見出し画像

2030年、1日3時間働けば社会は回るはずだった。

2020年1月1日から日経電子版で連載している「逆境の資本主義」。

資本を集め、人を雇い、経済が拡大すれば社会全体が豊かになる――。

こうした資本主義の常識は、いまや昔。「逆境の資本主義」は、ほころびが目立つ社会の現状を伝える連載です。第2回のきょうは、記事「働き方縛るモノ作りの残像」をご紹介します。


2030年、最大8億人の仕事がなくなる

「100年後には1日に3時間も働けば生活に必要なものは得ることができるようになるだろう」

今から100年後の話ではありません。1930年、経済学者のケインズが予想した2030年の姿です。残念ながら世の中は3時間どころかその2~3倍は働いていますが、それでも19世紀に比べたら労働時間は6~7割短くなりました。

ケインズが思い描いた2030年は経済問題が解決され「働かなくてもよくなる」未来でした。一方、米コンサルティング大手のマッキンゼーが描く予想図は働きたくても「働けなくなる」未来です。

AIやロボットによる代替が進み、世界の労働者の3割にあたる最大8億人の仕事が失われるとマッキンゼーは予測しています。労働者の武器が若さや肉体ではなく、スキルや知識にシフトしていることの表れだといいます。


長く働けば豊かになる時代は終わり

ケインズとマッキンゼーはそれぞれ正反対の未来を描いているのでしょうか。実はどちらも共通項があります。それは資本主義が前提としていた、長く働けば働くほど価値を生んでいたモデルが崩壊したことを認めている点です。

たとえばソフトウエアの脆弱性をみつける作業は、2時間で200万円の報酬になることもある。「働き方縛るモノ作りの残像」では、スキルを生かして単発で業務を請け負うギグワーカーの活躍が紹介されています。

90年前にケインズが思い描いていた「働かなくてもよくなる」2030年。悲しいかな、2020年の今となってはスキルがないと稼げない未来のほうが現実味があります。望むと望まざるにかかわらず、私たち自身が働き方を見直す局面にあるということなのかもしれません。

(日本経済新聞社デジタル編成ユニット 渡部加奈子


「逆境の資本主義」連載一覧はこちら


おまけ:ケインズがよく分かる動画