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世界で異なる時間習慣とビジネスパートナーとの交流スタイル

 日本では地味なダークスーツを着用すること。女性は控えめにヒールの低い靴を履かなければいけない、できればパンツよりもスカートのほうが好印象。大切な商談は、夜のカラオケバーで行われて、飲酒の付き合いは非常に重要。自分のお酒は決して自分でグラスに注いではいけない。

これらは、海外から日本へ出張するビジネスマンに向けて解説されている、日本のビジネスマナーや習慣である。あながち間違っているとは言えないが、当の日本人からすれば、現代の常識とはズレていると思うだろう。

それと同様に、日本人が海外へ出てビジネスをする場合にも、知らない現地の常識や、間違って伝えられている習慣というのはとても多い。しかも、国によって常識はそれぞれ異なるため、相手のために良かれと思った行為が、逆に不快感を与えてしまうこともある。これらは、知識として学ぶのではなく、実際の経験から身につけていくしかない。さらに、そこからビジネスを成功させようと思えば、相当な海外経験やノウハウが必要になる。

いまは昔と比べて、航空機のチケットは安くなったし、オンラインでも常に連絡を取り合えるようになっていることから、国際ビジネスの商機はたくさん見つけられるはずだが、海外で成功するには、その国の言語、文化、習慣を理解して、現地の人達との信頼関係を築いていくことが大切になる。

【国によって異なる時間の流れ方】

 日本人の時間感覚は、世界でトップクラスの几帳面さである。そのため海外とビジネスをする時に気を付けるのは、「相手にも同じレベルを求めない」こと。そして、日本人流に彼らを上手に操る術を身につけることだ。

たとえば、日本で一度決めたミーティングの日程を、何度もしつこく確認するのは、相手に対して失礼という印象を与える。しかし、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなどの中南米では、約束の時間に相手が現れないことが多々ある。

一度は約束しても、その後から別の用事が入れば、そちらを優先するのが普通と考えているためだ。彼らは、それを悪いとは思っていない。強く問いただせば、「その後の連絡が無かったから行かなかった(約束がキャンセルになった)」と言われるのがオチである。

そんなトラブルに備えるには、約束の前日と当日の数時間前に、電話やメールで「念のための確認」をしておくのが無難だ。ただし、現地の人でも、日本人との商談に慣れている場合には、その辺りを心得ているため、相手への敬意や信頼を示して、“確認”とは取られない、事前の連絡を臨機応変にするのが良い。

また、ラテン(中南米)の国では、日本人の感覚よりも一日の活動時間が、2~3時間は後ろにずれている。ランチが午後2時~3時で、夕食は9時~11時というのが一般的のため、おのずと、仕事の打ち合わせに指定される時間にも驚かされることが多い。極端な例では、夜の11時からミーティングということもある。

これは、気候が暑い地域にみられる特徴で、スペインの南部などでも、会社や店舗の営業時間は9時~14時と、17時~20時に分かれている。つまり、午後2~5時までは、ほとんどビジネスが動かない。加えて、午前11時からの30分は、朝食とランチの間の「メリエンダ」と呼ばれる軽食タイムとなっており、オフィスを留守にしている人も多いので、電話も繋がらない。

そのため、スペインの会社と連絡を取るには、昼の12時~13時頃(日本時間の夜8~9時頃)が都合良く、そのタイミングを逃すと次に繋がるのは、17時以降の夕方になってしまう。

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【ビジネスパートナーとの親睦の深め方】

 日本では、会社の同僚や取引先と仲良くなる方法といえば「飲み会」だが、それは世界の常識ではなくて、国によって交流のスタイルは異なっている。中国では、食事をしながら親睦を深める「食事文化(大量の料理を注文してもてなしをする)」になる。それが、南米のアルゼンチンになると、食事をしながら飲酒をする習慣が無いため、カフェで仕事仲間との親睦を深める「カフェ文化」になり、付き合い方も違ってくる。

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、イタリア文化を踏襲していることもあり、「コンフェテリア」と呼ばれるカフェ(いわゆる喫茶店兼バー)が、親睦を深めるための場所になる事が多い。そこでカフェを片手に、仕事仲間との交流や親睦会をするのだ。コンフェテリアは朝早く(6時過ぎ)から、夜遅く(深夜12時過ぎ)まで営業しているため、時間を問わずミーティングの場として使われている。

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また、南米の中でも、米国から赴任しているビジネスマンになると、効率主義が強くなって、勤務時間後の、個人的な夜の付き合いは避ける傾向がある。仕事の時間と、プライベートな時間とはハッキリと分けているためだ。キチンと仕事さえしていれば、その人のプライベートまでは気にしない、という付き合い方である。

日本人にとっては、特に仕事の用件が無くても、じっくり仕事をしたい相手とは、飲食に誘うなどして「お互いを(人として)知る」機会を自然と設けるものだが、国によっては、「お近づき方」が違うため、その国でのビジネス経験者に様子を聞きながら、ベストな付き合い方を探っていくことが大切である。

そこを踏まえれば、無理に現地の人と同じフリをしなくても、日本人の真面目さや、誠実さを素直に出して、「余計かもしれないが念のため」と連絡を入れたり、メールを受け取ったら「ひとまず受信した」と返信することは、逆に、国際間のビジネスでは、仕事相手から「信頼できる人」として認められて、長期的に付き合ってもらえる可能性が高くなる。これは他国のビジネスマンには真似のできない日本人の長所といえる部分だ。

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