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給与明細の「控除」ってなに? 日経電子版で学ぶ新社会人の基礎⑥

会社が支払った給与が、まるまる自分の口座に入ってくる訳ではありません。前回取り上げた「支給」から一部が引き去られた残りが実際に手にすることができるお金です。給与明細を見てみましょう。「支給」の隣に「控除」、あるいは「引去」という項目があると思います。こちらを学んでいきます。

控除には大きく分けて「税金」と「社会保険料」の2つがあります。その他労働組合費など、会社によって引かれるものが変わります。

税金や社会保険料を従業員が個別に納めることはまずありません。ほとんどの場合、会社が給与から事前に引き去って納め、従業員には残った金額を口座に振り込みます。このように事前に引き去ることを「天引き」といいます。

1.社会保険料って何?

1.1健康保険料って?

皆さんは病院にかかる際、「保険証」を持って行くと思います。この保険証は健康保険に加入していることを示すものです。保険証を提示し、健康保険を使えば、かかった医療費のうち、一部だけの支払いで済みます。皆さんの場合、3割負担になります。学生の時には、親が払っていることが多いですが、これからは自分で健康保険料を払っていくことになります。

会社勤めの場合、会社ごとの健康保険組合か、中小企業の従業員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」に加入します。

会社によって異なりますが、従業員が支払うべき健康保険料の半分は会社が払ってくれます。ざっくり言えば、給与明細に載っている金額の2倍が健康保険組合や協会けんぽに納めている「あなたの分」の保険料です。

日常的な医療サービスを受けられるだけではありません。下の記事を見てみましょう。

例えば新型コロナにかかって仕事ができなかった、というときには「傷病手当金」という形で生活保障に充てられるお金が支給されます。

少子高齢化で医療費の負担が増えていることから、健康保険料は上がる傾向にあります。

1.2年金って保険?

高齢者になった時や障害者になった時にもらえる年金。実はこれも社会全体でリスクに備える「社会保険」の一部です。そのため、納付するお金は「年金保険料」と呼びます。

会社員が加入するのは「厚生年金」です。学生時代に「国民年金」に加入した記憶があると思いますが、会社員になったら厚生年金に切り替わる、ということではありません。これまでの国民年金に、厚生年金分が上乗せされる、というイメージです。給与明細の「厚生年金保険」の項目では、国民年金も厚生年金もまとめて払っていることになります。会社によっては「企業年金」もありますが、これはさらに上乗せして払うイメージです。

こちらも会社側と折半して納入することになります。

1.3まだまだある「保険」

給与明細に載っている保険料はまだあります。1つは「雇用保険料」です。文字通り、雇用についての保険なので、会社が倒産して失業した時や、退職して転職先を探す時に備えて払っておく保険料になります。

会社にいる間でも、育休を取得した際に支払われる育児休業給付なども受け取れます。

みなさんからするとしばらく先のことになりますが、40歳になるとさらに「介護保険料」も徴収されることになります。


2. 納めている税金は?

「控除」の項目でもう一つ、大きく引かれているのが「税金」です。税金は給与のうち、「社会保険料」を引いた金額にかけられます。

2.1初任給でも「所得税」は払う

所得税は文字通り、所得に応じて払う税金です。国に直接支払う「国税」にあたります。「超過累進税率」という制度が使われており、稼いでいる人ほど税率が高くなっていきます。

現在は東日本大震災からの復興の費用に充てるため、「復興特別所得税」が課税されており、これは2037年まで続く予定です。

例えば所得税率が10%の人は、2037年まで復興特別所得税を含めて10.21%の税金を払うことになります。

2.2「住民税」は2年目から

新社会人の皆さんの給与明細には記載されていなくて、先輩たちの給与明細には記載されているのが「住民税」です。住民税は所得にかかる税金で、こちらは自治体に納付する税金です。

こちらは前年の所得に応じて支払う税金なので、新社会人の皆さんは払う必要がないのです。ただ、2年目になると、1年目の4~12月分の収入があるわけですから、それに応じた住民税を徴収されることになります。さらに3年目になると、1年目の1~3月分と、2年目の4~12月分と、丸1年分の収入が基準になるので、住民税はさらにあがります。

もし、給与が3年間一切上がらなかったら、3年目が1番手取りが少なくなるかもしれない...という税金です。

▼もっと詳しく知りたい方はこちら


▼前回の記事はこちら
給与明細の「支給」ってなに? 日経電子版で学ぶ新社会人の基礎⑤

▼新社会人の基礎シリーズの記事はマガジンから見られます。

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