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中央銀行へのモヤモヤ〜日米比較で見えたこと〜

 皆さま、こんばんは。今日は、一国の物価、すなわち通貨価値の番人でもある中央銀行への、私の素朴な疑問を記していきます。 

 今日は日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合がありました。ある出演番組で日銀の黒田総裁の記者会見の中継を行い、それに対して日銀ウォッチャーの井上哲也さんや、私がコメントをする番組構成です。今回の日銀資料や記者会見内容は、現状の景気や物価を日銀自身がどう評価しているかを判断するのが本当に難しい内容でした。ポジティブかネガティヴかよくわかない言い回しが多く、客観的データの解釈ありきの意思決定なのかなと疑問に思う箇所も。例えば、何を物価動向のリスクに上げているかなど‥。(もちろん、上記のようなモヤモヤを感じたのは、私の勉強不足なところが大きいでしょう。)そんな風に番組中にモヤモヤしていると、私は日本銀行に対して長年抱いていた、ある根本的モヤモヤを思い出したのです。それは、

「なぜ日本銀行の金融政策決定会合のメンバーには、アメリカのようなマクロ経済学や金融政策の検証実績のある超著名学術研究者が存在しないのだろう?資本市場にも経済にもその意思決定の透明性を担保するためにもデータなどの客観性が極めて重要なはずだ‥。金融政策の意思決定に、実績のある超著名学術研究者が一人ぐらいメンバーにいてもいいと思うのだけど‥」

というものです。例えば、米中央銀行の前議長のイエレン氏や、前々議長のバーナンキ氏は、世界的にも有名な学術研究者です。バーナンキ氏はノーベル経済学賞候補にも毎年挙がる方です。ここでいう超著名学術研究者とは、大学教授であるとか、金融政策に関する一般書を書いていることが必要条件でなく、アカデミック 界隈で評価される国際学術誌に掲載される学術論文実績を沢山持つ方のことを指します。国際学術誌に掲載されるということは、世界中の頭の良い人達からの厳しい指摘と批判をクリアし、客観的データや理論に基づく論文を仕上げた実績があるということです。つまり、客観性が大変必要な意思決定には、そのような学術研究者は重宝されます。この疑問を、日銀ウォッチャーの井上さんに、番組終了後にぶつけてみました。すると、こんな回答が‥

「いい質問ですね。それはね、僕も問題定義をしたことがあるんですよ。なぜそうなっているかというと、日銀の金融政策決定会合メンバーは、欧米と違って金融政策の意思決定だけでなく、日銀経営についての執行役も行なっているからなんです。つまり、経営も行う必要があるから、学術研究者でなく民間企業人や経営者をメンバーにしましょうねっていう論理のようですよ。」

と、衝撃の回答が!実際に日銀サイトで、日銀金融政策決定会合メンバーの仕事内容をみると、日銀内の報酬決定や懲罰決定なども含まれているのがわかります。上述した私の長年の疑問は、周りの経済学者からもよく聞く疑問でもあります。もちろん、日銀組織の構造全てが疑問への回答ではないかもしれませんし、いろんな背景があると思います。ちなみに、アメリカの中央銀行FRBでは、経営と金融政策の意思決定は分離されている構図になっています。どちらの方が金融政策の意思決定に相応しいかは、判断は難しいでしょう。組織構造によって求められる能力や人材は、同じような意思決定をする機関でも違うことがあるんだなという気付きになりました。ちなみに、日本人にも金融政策に関連した尊敬すべき超著名学術研究者の方々は存在しており、多くの研究者の目標にもなっています。

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(出所 崔真淑著「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」からイラスト抜粋。FRBの運営監督組織と金融政策決定は別で行なわれていることがわかる)


今回の日銀政策決定会合では追加金融緩和は行われませんでした。しかし、既に現状のマイナス金利の弊害や副作用も一部の学術研究者から指摘され始めています。金融緩和をやめられる日は来るのか‥歴史的に金融緩和先進国の日本は世界からもその動向が注目されています。今後も、適宜関連事項を記していきます!

ここまで読んでくださりありがとうございます!

応援いつもありがとうございます!

崔真淑(さいますみ)


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