違う、そこじゃない。携帯料金政治介入の顛末。
携帯料金の政治介入で界隈が盛り上がっているようだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34883260R00C18A9MM8000/?n_cid=TPRN0001
総務省は大手携帯電話会社が回線を提供する格安スマートフォンの通信速度を遅くするなどの「差別」を禁じる。10月にも関係省令を改正する。格安携帯事業者の間では大手が系列ブランドやグループ会社の速度を優遇しているのではないかとの疑念が根強い。公平な競争環境を確保し、消費者が不利益を被らないようにする。
総務省はMNOとMVNOの違いをご存知だと思うのだが、格安スマホの通信速度が大手通信事業者より遅いのは「差別」ではない。一部MVNO業者があたかも不正であるかのような主張をしているようだが、大手が公式に回答しているようにMNOとMVNO間のサービスは公平かつ同条件であろう。
しかし、格安スマホの利用者からは「回線が遅い」という声も聞くのは確かだ。これを理解するには、MNOとMVNOの仕組みを知る必要がある。
https://xera.jp/entry/mno-mvno-mvne
MVNOは設備投資に莫大な費用がかかる無線基地局やコアネットワーク等の設備を持たず、これをMNO(docomo、au、SoftBank)から借り受けることでサービスを提供している。これは一定の単位でホールセールで借り受けるため、ざっくり言うと1Gbpsを何本仕入れるかというような話になる。仕入れた回線にどれくらいのユーザーを割り当てるかはMVNO事業者がその料金メニュー等を鑑みて決定する。利用者向けの価格を安くしようと思えば1回線になるべく多くの利用者を割り当てることになり、ピーク時には帯域が足りなくなり十分な速度を提供できないということが起こる。これが先の「回線が遅い」理由だ。
このことから、いくら「速度差別禁止」を命じたところで、実際今もしていないのだから特に変化はない。これが「菅ショック」への総務省の回答なのだとすると、いまさら感が拭えない。他に指摘するべきところがあるのではないだろうか。例えば現在の電波利用料は適切か、MVNOへの卸価格は適正か、HLR/HSS開放を義務化する等、競争戦略上も有効だと思われる手立ては枚挙にいとまがない。
官邸へのパフォーマンスではなく、真に有効な手立てを省庁には検討していただきたいと願う。
※ 現在、この話題に対してフォーラムで意見を募集しています。ぜひみなさまの意見をお聞かせください。
https://comemo.io/entries/9965
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