碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)
新規事業開発の国際化にマネジメント能力がついていけるか?
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新規事業開発の国際化にマネジメント能力がついていけるか?

碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)

海外で新規事業を創る

コロナ禍で一時的に停滞をみせていたビジネスのグローバル化が、昨年後期頃から徐々に盛り返しをみせている。例えば、インド市場に強いスズキは、インド北部ハリヤナ州に二輪車の新工場を建設することを発表した。近年、二輪や四輪車でよく見られるが、市場が急拡大し、大きなインドでの新工場設立とインドを主な市場とした新製品の投入が相次いでいる。ホンダのGB350やスズキのVストローム250SXなど、日本よりも早くインドで新製品がお披露目されるというのも珍しいことではなくなっている。

製造業の研究開発拠点の国際化も進んでいる。経済産業省の調査によると、リーマンショック以降、海外の研究開発費の比率は上昇傾向にあるという。同様に、滋賀大学の竹中厚雄准教授は、東洋経済新報社編 『海外進出企業総覧(会社別編)』からエレクトロニクス産業のデータを分析し、90年代以降、海外研究開発拠点の数が欧米アジアの3地域において急激な増加傾向にあるという結果を示している。特に、アジアにおける海外研究開発拠点の伸びは00年代後半以降、大きな伸びを見せ、全体の半数以上を占める。90年代までは海外研究開発拠点の多くは北米にあったが、21世紀に入ってからはアジアの存在感が増している。また、生産拠点に併設型だけではなく、独立した研究開発拠点も増えており、海外における研究開発拠点の新設が日本企業にとって重要度が増していることもわかる。

海外研究開発拠点の類型

一口で海外研究開発拠点といっても、設立目的に応じて類型化されることがわかっている。類型化の方法はいくつかあるが、良く知られているものは以下の2つだ。
1つは、ストックホルム商科大学のノーベル氏とバーキンシャウ氏(1998年)による3類型だ。1つ目は、「現地適応拠点」(Local adaptor)と呼ばれ、本国本社から現地の生産拠点に技術移転を支援することが主目的とされる。2つ目は、現地向けの新製品や既存製品の現地化を行う「国際適応拠点」(International adaptor)である。3つ目は、世界市場全体に向けた長期的・基礎的な研究活動と製品開発を行う「国際クリエーター」(International creator)である。
もう1つの研究は、ハーバード大学のウォルター・キューメール氏(1999年)の2類型だ。1つは、既存製品を現地の ニーズに適応させることを目的としたホームベース応用型だ。もう1つは、現地の大学や研究機関、企業などの科学技術コミュニティから知識を獲得して、本国にフィードバックするホームベース補強型だ。
近年では、縮小する日本国内市場の先行きの暗さから、海外市場で売り上げのポートフォリオを作ることが求められている。そのことから、「国際適応拠点」や「国際クリエーター」、「ホームベース応用型」の研究開発拠点によって、現地法人が独自のビジネスを創り出して、売り上げをあげる重要性が増している。
しかし、海外現地で新規事業を創ることは言うほど容易なことではない。日本ではうまくできても、海外で新規事業を創り出すノウハウとは異なることが多い。特に、組織マネジメント上の問題で破綻することも珍しくはない。

海外現地法人で新規事業を生み出すマネジメント

NETFLIXがマネジメントの軸として「カルチャー」を重要視するようになったのも、事業の国際化と関連している。
NETFLIXは、「国際適応拠点」や「国際クリエーター」型の新規事業開発拠点を様々な国にもっている。そのため、日本の「全裸監督」や韓国の「イカゲーム」のように現地法人で作られたコンテンツが全世界でのヒットに繋げることができている。しかし、当初は思うように進まなかった。事業が国際化することによって、チームのマネジメントに大きな支障が出たためだ。
NETFLIXの場合は、INSEAD Business School のエリン・メイヤー氏の企業文化、とりわけチーム・コミュニケーションの特徴を測定する『カルチャー・マップ』が役に立った。NETFLIXの社員として共通の価値観を持ちながらも、国ごとの文化や価値観の違いから、コミュニケーション上の問題が多く起きていた。そこで、NETFLIXの本国が持つ価値観と進出先の文化と混じったNETFLIXの価値観を照らし合わせることで、チームの生産性と創造性を高めることに成功した。
多国籍な環境で新規事業を創るためには、チームの多様性を最大限に生かすマネジメントが必要だ。しかし、残念なことに、日本企業の多くは日本国内のダイバーシティでさえ、マネジメントすることに苦慮していることが多い。そして、日本企業がどのように多国籍チームをマネジメントし、生産性と創造性を高めるのかという研究成果や実務書はほとんどないのが現状だ。
日本企業のグローバル化と国際市場での新規事業開発を推進するためにも、日本企業がどのように海外研究開発拠点や新規事業開発部でマネジメントをするのか、体系だった研究が求められている。

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碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)
大分大学経済学部の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピック:採用や育成等の人材マネジメント、新規事業開発など)※日経電子版キーオピニオンリーダー ※コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。