前年比50%増の約900イベント、10万人が集う「ニューヨーク・クライメート・ウィーク」
過去2年半程、気候変動関連のニュースキュレーションを続けてきた中で気づいたことがあります。それは、8月から9月にかけての猛暑を経て秋に向かう時期が、最も気候変動について考えるきっかけに溢れているのではないか、ということです。
この時期は以下の理由から、気候変動の影響を強く感じる時期と言えそうです。
記録的な猛暑
関連食物の不作による値上げ(コメ、魚、チョコ、コーヒー….)
関連自然災害の発生
また、この時期には様々な気候変動関連のイベントが集中します
各種データの集計・発表
9月後半の国連総会(ニューヨーク)
11月上旬のCOPに向けた準備
メディアによる気候変動問題の特集増加
そこで、今回はニューヨークで2009年から毎年開催されている「ニューヨーク・クライメート・ウィーク」について取り上げて見たいと思います。
今年は9月22日から29日までの開催期間で、公式・非公式のイベントの数はなんと昨年比50%増の約900で、参加者総数も10万人が見込まれているとのことです。
11月にアゼルバイジャンの首都バクーで開催が予定されているCOPは昨年のドバイと比べても交通のアクセスが悪く、産油国での開催ということもあり、例年よりも参加者数が少ないと言われています。そんな中、非公式な国際気候変動サミットとしてクライメートサミットが位置づけられているようにも映ります。
一方で、残念ながら日本語でのクライメートウィーク関連の報道は極めて限定的のようです。そこで、今回は英語圏の様々なメディアでのクライメート・ウィークについての振り返り記事や動画のアーカイブなどをまとめながら、少しでも全体像の一部や雰囲気をお伝えできれば、と思った次第です(私も実は参加しておらず、あくまでオンライン上の記事やSNS投稿などを元に調べた内容になる点、どうぞご容赦ください)。
クライメート・ウィークとは
Climate Week NYCは、国際的な非営利団体であるClimate Groupが主催しており、迅速な気候アクションを推進することを目的として2009年から国連総会の期間中にあわせて開催されています。今年のテーマは「It's Time」であり、9月22日から29日までの8日間に渡って開催されました。参加者はビジネスリーダー、政府関係者、金融・投資家、国際機関の代表者、気候活動家、メディアなど、気候変動対策に影響力を持つリーダーたちが集結すると言われています。
クライメートウィークNYC2024を通じ、緊急の気候行動を軸に、改革の呼びかけ、新たなイニシアチブなど、さまざまな組織からの重要な発表がありました。主要テーマには、人々を第一に考えること、気候金融、市民の参加、技術の誠実さ、化石燃料課題への取り組みが含まれています。イベントでは世界のリーダーたちのスピーチがあり、Climate Groupのグローバル・TO-DOリストが発表され、企業や政府から持続可能性と炭素削減への取り組みに関する多くのコミットメントが表明されたと、公式ブログで振り返りが述べられています。
注目イベント
多くの非公式イベントはこちらのスプレッドシートにまとめられています。
CTVC x NYCW 2024 Events Tracker : NYCW'24 EVENTS TRACKER
イベントのカテゴリーとしては、サミット・カンファレンス、パネルディスカッション、ネットワーキングイベント、ワークショップ、ショーケース・デモ、ピッチイベント、社交イベント(パーティー、ハッピーアワーなど)、映画上映・芸術イベント、アウトドアアクティビティ(ランニング、サーフィンなど)、多岐に渡っているようです。
主要なテーマとしても以下のような幅広いトピックが取り上げられているようです。「クラーメート(climate)」というキーワードが気候変動対策として技術、金融、政策、社会的側面など、多角的なアプローチを反映し、いかに広範に使われているかが改めて窺えます。
クリーンエネルギーと再生可能エネルギー
特に地熱、核融合、ソーラーなどに焦点
気候テクノロジーとイノベーション
AIと気候テクノロジーの融合
気候テックスタートアップの成長と資金調達
カーボンマーケットと排出権取引
企業の持続可能性とESG
