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SNS規制のありかたを考える

海外では、SNSの利用を規制する動きが出てきている。

アメリカでは、TikTokのアメリカ事業を中国の親会社であるバイトダンスが売却しない限り、米国内で使えないようにしようという動きがある。

また、オーストラリアでは、若年層のSNSの利用を法律で規制する動きが出ている。

これはたいへん難しい問題だ。SNSの利用には、規制を必要とするデメリットもあるが、メリットもある。私自身、SNSの、特に普及初期に今も続く大切な友人関係を築くことができた。当時は会社員だったが、会社に依存しない人間関係ができるという意味でも、その意義は大変大きかった。きっかけはオンラインだったとしても、多くの人とは実際に顔を合わせる関係になり、そういう人からまた人を紹介してもらうという形で、自分の友人の範囲が広がったこと、それが、長い人であれば15年以上も続いていることは、とても得難いことだ。

一方で、昨今の闇バイトに起因する問題がSNSから起きている、つまりはSNSを起点に犯罪に加担させられてしまうということもあり、デメリットがあることも間違いない。

日本政府は、こうした闇バイト募集の投稿を削除要請したり、掲載基準を設けたりしようとしているが、つい最近でも、有名人をかたった投資詐欺の広告掲載の制限に対してSNS各社が積極的とは言えない姿勢であったことを考えると、どこまでこのような対応が実効的なのだろうか、という疑問も残る。

こうした点を鑑みると、若い世代への利用規制は、一定の合理性があるのではないかと思う。例えば、酒やタバコも未成年には許されていないが、成年して以降は規制を受けていない。それと同様に、メリットとデメリットを自分の意志で判断できるようになってから利用できるようにするのは、一つの合理的な規制のあり方だろう。大切なのは、規制されている間に、SNSをはじめ広い意味でのメディアリテラシーをどのように育てられるか、そうした教育を施せるかというところが鍵になるだろう。

一方で、特定のSNSを一律に利用できなくする規制は、表現の自由や情報の多様性を確保するという観点で、弊害があることも懸念される。

今回のTikTokの場合、中国企業が運営していることについては、中国という国家をどう見るのかという点が重要だ。冒頭の記事(社説)にも触れられている通り、中国には「国家情報法」があり、中国国民を、言ってみれば国のスパイとして動員できる法律があるということも知ったうえで利用するかどうか、といった広義のメディアリテラシーがあるかどうかがポイントになるだろう。こうしたことを理解した上で、どのようにそのSNSに接し、利用するかということを判断していくしかないように思う。

どの国でも、左に寄ったり右に寄ったりといった各メディアごとの「色」がある。日本のメディアもそうであるし、例えばX(旧Twitter)にしても、イーロン・マスク氏が買収したこと、そして同氏が多額の資材をトランプ氏の当選のために投じたことを考えると、現状ではトランプ寄り、ないしは共和党寄りのメディアと考えるのが妥当だろう。

どんなメディアでも「色」ないし偏りのないメディアは存在しない以上、それを判断できるようにする教育の充実は、未成年は特にそうだが、青年に達した後も必要だ。刻々とSNSに関する状況が変わるだけに、こうした教育を提供すること、そして個人が基本的なリテラシーを備えることの重要性は、今後ますます高まっていくだろう。

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