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NPS(ネットプロモータースコア)が機能しない!?

ハーバードビジネスレビューに、NPSが上手く機能していない状況を解説する記事がありました。

Where Net Promoter Score Goes Wrong (英語版ハーバードビジネスレビュー 2019年10月18日)

要約は以下の通りです。

・NPSはシンプルに顧客ロイヤルティを計測できるため、米国において多くの企業が活用している
・NPSは事業を正しい方向へと導くことができるが、欠点もある
・NPSはシンプルさのために、正確な評価を取得できていない

問題として指摘しているのは以下の事象です。

推奨者(9点、10点をつけた人)が、実際の活動としては他者へ推奨せずに批判をしたり、推奨と批判と両方を行っている
・逆に、批判者(0点~6点ンをつけた人)が、実際には他者へ推奨している
推奨者以外が実際には他者へ推奨していることがよくある
・また、批判者が実際に批判的なコメントを他者へ伝えることは稀である

このNPSの欠点に対する指摘をどう解釈するべきでしょうか。そもそもNPSを使うべきではないのか、それとも何らかの修正を行い、より使える指標へと改善していくべきなのか。

上記記事で指摘されている、批判者が批判的なコメントを他者へ伝えていないことは問題ではなく、悪口は言いづらいだけで、評価が低いことを否定すべき事象ではないため、無視して良いと考えます。

ただし、私はNPSがシンプルさにこだわったために、一つの大きな事象を見逃してしまっていることは問題だと捉えています。

それは、全ての製品やサービスが万能ではないということです。

あらゆる人にとって、あらゆる状況において、あらゆる目的を達成するために適したブランドは存在していません。つまり評価する際には、誰がどんな状況で、何の目的を達成するために使用するのかを特定する必要があります。

上記の記事に出てくる事例の一つは「ウォルマートに対して批判的な人が、安いテーブルを買おうとしている友人に、ウォルマートをお勧めした」というものでした。総合的な評価は低くとも、特定の状況では最適な解になりえる好例です。

「Spotifyを高く評価している人が、友人にはお勧めするが、両親には勧めなかった」という事例は、自分が高く評価しているサービスが、全員に受け入られられるものではないだけで、それはよくあることです。

「大好きな化粧品ブランドの中に、低品質な商品があり、その商品は評価も推奨もできない」という事例は、どのブランドも改善領域があることを示しているにすぎず、NPSなどの総合評価とは別に、改善点を聞けば把握できる事象です。

既存のお客さまが、自社ブランドに対してどういった評価を行っているかは、その後の関係の継続性、購買量などと大きく相関するため、事業の発展において、とても重要となります。

そして評価がNPSによって、シンプルに計測できることは間違いありませんが、より質問の精度を高めるためには、一定の改良を加えたいところです。

「あなたはこの商品・サービスを友人知人にどのくらい勧める可能性がありますか?」を「あなたはこの商品・サービスを、あなたと同様の状況にいる友人知人にどのくらい勧める可能性がありますか?」とすると、より機能するはずです。

「あなたと同様の状況にいる」という表現は、抽象度が高くわかりにくいため、例えばSpotifyであれば「あなたと同じようにスマートフォンを使用している」といったように、ブランドごとに聞き方を具体化して使うと、記事で指摘しているような矛盾や問題は小さくできるでしょう。

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