経済成長か、環境保全か〜③台風19号が残した教訓
台風19号が吹き荒れ、東日本に記録的な大雨をもたらしたことで、日本列島は大変な被害を受けました。水が引いたところでも、泥やがれきが積み上がり、ここまででも大変だったと思いますが、原状復帰にまだまだ時間がかかるであろうことも明らかです。
土砂まみれになっている新幹線の映像も繰り返し流されました。JR東日本の北陸新幹線の車両基地が千曲川の氾濫で浸水、車両全体の1/3、120車両に影響が出て、北陸新幹線のダイヤも簡単には復旧できそうにない、という状況になってしまいました。廃車の場合、1車両あたり3憶円かかるといわれていたので、120車両すべて廃車となれば360憶円です。企業業績への影響は免れません(台風の業績への影響として、上場企業全体で約300憶円、JR東日本で最大118億円)。
天災は防ぎようがない部分があります。しかし、この台風19号は異例ともいえますが事前に警戒が出されていました。しかも、長野新幹線の車両センターがある場所は、洪水が起こった場合の警戒程度はハザードマップ上非常に高くなっていました。これを受け、菅官房長官が「JR東の防災対策が万全だったのか検証していくべき」と述べていたことも知られているところです。
前回PG&Eのケースは事業を続ける上でどういう被害が起こりうるか。この想像力をいかにとらえるかが大事だということを理解する上で忘れてはならない、と述べました。残念ながら、JR東のケースもそうだと言えます。TCFDに基づき、かつ、自らの事業のマテリアリティが何であるか、想定最大規模の想定条件におけるどんなことが生じた場合に、被害が甚大となりえるか、想像力を発揮しておけるか――この点をクリアにしておくことが企業経営には求められる、ということだと思います(完)。