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ドイツの閉塞感とネガティブプレッシャー

2021年12月末に、新たに発足した政権はパンデミック関連の600億ユーロの信用枠を、当時エネルギー・気候基金EKFと呼ばれた基金に移管する決定を下した。これはデジタル化や脱炭素化の推進に充てる特別基金であり、後に「気候・変革基金(KTF)」に改称された。だが移管された信用枠は、パンデミックの影響に対処するために当初設立された「経済安定化基金(WSF)」という、別目的の基金をベースとしていた。この移管は論争の的となった。その信用枠は予算外扱いされただけでなく、ドイツの債務ブレーキのもたらす制約を回避するため、財政勘定のルール変更が性急に行われたためだ。加えて、ドイツの財政法の定義では、特別基金は具体的な任務を果たすための経済的に独立した副次的予算とされているため、野党のCDU・CSUはそうした信用枠の転用は違憲だとして憲法裁判所への提訴に踏み切った。

こうした経緯を受けて、ドイツ憲法裁判所は15日に、違憲判決を下した。その結果、2024年と2025年に1年当たりGDPの約0.8%相当の投資資金が失われるリスクもある。これは他の条件が全て同じとすると、成長見通しに下振れリスクをもたらすことになる。KTFは来年にも資金不足に陥る可能性が出て来たことになる。向こう2年間に見込まれる赤字は約600億ユーロ(GDPの1.5%)に上る。WSFの残りの資金を、今年末時点で約1100億ユーロと予想しているが、これでオフセットができなくなったことはドイツ政府にとっては頭が痛い話。

しかも、この裁定は、他の同様の議論にも影響を及ぼす判例となり得ることにも注意が必要だ。例えば、エネルギー価格の上限設定に関連した資金のうち、エネルギー価格の下落によりもはや必要なくなった余りの部分をどう扱うか取った問題につながりかねない。

ドイツは、そのため債務抑制ルールを4年連続で棚上げすることを決めた。ドイツは国としての健全性に揺らぎがでるわけではないとはいえ、ドイツが簡単に財政ルールを弛緩させることになれば、その他のEU諸国に対する示しがつかなくなる。さすれば、欧州全体のリスクにもつながりかねない、ことになる。

シュレーダー時代の改革がメルケル時代に刈り取られたとすると、メルケル時代に何もしなかったことが、現シュルツ政権に重くのしかかる、との見方が可能であろう。しばらくドイツの景況感の下押し圧力が大きくなる上、ここから、欧州全体の信用問題に発展しないか、注視が必要になってきている。


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