効率性の罠とジェヴォンズのパラドクス

ゴールデンウィーク、みなさん、お休みされますか? それとも、やることが山積みですか? やりたいことが山積みならよいのですが、やらなければならないことが山積みだと、苦しくなります。

ジェヴォンズのパラドクス

ジェヴォンズのパラドクスというものを、ご存知でしょうか。僕は、先日、知りました。

Wikipediaには、次のように書かれています。

ジェボンズのパラドックス(英語: Jevons paradox)とは、技術の進歩により資源利用の効率性が向上したにもかかわらず、資源の消費量は減らずにむしろ増加してしまうというパラドックスである。1865年、イギリスの経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズが著書『石炭問題』の中で、技術の進歩によって石炭をより効率的に利用することができるようになった結果、より広範な産業で石炭が使われるようになったことに注目し、ふつう直感的に理解するのとは逆に、技術の進歩が燃料消費量の減少をもたらすとは限らないと唱えた。

つまり、こういうことだと思うのです。石炭という貴重なエネルギー資源がありました。効率よく使わないともったいない。貴重な資源が、すぐになくなってしまう。技術革新によって、エネルギー効率がアップすることで、同じ効能を得るために消費される石炭が少なくて済みます。ここまでであれば、石炭の消費量が抑えられ、それまでと同じ生活を、より少ない資源で実現できるようになり、貴重な資源を大切に使うことができます。ところが、そうなると、石炭が使いやすい資源となって、その使い道が増えていき、かえって石炭の消費量が増加してしまう。

資源としての時間

この話を聞いて、時間に追われる状況を連想しました。

僕が仕事でパソコンを買ったのは、1989年。Macintosh IIciというものでした。当時、アルバイトしていたマーケットリサーチ&コンサルティングの会社でパソコンを覚え、表計算ソフトでデータを集計し、プレゼン資料を仕上げる仕事をしていました。データはフロッピーディスクや大容量リムーバブルディスクでやりとりしていました。インターネットも使えず、パソコン通信を電話回線を利用して、2400bpsという超低速で行い、テキストベースでのコミュニケーションをするのがやっとでした。1MBのデータを転送しようとして一晩かかってしまったこともありました。携帯電話もさほど普及していませんでした。名刺の裏に、自分が出入りしている会社や喫茶店など、いくつかの行きつけの場所の電話番号を記載している人もいました。知らない都市を訪れる際には、都道府県地図を買って、行き先を調べました。車の運転も、地図を見て、道を覚えて走りました。わからなくなれば、途中で止まって、また道を調べました。現在位置がわからないこともしばしばで、「ここはどこですか?」と地図をもって、道ゆく人に尋ねたこともありました。

下記の動画は、これ自体が2014年と古くなりましたが、変化を見るには面白いものです。

こんなにも便利になりました。スマホも普及し、これまで机の上にあった多くのものを全て活用しても得られなかった利便性を、片手に納めることができるようになりました。インターネット常時接続によって、さらに情報収集や発信にかかる時間は激減しました。

でも、忙しさには拍車がかかるばかりです。昔から言われてきたことです。それこそ、今年53歳になる僕が子供の頃にも言われていました。洗濯機がない時代から洗濯機ができたように、掃除機ができた、調理家電ができた。エアコンも車も、珍しいものではなくなった。飛行機も安価になった。

効率化の罠

生きている時間という有限な資源を、より効率よく使えるようになったのです。どんどん。どんどん。そして、冒頭の石炭と自分の時間は同じなのかもしれません。貴重な資源である時間を効率よく使えるようになったなら、それまでの生活をより少ない時間で実現し、もっとゆとりある生活が送れるようになる…ということはなく、さらに時間を消費するためのものが増えていき、全体としての時間消費量が増えてしまう。昔よりも、もっともっと時間が足りなくなっていく。

時間を自分の手に取り戻すためには、どうすればよいのか。「効率化」ということに、どうやら罠が仕組まれているように思えます。

ゴールデンウィーク。少し、立ち止まって、自分の時間をたっぷりと味わってみるのもよいのかもしれません。何もしない、ただただ、時間が流れることを楽しむ。

そういう時間の楽しみ方を1日くらいしてみてもよいのかもしれません。


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