日印デジタル協定はハード偏重の日本を目覚めさせるか

日本とインドの両政府がデジタル分野でのパートナーシップを結ぶ。共同研究や人材の相互進出を促すことが目的だ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36896240V21C18A0MM0000/

世界第2位の人口を持つインドは、日本企業にとって非常に魅力的な市場だ。以前より交流も盛んで、多くの日本企業が進出をしている。また、デジタルの世界ではインド人が多く活躍しており、元ソフトバンク副社長のニケッシュ・アローラ氏、グーグルCEOのスンダー・ピチャイ氏、マイクロソフトCEOのサトヤ・ナデラ氏など枚挙にいとまがない。筆者もアメリカに本社のあるグローバル企業のプロダクト開発部門に勤務しているが、直属の上司はインド人である。

IT企業で活躍しているインド人に共通しているのは、インド工科大学(IIT)出身であるということ。IITはインド各地に16の学校を擁しており、工学と科学技術の研究を専門とした国立大学である。すでにグローバル企業の間ではIIT出身者の争奪戦が続いているが、日本企業も人材獲得に動き始めている。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO24759350Y7A211C1000000?channel=DF180320167086

冒頭の協定の記事に戻るが、内容は以下のようなものである。

協定では、デジタル技術の研究開発を柱の一つとする。具体策として、国内最大級の公的研究機関である産業技術総合研究所と、インド工科大学ハイデラバード校がAI技術の共同研究に乗り出す。まずは画像認識などの技術が対象になる見通しだ。次世代の通信技術として期待を集める5Gやロボティクス分野での協業も視野に入れる。スタートアップ企業の相互進出を巡っては、9月に日印共同でインド南部の州都バンガロールに設置した支援拠点を通じて後押しする。バンガロールは米シリコンバレーのようにデジタル企業や人材の一大集積拠点となっており、日本企業が進出する場合にインド政府が関係企業や人材の紹介などで協力する。日本側も優れた技術やアイデアを持ったインド企業を誘致する。大企業との協業も促す。自動車や電化製品などハードウエアに強い日本企業とソフトウエアに強いインド企業との相互補完を進め、世界的なIoT市場でのシェア向上を目指す。

これを読んで気になる点が2つある。1つ目が、スタートアップの相互進出。奇しくもこの記事をバンガロールで書いているのだが、インドのスタートアップ熱は凄まじい。世界各地から投資資金が集まり、ユニコーンと呼ばれる時価総額で10億ドルを超える評価のつく企業も生まれている。成長著しいインド国内で足がかりを作り、その後世界展開を狙う企業が多い。ソフトバンク系のpaytmやOYOといった企業が日本進出をしているが、全体で見ると日本よりも言語的に不自由がなくマーケットの大きい英語圏を狙う企業が多いようだ。日本企業のインド進出の後押しはできるのだろうが、インド企業の日本進出をどう後押しするのかが課題であろう。

2つ目が「ハードウエアに強い日本企業とソフトウエアに強いインド企業の相互補完」というものである。これ自体は現実を直視したものであると感じるが、今後よりソフトウエアの重要性が高まる産業において、日本はこのままでよいのか?という疑問が生じる。相互補完から一歩進んで、お互いが学び合い日本のソフトウエア人材の底上げにつながるような動きを期待している。

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