18歳成人となったからには選挙に行こう
自由と責任の範囲が広がる18歳
4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられる。それに伴い、早ければ高校3年生から消費者契約や金融取引などの決断を保護者の同意なしで下すことができる。つまり、従来よりも18歳の若者の自由の範囲が広がる。その一方で、自由には責任が伴うが、18歳の時点で自分の意思決定に責任を持つことができるのか疑問だという声も聞こえる。
それでは、他国における成人の扱いはどうなっているのか。法務省の調査結果を基に考えてみたい。
多くの国が18歳を成人と定める
法務省の調査によると、成人と見なされる年齢で最も多いものが18歳だ。調査対象国の中では、最も年齢が若いのはネパールの16歳だ。同国では16歳で単独で有効な法律行為を行うことができ、自分で責任を負うものだと判断している。16歳で成人というと、日本の江戸時代の元服に近い。もっとも、元服は年齢が定まっておらず、12歳~16歳くらい、中には20歳くらいまで伸ばされることもあった。
州法による独自性の強い米国やカナダは、成人の扱いが州によって異なる。最も多いのは18歳だが、19歳としている州もあれば、21歳としている州もある。
これまでの日本と同じく20歳を成人と定めているのは、タイ、大韓民国、ニュージーランド、モロッコだ。しかし、ニュージーランドは20歳での成年が形骸化しており、飲酒やたばこ、参政権は18歳から可能だ。タイと大韓民国が20歳成年としているのはシンプルな理由で、成年の年齢をアジアで最も早く法律で定めた日本を踏襲している。日本が20歳を成人と定めたのは明治9年(1876年)のことだ。モロッコは詳しい事情が法務省の報告書には記載されていない。
21歳を成人と定めているのは、アルゼンチン、インドネシア、エジプト、クウェート、ケニア、シンガポール、バーレーンなど、赤道に近い国が多い。
成人を何歳からとするかは、江戸時代の日本がそうであったように軍事と深い関係性を持つ。アメリカをはじめとしたアングロサクロンの国々で18歳に引き下げられたのは、ベトナム戦争での従軍が根拠だった。イスラエルが18歳を成人とするのも軍隊に入隊する年齢であるためだ。
また、21歳を成人と考えられたのは13世紀のイギリスに起源を持つ。騎馬兵隊の想い防具を身に着けて馬上で戦うのに耐えることができる身体ができるのが21歳というのが理由だった。その後、21歳の成人はフランスなどの欧州各国にも広がり、植民地支配で全世界に広まった。
一方で、近年の成年年齢の引き下げは選挙と関連付けられることが多い。イタリア、スイス、ドイツ、フランス、フィンランド、ポルトガルなどの欧州各国で成年年齢を18歳へと引き下げられた大きな要因となっている。なお、スペインは他の欧州諸国とは動機が異なり、1970年代に欧州経済共同体への加盟を目指していた同国が72年に欧州評議会決議で成年年齢の18歳引き下げを受けて、18歳と定めている。
国政に若者の意見を取り入れろ
世界の動向を整理していてもわかるように、現代の成年年齢の引き下げは若者の政治参画、選挙への投票率の向上が狙いとしてある。日本でも、2016年から選挙権を18歳に引き下げられた。しかし、日本の若年層の投票率は低く、投票率全体で見ても世界最低水準だ。
民主主義・選挙支援国際研究所の調査によると、日本の投票率(53.68%)は全194カ国中139位と最底辺だ。他の先進諸国と比べて、シンガポール(3位、95.81%)、ドイツ(52位、76.15%)、イタリア(66位、72.93%)、スペイン(74位、71.76%)、カナダ(87位、67.65%)、イギリス(89位、67.55%)と大きく差をつけられている。なお、この手の国際比較で日本と近い位置にいることの多い韓国は97位(66.21%)であり、日本よりも10%以上投票率が高い。
日本の衆議院議員総選挙の投票率をみると、1993年までは7割~6割後半であり、世界的に見てもそこまで低いわけではなかった。しかし、バブルが崩壊して停滞ムードが漂うとともに、国民の政治に対する関心が急速に薄まっている。
年齢別にみると、投票率の低さは40歳代以下が顕著であり、50歳代以上は6割以上が投票している。しかし、年齢を重ねるごとに低くなる傾向が強まる。最も選挙に参加しないのは20代で3割台だ。この値は、10歳代(2017年 40.49%、2021年 43.21%)よりも低い。
4月1日から新成人となる18歳の若者は、大人として周囲から認められるためにも選挙に行き、政治に関心を向けよう。投票先が見つからないのなら、白紙でも構わない。まずは若者の投票率を高めることが第1だ。そうではなくては、日本のみが他国と異なり、「若者の意見が反映されない政治の世界で意思決定がなされる、高齢者による高齢者のための、高齢者の国」となってしまう。それで最も割を食うのは若者なのだ。選挙に行かずに不平不満を言っても誰も聞いてはくれない。選挙という責任を果たして、はじめて不平不満を口にできる自由を手に入れることができる。