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スタートアップで垣間見えた「企業が求める職種」の変化と生存戦略 #IVS2024

参加してきたIVS2024は7月4日から6日に渡って行われました。以前からスタートアップ界隈には関わっていたものの、今回が初参加です。

IVSに関する所感などは別にしますが、今回はYOUTRUSTブース展示について興味深いものがあったのでお話します。

ユートラチョイスに見る企業が求める職種

ユートラチョイスと題され、来場者から「どういった人材を積極的に求めているか」という投票が行われていました。なお、下記の写真は2日目の午後に撮ったものですので、最終的な結果は異なる可能性があります。まずは各選択肢についてお話していきます。

調達がスムーズすぎるCFO

最も票数が少ない状況でした。2024年1Qの調達でも100億円はスマートニュース一社なので、100億円という言葉がピンと来なかった可能性はあります。 

2024年1Q国内スタートアップ資金調達額ランキング(uniqorns調べ)

最強の人事マネージャー

3番目という状況でした。YOUTRUSTブースに来ている人たちなので、多少なりとも採用周りに思い入れがある人達が投票している可能性はあるかもしれません。

AI活用も含め、生産性爆上がりエンジニア

2番目に求められた職種がエンジニアでした。生産性に寄与するというのがポイントになると捉えています。

敏腕セールス

1番はセールスでした。こちらも売り上げを立て、顧客への貢献もするというのがポイントになります。

ランキングと界隈で観察される状況を合わせた考察

私が界隈で感じているスタートアップの状況と似ているため、考察と合わせて触れていきます。

モノを作る人と、それを売る人を求めるビジネスの基本の流れ

スタートアップに関しては「コロナ禍の金余り現象」が異常だったこともあり、現在の投資状況はグローバルで見ても2024年1Qは2017年と同水準の状況です。2021年までが特需だったので、元に戻ったと言えそうです。

State of Venture Q1’24 Report

Meanwhile, dealmaking continued to slide in Q1’24. Equity deal volume slipped for an eighth straight quarter to 6,238, putting it in line with levels not seen since 2016/2017.

State of Venture Q1’24 Report

https://www.cbinsights.com/research/report/venture-trends-q1-2024/

資金調達の厳しさからCFOのバリュー発揮機会は以前より難しいといえます。高い調達金額に追い風を受けた採用業務、加えて福利厚生やワークライフバランスの拡充といった人事の仕事もスタートアップ周りでは伸び悩んでいると考えています。

一先ずは大型の資金調達や、人員の大幅増強よりも、売上貢献ができるモノを作れる人材と、それをしっかりと売って現金化できる営業職が求められている現状を反映していると捉えています。

エンジニアより売れるセールスを求めている組織が多い

売上が低迷するスタートアップなどではレイオフが始まっていきます。エンジニアについても例外ではありません。組織の状況によっても変わりますが、

  • 起死回生の新規事業が躓いたので撤退する

  • 新規開発を止める

といった判断がなされると、現状展開しているプロダクトをとにかく売るという方向に意思決定をすることになります。保守運用のエンジニアを残し、高年収のエンジニアがレイオフされる傾向にあります。 

こうした状況の組織を見ていくと、企業に最後まで残るのはセールスの機能ではないかと思われます。

今後を見据えた生存戦略

特にエンジニアと人事担当についての生存戦略について触れておきます。

エンジニア

別途まとめますが、先立って「エンジニアにとって目標設定は不要だ」という論調がXを席巻していました。組織体制や業態などによっても変化はするのですが、売上・粗利が乏しい企業においてはシビアにバリューの発揮が求められます。特に2022年11月までのエンジニアバブルでは相場に煽られて高額年収提示をしていた企業は多々ありますので、その上ブレた分も含めてバリュー発揮が求められます。

バリューとは何ぞや?という議論になるわけですが、エンジニアのアウトプットがどう売上・粗利につながっていくかは見えにくいものです。売上・粗利目標に対してエンジニアが何を達成すればそこに貢献できるかを目標設定し、追いかけるようなスタイルを取るべきでしょう。単に契約時間内に居れば給与が支払われるという状態の企業は減少傾向にあります。

ビジネス思考の高いエンジニア

ビジネス思考の高いエンジニアについても各社で需要が高まっています。エンジニア出身のPdMなどは探している会社が多く見られますが、ほぼ居ません。適性もありますが、こうしたところを積極的に狙っていくことは良いでしょう。

人事担当

このnoteは人事の方にも見ていただいているので言及しておきたいと思います。

人事の機能のうち人事採用担当については、自社の売上がしっかりと立っており、経営層の意思決定として採用に注力したいという前提がないと専任は成立しません。

また、2022年11月まではエンジニア採用も「正社員の数を集める」ということが最大目標だったため、提示給与のインフレと採用ハードルの低さから人事採用担当者としても入社者数というバリューを達成しやすかった側面があります。

売上が低迷するスタートアップなどを見ていても、下記のような人材の再配置が段階的に発生していました。

  • (採用するポジションに対して採用担当者の人数が多いのでやることがなく急に)評価制度を手直しし始める

  • 営業に配置換えされる

  • レイオフ対象になる

  • 転職先が決まり次第、転職する

バリュー発揮ができる転職先が見つかればよいですが、2021年ほどの景気の良さはないため大量採用する企業も少なく、狭き門となっています。2022年くらいまでは人事フリーランスになったり、RPOに属したりする方も多かったのですが、昨今のスカウト媒体の返信率低下などを踏まえるとバリュー発揮はしにくいものです。進んで特化するのはお勧めしにくい状況です。

資金調達がうまくいっていたり、売上・粗利がしっかりしている企業であれば広報やDevRelといった選択肢もあるでしょう。採用以外にも労務、評価、育成(最近だとリスキリング)といった本来の人事機能が持つところにも興味を持ちつつ挑戦することで、キャリアをリスクヘッジしておくことを強くお勧めしています。

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久松剛/IT百物語の蒐集家
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