見出し画像

高齢社会で変化するペットビジネスの方向性と飼育のスタイル

 日本では全体の3割を超す世帯でペットを飼っており、動物が家族の一員として定着している。しかし、ペットの飼い方にも高齢社会の影響は現れており、散歩が必要な犬よりも、猫のほうが飼育数を上回るようになっている。自分が高齢のため、ペットの十分な世話ができないのでは、と心配する人もいるが、ペットを飼うことによる、健康やメンタル面の効果は大きい。そして、飼い主は誰もがペットの長寿を願うようになる。

国内のペット市場は、近年では横這いで推移しているものの、約1.4兆円の規模があり、不況に強い業界としても定評がある。飼い主がペットのために費やしている毎月の平均支出額は、犬が10,818円、猫が7,475円で、ペットフード(3割)、ペット用品(2割)、医療費や各種サービスが(5割)の内訳となっている。

約1,300万世帯がペットを飼育しているため、愛犬や愛猫を長生きさせられる食生活の改善や、高齢化が進んでいる飼い主の悩みや不安を解消できる新サービスを開発すれば、さらに市場規模を拡大していくことができる。

翻って、米国のペット市場は日本の4倍(約6兆円)の規模があり、ユニークなビジネスが次々と生まれている。その中でも、ペットの「健康」や「安全」をキーワードに、新たなペット飼育のテクノロジーやシェアリングサービスを開発する新興企業が伸びている。ペットビジネスには、ハイテクとローテクいずれの切り口からも参入することが可能で、個人のスモールビジネスから、世界での普及を目指すベンチャービジネス(Pet tech)までがある。

たとえば、犬猫のDNA鑑定により、ペットの血統を科学的に調べられるサービスは、Amazonなどのネット通販からも検査キットを購入することが可能になっている。飼い主が愛犬の血統を正しく把握すれば、遺伝的な病気の発生を予防することに役立つ。

ペットフードの購入には、原材料の詳細や仕入れルート、原産国などが示された、透明性の高い製品が選ばれるようになっている。飼い主は、信頼できるメーカーの製品を見つけたらリピート購入する傾向が強く、サブスクリプション販売(定期購入)のビジネスモデルが成り立つようになっている。

また、犬の散歩や留守中の世話を代行する「ペットシッター」は、オンデマンド型のシェアリングビジネスとして急成長しているし、高齢者の飼い主が亡くなった後の里親探しや親権相続は、弁護士の新サービスとしても需要が高まっている。

ペットに注ぐ愛情を、金銭で計算するのは不謹慎かもしれないが、飼い主が失った後の動物が、丁重に扱われるか否かは、それまでに投じられてきた飼育コストによって算定するのが法的な実務になっているのだ。孤独化する高齢社会の中で、ペットに心を癒してもらえる効果は大きいが、ペットの老後をどのように世話をするのかは、新たな社会問題であり、ビジネステーマにもなっている。

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。JNEW会員に対しては、副業や起業、新規事業立ち上げの相談サポートも行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?