中国でのNFTの人気がどのくらいかご存知ですか?注目される大手IT企業の動き
NFT元年と言われているほど、2021年は世界中でNFTの話題が爆発的な状態でした。とある統計では2021年1年間でNFTについての成約金額が既に196億ドルを超えたとの報道を目にしました。
そして最近日本でのWeb3やNFTへの注目がすごいですよね。日本の友人や仕事で関係のある人から、中国での事情をやたら聞かれます。
でもIT先進国とも言われる中国ではちょっと違った温度感で、日本のニュースコメントサービスで見かけるような強気な意見との温度差を強く感じます。もちろん、ちょこちょこ話題にはなりますが、これほどインターネット人口がいて、IT技術やサービスが圧倒的に発展していて、2010年代中盤には既に暗号通貨がバーの決済で使われるような国の割には、慎重な態度の人がとても多いです。少なくとも全くブームとは言えないです。
今日はボクが中国で実感しているNFTの発展現状について話したいと思います。結論からいうと、そこまで人気になっていない理由は大きく二つあります。
■一つ目の理由、リテラシー
中国が数年間でIT技術が急速に発達し、さまざまな新技術や新ビジネスをすごいペースで体験していて、生き残る類いもの(例えばQRコード決済、 配車サービス、シェアバイク、デリバリーなど)と怪しそうなもの(例えばビットコイン、p2pレイティングなど)への評価にシビアな人が多いことです。NFTについてはネットでは次の波だと煽る人もいますが、冷静に分析する人がとても多いです。
■二つ目の理由、政府の態度
これは政府部門の監督管理や指導政策だけではなく、党の新聞の社説などにも反映されています。特に中国ではビットコインの前例があるから、NFTについても国からある程度規制がかかってますので、大手IT各社も慎重に展開しています。
ちなみに前例とは、中国政府が国内での仮想通貨の取引を禁止にしたこと。2015年頃には世界の仮想通貨の取引市場のユーザーの殆どが中国ユーザーと言われるほど先行していましたが、マネーロンダリングや海外への資産移動を目的とした使われ方を政府が問題視します。結果、徐々に規制が厳しくなり、今では中国内での取引が禁止されています。
■そしてNFTに対しての現在の国の政策
マネーロンダリングや脱税などの違法行為に悪用されないよう中国政府は仮想通貨や暗号資産を強く規制しています。その姿勢は今も変わりがありません。なので海外のNFTアートの資産化に比べ、中国では投資よりも所蔵する目的やデジタル資産の権利確認や版権の保護に用いる期待が高いです。
2021年10月、中国国家版権取引センターをはじめとする関係各者が「デジタル文化とクリエイティブ業界の自律公約」を発表しました。公約ではデジタル芸術品についての11項目の共同認識が言及され、その中には投機的売買へのボイコットが明記されました。特にデジタルアートを売りにして仮想通貨を発行し売買する行為を拒否し、金融リスクをできるだけ回避する、と。
海外のNFTアートと区別できるよう、中国国内で発行されたNFTアートは「数字藏品」(デジタル芸術品、デジタル所蔵品)という名前になり、一定な監督管理ものとに販売され投機的売買をコントロールしようとしています。
現在中国でデジタル芸術品を取り扱う代表的なプラットフォームはアリババやテンセント、BiliBili。それぞれ自分のチェーンシステムを使っていて他のものはその3社の使っていたりもします。例えば中国版インスタことレッド(小红书)はテンセントの連盟チェーンを使ってます。
いわゆる大手各社はそれぞれ独自のチェーンで指定された形式のコンテンツに関する取引行為が可能ですが、売買されるのは版権ではなく使用権だけです。また、ベンチャーであるNFT中国という企業では、唯一国際パブリックチェーンを使って所有権ごとに取引することが可能となりますが、これはベンチャーだからできることかもしれません。
■デジタルアートについても。大手各社の動き
