テクノロジーで人生を俯瞰する
© kazuo_yano
2006年3月16日に左手にウエアラブルセンサを装着して以来、12年以上にわたり、24時間左手の動きを加速度センサで記録し続けている(拙著『データの見えざる手』には2014年までの解析を綴った)。
腕の加速度というと、多くの人が、ゴルフのスイングを計測するためでは、と思ったり、運動量を計測するためでは、と思う人が多い。しかし、そのような表面的な意味以上のことがセンサデータには埋め込まれている。
3週間前に、我が家では、ジャーマン・シェパード犬(アビーと呼んでいる)を飼い始めた。これが私の左手に付けた加速度センサの動きに顕著に出ている(図参照)。このように活動量を24時間表示したものを「ライフタペストリー」と呼んでいる。毎日、起きた直後に小一時間、活発な運動量の時間が突然現れてているのだ。1年前のライフタペストリーと比べてみると、その差は歴然としている。もちろん、これは犬の散歩が腕の動きに現れているのである。
さらによく見ると、段々起床する時刻が早くなっていることも見える。犬のおかげで段々生活パターンが朝方に変化しているのである。実は、起床時間のばらつきも小さくなっている。犬の生活パターンを一定にしようとして、人の生活にもリズムが出てきているのである。このように人生を上空から俯瞰してみるような体験はこれまでできなかった種類のものである。
これまで、テクノロジーは、社会を効率化して、便利にするものだった。このライフタペストリーには、この従来の意味とは別の意味が現れていると思う。本人でも気づかない人生の意味を改めて見直す、そんなテクノロジーが登場している。
『サピエンス全史』で過去の人類の歴史を俯瞰したユヴァル・ハラリ氏の近著『Homo Deus』では、今後の人類の方向を描く。そこでは人生と幸福の意味を問い、追求することが人類の今後の一大テーマになるという。
テクノロジーは我々の人生を深く見直すことにも今後大いに役立つと思う。