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リモートワークの次に訪れるサラリーマンの将来像

 リモートワークは、柔軟な働き方として社員からの支持率が高いが、その中では会社との関係性にも変化が生じている。わかりやすいのは、正社員からフリーランス、またはフリーランスから正社員というように、同じ会社の仕事を続けながらも、雇用契約の体系を変えるケースが増えていることである。この両方のスタイルには、それぞれメリットとデメリットがある。

前者(正社員→フリーランス)のケースでは、在宅勤務をする時間帯や休日を自分の裁量よって決められるようになり、ワークライフバランスをより重視したい人に適している。また節税の面でもメリットがある。サラリーマン(正社員)は、年収に対する給与控除額と所得税、住民税の税率が決まっており、自分で節税対策ができる余地が少ない。

しかし、フリーランスとしてのリモートワークでは、仕事場として利用する自宅の家賃、携帯電話、ネット回線、PC、デスク用品、移動が必要な仕事では自動車の購入と維持にかかる経費などを計上して、年間収入に対する実質所得を下げることができる。実質所得が下がると、所得税率や健康保険(国保)の料率も下がるため、やり方次第では、サラリーマン時代よりも手取り収入を増やすことができる。

そして、後者(フリーランス→正社員)のケースでは、フリーランス時代には無かった安心感が得られるのが最大のメリットだ。基本給とボーナスをベースとした給与体系は、フリーランスよりも安定しており、厚生年金にも加入できるため老後の人生設計もしやすくなる。これまで、外注フリーランスから正社員に登用される道はほとんど無かったが、コロナ禍以降は、有能なリモート正社員をフリーランスの中から探したいという企業が増えている。

ただし、雇われている立場では「好きな仕事、やりたい仕事」を自分で選ぶことができないし、複数のクライアントを開拓しながら収入を増やしていくことも難しい。正社員といえども、終身雇用が約束されているわけではなく、リモートワークの時代には、正社員の離職率も高くなることが予測されている

コロナ前の統計で、サラリーマンの平均勤続年数は日本が約12年、米国は約4年という差があるが、リモートワークでは、賃金条件よりも自分に合った働き方を優先する人が増えるため、コロナ後は国に関係なく、雇用の流動性は高くなるとみられている。

日本のサラリーマンにとっての特典である年金制度についても、フリーランスが一人会社(一人法人)を設立して、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入することで、老後の年金収入をサラリーマンと同等にすることができる。その他に、小規模企業共済、iDeCo、国民年金基金(国保の場合)を活用したり、さらにポジティブな投資で老後資金を増やす選択肢もあるため、老後の安心のためにサラリーマンを続けるという考えは、古いものになっている。

このようにしてみると、リモートワークの先にあるのは「会社」の存在自体が大きく変化していく未来で、経営者が従業員を雇い、ピラミッド型の組織でトップダウン型の会社運営をするスタイルは次第に廃れていく。1つの事業プロジェクトは、社員とフリーランスのように異なる立場のメンバー構成でチームが形成されて、そのプロジェクトから離れれば、また違うメンバーとのチームで仕事をしていく。このように流動性の高いチーム内の契約や報酬分配は管理が複雑になるため、従来の「会社」よりも進化した組織が登場してくることになる。

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