「今さらやるの?」という言葉に負けてはいけない
呪いの言葉「それ、今さらやるの?」に、人生を邪魔されてはいけないと思います。新しいアイデアがあり、自分ではとてもワクワクしているとします。しかし結構な確率で、「そんなのとっくにあるよね」と指摘されてしまうものです。それもなぜか上から目線のドヤ顔で。
たとえそれが、 "別に悪気があってのアドバイス" ではないとしても。知ってるから、つい言いたくなってしまうのです。言わなくてもいい、要らないことを。
過去、自分も多くのそのような経験がありました。初めての起業のときもそうでした。2000年代初頭、「Web上の求人情報を自動でクローリングしてくる」という仕組みを思いついて "これはいける!" と確信していたのですが、自称テック通おじさんから「オレその辺に詳しいんだけど、アメリカではもうとっくにあるよ(笑)」と小バカにされたものです。
もし、その言葉に負けて起業をあきらめていたとしたら、今の自分はありませんでした。「言葉」は大事ですよね。一人の人生の大事な局面において、もしかすると大きな可能性を台無しにすることだってあるのですから。
その後、その自分のアイデアを信じて起業し、数年で急成長し、リクルート社からM&Aのオファーをいただき、そしてそれらの経験のおかげで、今、とても面白い人生になっています。当時の雑音に負けずに「やる」と決めた自分の決断を、ほめてやりたいと思っています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC20BT20Q3A121C2000000/
このような、「もう既にあるから今さら遅いよ」みたいなダメ出しをなんどか受けてきて、一つわかったことがあります。それは、相手が昔からあると主張しているものは、実際には "ぜんぜん違うもの" が多い、という事実。
人間には、"なんでも単純化して理解したい" という無意識の欲求があります。だから、新しいコンセプトに出くわすと、なんとか過去の知識を引っ張り出してそれに紐付けて理解しようとする。その方が、自分が安心できるわけです。
その結果、新しいアイデアにちょっとでも似ているものを思い出したら、「あ、まったく同じモデルがあったのを知っているよ」みたいに言ってしまうわけです。細部のこと(かつ重要な差異)については無意識にカットしてしまう。ちょっと似てるから、「同じもの」と思い込んでしまうのです。
悲しいかな、人間の認知能力なんて、その程度のものなんですよね。
相手の、そういう "つれない" 反応を見ると、意気込んでプレゼンした方としてはものすごく意気消沈してしまいます。そして最悪の場合、そのアイデアを葬ってしまうこともある。これこそ、最も避けたい結末ですよね。
アイデアや事業モデルなんて、似ているものはたくさんあります。しかし、そんなことはどうでも良いのです。大事なのは細部の詰めであり、そして「誰がどこまで、本気でやるのか」ということだからです。
少しでも環境が違えば結果は大きく変わるでしょうし、「どうやるか」も極めて大切です。そして何よりも、それを、誰がどんなビジョンを持って、どれくらいの熱意でやるのかこそ、ものごとの成否の最大の要因になるはずです。
だから、「それ、今さら?」という呪いの言葉には、決して惑わされてはいけません。そういう意見を思いつきで軽く言ってくる人の、何十倍、何百倍も、そのアイデアについては考えているはずです。熱意やビジョンも、持っているはずです。
新しいアイデアや挑戦に、「今さら」なんてありません。自分が本気でやりたいと思っている、その気持ちこそが最も大切なものだと思います。