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“イタリア国債”の投資価値

日本の連休中、9月20~21日にイタリアで地方選挙と国民投票が行われた。地方選挙の開票結果は、カンパーニャ、プーリア、トスカーナ州で中道左派連立与党・民主党が勝利、野党・中道右派「同盟」サルヴィーニ陣営が勝利したのが、マルケ、ベネト、リグーリア。特にサルヴィーニが注目していたトスカーナ(戦後以降左派色が強かった経緯もある)州が与党の勝利となったことにより、小党分立状況は変わらないまでも、最悪の事態は免れた。

また、一方の国民投票は、イタリア内務省によれば、賛成7割、反対3割の賛成多数で承認された。五つ星運動が強く推進してきた政策だが、国民に承認された格好だ。議席数はこれまでの3割超の大幅減となり、議員から見れば、大変な話になってしまった面は拭えない。

ただし、ここから混乱に陥り解散総選挙へと向かうかといえば、そうはならないと考える。理由は以下のとおり。第1に、国民投票の結果として定数削減が実現した結果、どうせ3分の1近い現職が議席を維持不可能となること、第2に、来年度予算シーズンが始まることにより、大統領も早期総選挙を望まないであろうこと、第3に、現行議会/上下両院議員の任期満了は2023年末であり、それに先立ち2020年には新大統領も国会議員により選出される。その為、現行議会の過半数が新大統領選出の機会を妨げられ、右派会派に政権を明け渡すリスクをも孕むような解散・総選挙を選好するとは考え難いこと、である。

もっとも経済面も苦しい。イタリアの2020年GDPは前年比▲10%のマイナス成長に陥り、政府債務GDP比率も2020年中には過去最高水準の162%に急上昇する見通しであることは無視できない。そうした情勢下、景気浮揚効果をもたらし、幾つかの経済構造問題にも対処する、説得力ある予算編成が重要になるが、できるのか。また今後EU復興基金の申請や利用可能資金の管理面で綿密なEU調査を受けなければならないが、できるか。安心はできない。

そうはいえ、政治も経済も不安定な状況が続くが、格付けは少なくとも2020年中は動かない見込みである。フィッチは4月にイタリア国債格付けをBBBからBBB‐へ1ノッチ引き下げた一方、S&Pは投資不適格級まであと2段階の現行BBB/ネガティブ・アウトルックを付与している。S&Pは来たる10月23日のレビューで、上記格付けを再確認するのではないか。それが終われば、今年残りの期間にイタリア関連で更なるレーティング・アクションが取られることは無いと考えられる。

考えてみれば、イタリアには脆弱な面が多い。しかし、そうした面が多く残り、時折話題を提供してくれるからこそ、相対的にイタリア国債のスプレッドは投資妙味がある。“イタリア国債”の投資価値が高まる時期を逃さないようにしたい。

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