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昨日、気候変動問題に関心がある方には衝撃的なニュースが飛び込んできました。昨年の温室効果ガス排出量が過去最高に達したとのこと。台風15号や19号もそうでしたが、ああいった激甚災害に対する報道では「温暖化の影響でしょうか。温暖化対策は待ったなしです」といった言葉が必ず添えられますが、実態は・・・なのです。

こうなるとCO2をたくさん出す技術として象徴的な石炭に対する批判がさらに高まることが容易に想像できますが、環境の議論でありがちな、何か象徴的な存在を徹底的に批判するということでは、この議論は済みませんというお話を今日はしたいと思います。

1992年のリオ・地球サミットに始まり、国際的にはこれまで気候変動問題は延々話し合われてきました。その間、京都議定書ができ、パリ協定ができ・・・と決して「放置」されてきたわけではありませんが、その間継続して温室効果ガス排出量は増えてきました。減少したのは基本的に、リーマンショックなどのように世界的な景気後退のときです。

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それでもこのように排出量が増え続けてしまうのは、この問題が環境問題ではなく、エネルギー問題であり、経済問題だからなんですよね。安価な・安定的な低炭素エネルギーを供給する技術が出てきて、そこに移行していくということが必要であり、掛け声ではCO2は減りません。

現状、再生可能エネルギーについては、導入の最大ネックだった”お値段”はだいぶ下がってきました(日本はまだまだですが)。ただ、太陽光・風力は「気が向いたときに気が向いた分だけ発電する」というものなので、これを使いこなすコスト(蓄電池や送電線拡充コストなど)も含めてもっと価格を低減させなければなりません。(もちろん、CO2を吐き出す化石燃料が本来負担すべき外部性も考慮してコスト差を考えるべきではあります)

ですので、こうしたコスト低下という意味も含めての技術開発を進めながら、できる低炭素化をできるだけ進めるということが必要なのですが、EUの主張では、「低炭素化」について認める幅がかなり狭くなっているのが気になる点です。例えば発電の燃料を、石炭から天然ガスに転換すれば、CO2排出量はだいたい半分になります。ただ、これを「半分にするのでは生ぬるい」、「ゼロにしなければ」という議論が勝りつつあり、それを受けて、天然ガスの利用も相当厳しい条件をクリアする場合でなければ認めない方向です。それ以外にも、例えば乗用車で言えば電気自動車や燃料電池自動車は良いが、ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車などは2025年までギリギリ認められるか・・?といった議論がされています。

「気候変動の正義」から考えれば確かにそうなのですが、いきなり脱炭素社会に移行するのは無理ですし、こういう低炭素技術・高効率技術を否定してしまうのはどうなんだろうと思います。ただ、EUの議論を批判するだけではなく、では、どうやって低炭素化→脱炭素化していく?という議論をわが国も急がなければなりません。

「石炭は悪いよねー」「そうだよねー」では済まない話であり、低炭素化と脱炭素化をどう考えるかという戦略策定が急がれます。COP25はもうすぐ始まります。




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