サプライチェーンの脱炭素化
スコープ3排出量への取り組み
気候ファイナンスと投資
気候テック投資戦略
グリーンボンドと持続可能な金融商品
自然に基づく解決策(Nature-based Solutions)と生物多様性
都市の持続可能性と建築環境
電気自動車(EV)とモビリティソリューション
気候適応と回復力
気候政策と規制
循環経済とサステナブルファッション
水資源管理と海洋技術
農業技術と持続可能な食品システム
気候教育とコミュニケーション
多様性、公平性、包括性(DEI)と気候行動
プログラムの中にはサイエンスフェア、映画祭、カラオケなど、イベントとして楽しみながら参加できるようなものも数多く含まれています。
Climate Science Fair (主催:エマーソン・コレクティブ: スティーブ・ジョブズの未亡人、ローレン・パウエル・ジョブズが創設した財団)
Climate Film Fest(気候映画祭)
2021年に起きた様々な気候災害を捉えたドキュメンタリー作品、『The Here Now Project』のプレミア上映がされました。この75分の作品の映像は全て、携帯電話で撮影された動画、ブログ投稿、ニュース映像のアーカイブで構成されている点が特徴です。
政府や自治体による発表も相次ぎました。
米国気候同盟は、気候変動・クリーンエネルギー分野におけるキャリアパスを拡大し、労働力の多様性を強化し、同盟加盟州・地域全体で2035年までに100万人の新規登録実習生を共同で育成するため、「気候変動に対応できる労働力イニシアティブ」を立ち上げた。
もちろん、気候テック分野のスタートアップ、起業家、投資家などが集うイベントも数多く開催されていたようです。
現地に赴いてないこともあり、現地の躍動感、街のあちこちで噂されていたことまでは理解がとても追いつかないのですが、少し時間をかけてでも、どのような議論が行われていたのか、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。
以下はいくつかのメディアでの記事&主催イベントの動画アーカイブです。
ニューヨーク・タイムズ:
クライメート・フォワード・イベントで世界のリーダーや科学者が温暖化する地球について議論 [9/25]
アクシオス Axios House at Climate Week and UNGA
Financial Times
エネルギーに貪欲なハイテク企業グループ、米国主導の炭素クレジット制度に関心を示す - ジョン・ケリー率いるプログラム、ニューヨーク気候ウィークの主要テーマのひとつに
CTVC Climate Tech VCニュースレター
Live from New York (Climate Week) - ICYMI at NYCW 2024 (9/27 CTVC Climate Tech VCニュースレター)
2024年ニューヨーク気候週間には過去最高の10万人が参加し、気候テクノロジーと金融ソリューションに焦点が当てられました。
多様な資本構成と革新的な資金調達により、気候テクノロジー資金調達の「ミッシングミドル」を埋める必要性が強調されました。
オフテイク契約、初の種類のプロジェクト、エネルギー需要増加に対するグリッドの準備態勢の課題などが議論の中心となりました。
ちょうど先日、「気候変動とメディア 日本と海外の報道に違いは?」というテーマのフジテレビの『週刊フジテレビ批評』という番組にゲストとして出演する機会を頂きました。
国内と海外の気候変動対策の報道のあり方という点に関し、今回のクライメートウィークで話題になっていたような気候変動関連の議論の機会、方向性、新しいアイディアやテクノロジーなど、もっともっと国内にも伝わってほしいと願ってます。また同時に、日本で生まれている新しい取り組み、技術なども国内外に発信することも併せて期待しています。
日本発の技術として期待が高まっているペロブスカイト太陽電池なども、きっと今後は海外に向けて発信、マーケティングしていく必要があるのでは、と感じます。
Cover Image : Flickr photo from Climate Group
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