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クールジャパンのあるべき姿?〜ありそうでなかったメーカーとのガチコラボ

日産との破談ばかりが紙面を飾ることが多かったホンダに、明るいニュースだ。ポケモンのキャラクターを電動バイクで作っているというものだ。バットマンカー、マッハGOGOなど、アニメの乗り物には多くの人が憧れを抱いたものだ。暗いニュースの多い製造業に、明るい方向性となるのか、アニメ/ゲームなどのコンテンツ産業とのガチコラボについて考えたい。

ホンダが本気でつくる「コライドン」二輪車

次の記事は、「ホンダは27日、人気ゲーム『ポケットモンスター(ポケモン)』に登場するキャラクター『コライドン』をモチーフにした二輪を製作すると発表した。自律走行できる開発中の電動バイクをベースに試作し、将来は人が乗れる二輪として展示会などで活用することを想定する」と報じている。

モビリティの形は、もともと、走るための機能に規定されて決まっていた。空気抵抗のシミュレーションが進むと、勢い、クルマはみな似た形になっていった。クルマもバイクも、機能による差別化は難しくなり、中国メーカーが低価格でシェアを奪うことになる。

そんな中でのコライドンの登場である。唯一無二のデザインは、機能と価格の競争とは一線を画す。本田宗一郎氏の時代、第一回のアイデアコンテストが行われた際の逸話をホンダ社員に聞いたことがある。優勝アイデアが「折りたたみバイク」の提案だったそうだが、それに対する宗一郎氏のコメントが「こんな役立ちそうなものは仕事でやれ。アイデアコンテストなんだから、もっと役立たないものを持ってこい」だったという。

さすが、発想のスケールがでかい。既存の価値体系で優れたものと、新たな価値提案の違いを見事に言い当てている。メーカーの真骨頂は、世界観を変えてしまうような製品を世の中に送り出すことである。これまではそれが技術によるものが多かったが、これからはデザインやサービスアーキテクチャによって世界観を変えることが求められる。

コンテンツ産業の可能性と課題

次のおまとめ記事は、コンテンツ産業の未来を次のように評する。「日本から海外へのコンテンツ輸出は年4.7兆円で、半導体(5.7兆円)、鉄鋼(5.1兆円)にほぼ匹敵します。飛躍的な成長が実現すれば、いずれは自動車(13兆円)さえも上回る存在になり、日本の稼ぎ頭になるかもしれません」という。

コンテンツ業界への期待は大きいが、その一方で、課題も多く抱えている。次の座談会記事では、コンテンツ産業で働く人の処遇についての課題が提起されている。「コンテンツの消費速度が上がり、求められる作品数も増えつつある。国内のアニメーターやイラストレーターが、スマホゲームや海外の制作現場に高報酬で引き抜かれているという話も耳にする。作り手に適切な報酬を還元する仕組みづくりをさらに進めないと、国産コンテンツの現場が維持できなくなくなってしまう」という。

物理世界と仮想世界が溶け合う未来

最近、富山大学のアルミセンターに、きわめて未来的なフォルムのアルミ製電気自動車が持ち込まれた。ポルシェやフォルクスワーゲンでデザインをしてきた芸術文化学部の内田教授が、なんと学生の卒業課題でチャレンジさせた成果である。

次の記事は、4人の大学生たちが本気で自分たちの欲しいクルマを作ってみるというワクワク感を伝えてくれる。「富山大学芸術文化学部の4人の学生が、卒業制作でEVのコンセプトカーを作った。その名も『EVE』=前夜。未来のモビリティの前夜に向けて、若い感性は何を提案したのだろうか? (中略) 『EVE』はクレイモデルでもモックアップでもなく、走行可能なプロトタイプだ。ライトも点灯するし、バックモニターも作動する。大学の卒業制作で取り組むには、大きすぎるプロジェクトにも思えるが…」という。

このエピソードは、日本のメーカーが「芸術文化」からもっと学ぶことの可能性を示唆している。これまでほとんどの日本メーカーは技術をコアコンピタンスとし、デザインや世界観は後付けで広告宣伝の中で議論してきた。懐かしいところでは、糸井重里氏が作った、日産セフィーロの「くうねるあそぶ」のコピーが思い出される。でももし、ほんとうに「くうねるあそぶ」を突き詰めてクルマを作り続けていたら、どんなクルマが生まれていたのだろうか?そう考えると、想像力が止まらなくなる。しかし、現実の日本メーカーはそうはしてこなかった。

富山大学芸術文化学部はアニメや伝統工芸など、幅広い芸術文化を学ぶ学校だ。アニメが大好きな学生がクルマを作ることで、クルマは技術の塊ではなく、世界観の象徴となり得る

日本の未来は、コンテンツ産業と製造業の垣根がなくなり、世界観ビジネスを展開することではないだろうか。

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この記事はnoteマネー[ 本田技研工業 , 任天堂 ]にピックアップされました
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