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東京は台風一過。抜けるような青空です。まだ雨や風が強い地域もあるでしょうし、今日は気温が高くなるようですので、皆さんくれぐれもご安全に。そして、浸水被害などを受けられた皆さんには心からお見舞い申し上げます。

さて。今回の台風が来る直前の土曜日の日経朝刊の記事。正直、いろいろ間違いもあり、何が言いたいのかよくわかりません。(何か意図があるのか??)

まず、直接的なところとして、設備の耐風基準見直しの必要性について。
確かに、現状の電気設備の耐風基準(とはいっても、耐風基準は10分間連続して吹いた場合の風速であり、最大瞬間風速と一緒に比較するのもミスリード)を超えると思われるような風が吹く台風が発生しているのは事実ですが、例えば昨年の台風21号でどういう経緯で電気設備が損傷したかを調べた関西電力さんの報告書(P12ご参照)では、その9割が飛来物や倒木等で残りは地盤流出など地盤の問題であったとのこと。「風で電柱が倒れました」というケースはほとんどなかったのだということです。であれば耐風基準を上げても、コストが上がるだけで効果はほとんどないということになりかねません。


このことは以前から指摘していることで、いずれにしても、災害の後の検証を徹底することが重要なわけです。それが終わる前に、やれ耐風基準見直しだ、やれ地中化だと、現場から遠いところの政治家あるいは役人の「思いつき対策」が費用対便益もわからぬまま実施されれば、結局一番消費者にとってただの負担になりかねません。改善すべきところはいろいろ改善すべきですが、やみくもに思い付きでやるのは、パフォーマンスにしかなりません。きちんと検証し、費用対便益を踏まえて、改善すべきです。

そして、記事の後半では「自由化でコスト競争になったから投資しづらい」という論調になっていますが、そもそも託送料金(送配電設備の利用にかかる料金)は、規制料金として今でも会計分離&別審査(発電や小売りの会社とは会計は分けられていて、国の審査を受ける。何にどれくらいお金を使うかは、国が審査して決める)であり、少なくとも形式上、競争とは関係ありません。

他方、各地の送電事業者さんが電力設備への投資インセンティブを持てなくなっていることも確かです。なぜなら、特に地方・過疎地では、使われる電気の量(=売れる電気の量)が減少しています。過疎地の土地が安いところには、再生可能エネルギーが入りやすいこともあり、なおさら売れる電気の量は少なくなります。
そうなると、いま、送配電網にした投資(託送料金)は電気料金のなかで回収されているので、投資回収できない可能性が高まります。規制料金ですから、値上げ申請すればよいのですが、料金審査の場って皆さんご覧になったことあります??公的な事業ですから、微に入り細にわたって審査されるのは、これは当然ですが、ただ、議論の間で、基準や判断が変わったりすることも往々にして見受けます。(原子力規制なんかもっとそういう点でコロコロ変えられているかもしれませんが。)各社が値上げ申請をためらうのもうなづける、という場面も多いのです。

電力自由化を進めた米国で2000年代初頭に送配電投資が滞ったことが問題となりましたが、規制の不確実性(投資回収の不確実性)についても理由にあげられていたと聞いたことがあります。米国でも送配電事業は規制の下にある総括原価方式なのに変な話だといわれていましたが、今の日本の状況と同じような感じだったということでしょう。

投資が滞っているというなら、その本当の理由はなにか。規制の不確実性や不透明性が、投資を滞らせる懸念がないのか?くらい、メディアであれば取材してほしいところ。
そして、人口減少・過疎化が進む日本で、本当に社会インフラの維持をどの程度コストをかけてやっていけるのか、やっていいのか(投資すれば次世代がそれを背負い続けます)の議論を喚起してほしいところ。

こういう災害の問題、かなり「高齢社会」の問題であることを正面から受け止めて、考えましょうよ・・。

写真は今朝のニュースで、川崎の浸水現場にいた東電の職員の方の後ろ姿。多分履いておられるのは絶縁長靴。この暑い日に、重くて(2kgくらいあるらしい)暑くて大変でしょうが、ぜひ早期の停電復旧頑張ってほしい・・


#COMEMO #NIKKEI

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