を前提に、分散型でありながら生産的に成果を上げられる組織へと移行することが求められます。

Zoomに代表されるオンライン会議ツールや、Slackといったチャットツールなど、技術の進化により、物理的に離れても即時的なコミュニケーションをることが可能となりました。

奇しくも、テクノロジーの進化により実現してきた中央集権型の世界が、次のテクノロジーの進化によって分散型の世界へととって変わられることになったといえますね!

分散型での働き方の典型はリモートワークですが、これにより、マネジメントができないとか、組織カルチャーが浸透しづらいといった課題をよく耳にします。
しかし、オンライン上で無理に「密」を演出することよりも、「疎」の遠心力を活用し個の力を最大限引き出す組織マネジメントが、これから求められると思います。

ちなみに、こうした分散型への力学はコロナ禍の以前からありましたよね。

日本では2018年に発売された『ティール組織』では、自律分散型の組織へと移行する説が解かれています。読まれた方も多いのではないでしょうか。
この理論の凄いところは、ティール組織を組織のあり方の一つとしているのではなくて、組織の変化を「進化論」と捉えているため、一度進化が始まったらあらゆる組織がティール型にアップデートされると明言していることです。

また、こうした組織の分散化の流れは、分散型の社会を前提としたブロックチェーン技術の広まりによって、あらゆる組織に広がっていくという考え方もよく目にすると思います。

たとえばこちらの本『WHY BLOCKCHAIN』では、ブロックチェーンが技術だけでなく社会や組織のあり方をアップデートするものだと言い切っていたりします。

コロナ禍はいろいろな変化を生み出しましたが、「元々あった流れをコロナ禍が加速させた」というのが多くの方の共通理解ではないかなと思います。
これは、個人の働き方だけではなく、組織論の観点でも同様だということですね。


(2)変化を前提とした組織モデルへ

VUCAの時代と言われて久しくなり、世の中の変化が激しくなっていることは言うまでもありません。

(堀さんの顔が大きくて、ドキッとしますねw)

昨今のコロナ禍を経て、我々がより一層認識しなければいけないことは、「こうした外的な環境変化はいつでも起こりうる」ということを前提に経営する必要があるということだと僕は考えています。

「毎年2%ずつ売上成長する」といった、安定成長を志向して着実に経営したところで、外部環境の変化により全てがひっくり返ってしまうリスクがあることを目の当たりにしたのが2020年でした。
しかも、これから人口が減少して市場自体が縮んでいくわけですから、前年と同じことを着実に繰り返しても、マイナスする一方です。

つまり、着実な安定という選択肢は極めて取りづらくなっていて、変化が起きること、そして自ら変化を起こすことを前提に、組織づくりをしなくてはならなくなったといえます。

実際のところ、変化に対する耐性の強い組織と、慣れていない組織で、コロナによる事業インパクトへの対応スピードの違いが企業によりはっきりと分かれていたのではないでしょうか。

たとえば、2020年外食業界は総じて苦しい1年間だったといえます。しかしそんな中、日本マクドナルドの業績は大きくプラスに転じていました。

マクドナルドは、従来からテイクアウトやドライブスルーなどのサービスを展開していたこともありますが、近年ではマックデリバリーやUberEats・出前館でのデリバリーサービス、キャッシュレス決済、モバイルオーダーなど、テクノロジーへの投資を積極的に進めていました。

これらは、従来からあった社会の変化に対して、受け身にならず先手を打って変化を自ら起こしていたといえます。こうした変化に対する事前の準備により、コロナ禍という想定外の社会の変化にもた即座に対応することができたのです。

また、コロナが日本で広がり始めた2020年3-4月ごろは、「学校が休校になり親子が毎日家庭で過ごす」という生活スタイルの変化がありました。
これを受け、マクドナルドは即座に、ファミリー向けのクーポンなどをアプリで展開し需要を喚起していたんですよね。
イートインで時間を過ごす学生やサラリーマンの単身利用が減った一方で、ファミリー客のテイクアウト需要を喚起することで、客数は低下したものの、客単価を大きく向上させることで、全体の売上としてはプラスさせることに成功しました。

これも、変化が起きたら即対応できるような組織体制を整備していたからできたといえます。
こうした市場・顧客の変化に対して、マーケティングチームが即座に需要喚起するアクションを打ち、店舗の店長やクルーたちが新たな需要に即座に対応できる体制を整えていたからこそ、実現した結果です。

マクドナルドの今の好業績は、単にテイクアウトやドライブスルーがあるからというだけではなくて、こうした「変化に強い組織」を作り上げていたことにあったといえるのではないでしょうか。


まとめ

これまで見てきたように、組織はこれから「分散型」へと移行します。そして、「変化に強い組織」が生き抜いていくことができます。

だとしたら、現場に適切に権限委譲を行い、一人ひとりが自ら考え行動できる組織を志向してゆくべきなのです。
そうすれば、分散型組織として個々人の強みを生かせるだけでなく、来るべき大きな変化に対しても、スピーディーに対応し業績を大きく落とすことなく、新たな成長カーブに入っていくことも可能だと思います。

だから、これからは「自走する組織」なのです。

「自走する組織」を構築し、経営トップや上司に依存せず個人の強みを最大化することにより、どんな環境下でも事業と組織を成長させ続けることができると、僕は信じています。

僕が共同創業したAlmohaでは、そうした組織を一つでも増やしていくことに貢献したいという想いから、「自走する組織」をつくるためのコンサルティングや、ITツールの開発を進めています。
(相談あればお気軽にTwitterなどでDMいただけますと幸いです!)

「自走する組織」をどのように作っていくかについては、またnoteでも書きたいと思いますが、『アフターコロナの組織像』としても連載中です。

また、冒頭でお伝えしたセミナーでも議論できると思いますので、もしよかったらご参加ください!

それでは、また!!

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