2021年6月23日、アリババが敦煌飛天のデジタル芸術品を19.9元で発売しました(調べたら日本でもメルカリなどで売られていました、日本でも話題なのかな)。これをきっかけに、IT企業と博物館などと連携して手頃なデジタル芸術品をリリースするところが複数ありました。大手も続々と後を追っています。
↑2022年、1月5日、Bilibiliがデジタル芸術アイコン「鳩徳」を正式にリリーズし、0.1元で数量限定で2233個を販売。発売開始から81分間で完売です。
1月19日、大手ネット企業「网易」のネットイース星球がデジタル芸術品サービスをリリース。
他にもネットノーベル大手の閲文グループやXiaomi、家電メーカーのMideaなどが独自のデジタル芸術品をリリースしています。
投機的な転売がしにくい(今転売はグレー状態)ため、現在中国市場での多くのデジタル芸術品は、話題のNFTアートと同じ技術を利用し、マーケティングの一環として扱うことが多い。または取引先や提携関係のある人への“流行りプレゼント”としてやキャンペーンのおまけとして送っているのを目にします
↑例えば、2021年12月24日、新華社の新聞報道に使われた写真11枚をデジタルアート化してそれぞれ1万個を無料で発行しました。無料とはいえ、アクセスするには新華社のアプリのダウンロードが必要で、テンセントのブロックチェーンサービスと協力して提供しているプロモーションだと理解する方がいいでしょう。
■ユーザー像とネット民の声
「新京報」の調査記者が“デジタルアートグループ”を名乗る最も活発な数十個のQQグループチャットに潜入し、調査結果を記事(詳細は参考資料を参考ください)に書いていたのも注目すべき内容でしたので紹介しましょう。
↑左から:2000年生まれ、90年代生まれ、80年代生まれ、70年代生まれ、60年代生まれ、その他
一部の若者が関心があるのは事実ですが、疑う声も相当あります。特に、謎のスニーカーブームの次にトレーディングボックスブームにレーナベルブーム、とさまざま意味不明な流行の裏に相当な金額損失が出るケースが次々と話題のトレンドに入っていることはこのnoteで何度も紹介してきました。NFTが次なのではないかと困惑している声も多いです。
↑超有名人が「友達から特別な(NFT)プレゼントをもらいました」と SNSで公言したら、いくら商業行為ではない、関与してない、広告ではないと言っても広告効果(目的)があることは確実です。
また、デジタルアートとはいえ実物のものと異なり、世界共通のパブリックチェーンでないこともあり運営企業がなくなったらデータがどうなるのとか、デジタルで安くても魅力が感じられなくて一部の商品はキャプチャーで十分という声も多数。
パブリックチェーンにある仮想通貨属性付きのNFTにも、投資よりも撃鼓伝花のゲームみたいな感覚で“花は絶対自分のところに止まらないという保証がないだろう”とすこく冷静な声が多いです。
■専門家の意見とボクの感想
いくつかの記事から専門家の意見もピックアップしました。
こういったリスクをはっきりいう専門家やメディアが多いので、ネット民も無性に盛り上がることはしないでしょう。
メタバースもそうですが、「この波にすぐに乗らないと時代遅れの恐れがある、でも今の時点でがむしゃらに参入するのは危険」と、大手は安全な範囲内で関与していて、ベンチャーはリスクより利益が大事でわりとガンガンやってる感じです。
ということで、中国の事情を客観的な見方から伝えたつもりですが、日本の皆さんが期待する内容ではなくてがっかりされたかもしれません。
ただ、もちろん注目している人はいますし中国から世界初の事例やサービスが生まれるか期待しています。今後もリクエストが有ればこの内容についてもnoteに書いていきたいと思います、興味がありましたらハートを押していただければ!
(参考資料)
・現在中国でリリースされたNFTの一部(値段と発行数)
https://new.qq.com/omn/20220125/20220125A01RZI00.html
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