予実管理

予実管理はなぜ大事か

予算(事業計画)とは現在の事業理解を反映したものである。予算は、売上の発生メカニズムやコストの発生メカニズムをモデル化する。モデルの中には変数(パラメータ)があり、基本的にはこの変数を達成していれば、予算が自動的に達成されるという前提で作られる。つまり予算は、その時点での事業の理解そのものを表している。

予算と実績が合わないということは、事業の理解が浅いということである。何かしら前提としていることが間違っている、見落としていることがある、わかっていないことがあるということである。事業の理解が浅いと、どれくらいのリソースを投下するとどれくらいのリターンが得られるかをコントロールできていないことになるため、投資の不確実性が高い状態とみなされる。

投資の不確実性が高い状態だと、資金調達コストが上がる。仮にまったく同じ構造の事業をもつ2社があるとする。コントローラビリティが高いとみなされる会社と、そうでない会社で集められる資金量は大きく変わる。

結果として、予実管理能力の差により、同じ構造の事業を営む会社でも資金調達能力に差が出る。資金調達が原資となり、プロダクトへの投資、営業活動への投資はすすむので、資金調達能力に差が出るということは、プロダクトの差や売上・利益の差につながる。予実管理能力の差が大きな結果の差に増幅されるということである。

(事業計画に関してはこちらの記事でも書いているのでご参照ください)

予実管理の一歩目

まずは予算で変数として扱っているものの可視化と継続的モニタリングが一歩目である。

継続的にモニタリングし、予算と実績の差分がどこから発生しているかを知ることから始まる。

モニタリングしていると、どういった状況がノイズなのか、どういった状況だとうまくいっているのか、どういった状況だとまずいのかが素早くキャッチできるようになる。

予実管理能力を上げるには、予算ショートしそうなことをなるべく早く察知することが大事である。予算ショートに対するアクションには一定の時間とリソースを要する。察知が遅いと、時間的余裕がなくなりリカバーの可能性が低くなる。なので予算ショート可能性の見極め、それもなるべく早い段階での見極めが大事である。正確かつ先行指標的なアラートをキャッチできるようになると、対策の時間的余裕が生まれるため、大きな予算ショートを防ぐことにつながる。

差分があった時のアクション

予算はいくつかの仮定を置いたモデルであるため、実績値が予算通りになることはまずない。何かしらのノイズであったり、構造的なマイナス・プラス要因で上振れたり下振れたりする。

予算の下振れ

差分が発生した時、まずチェックすべきは「下振れ」である。

下振れの差分がある場合はそれに対するリカバーの分析・アクションを行う。アクションにさけるリソースは有限のため、差分の大きさや改善ポテンシャル・インパクトを推定し、何から優先して取り組むかを決める必要がある。その際「具体的に数値で」考えるが大切である。

各変数の下振れには無視していいものとそうでないものがある。無視すべきものは会社の実力や努力と関係ないようなノイズである。無視していけないものは、自社で一定コントロール可能な変数である。

大切なのは、数値の振れに対して、どの変数がどれだけずれた結果の影響なのかを把握することである。ある変数の下振れが10%程度であればその後の努力でリカバーも可能だが、50%下振れているような場合は努力以前にそもそも構造的な何かを見誤っている可能性が高い。

変数とその予算と実績を結びつける。それを継続的にモニタリングし、ショートしたときは、ブレイクダウンして未達の分析をし、アクションをする。このサイクルを回すことが予実管理能力が高められる。

予算の上振れ

次に予算に対して「上振れ」のケースである。まずは上振れの要因は何か?要因は一時的なノイズなのか、なにかしらの恒久的改善のヒントになるかを分析する。

恒久的改善のヒントになるものは、そのインパクト・ポテンシャルを具体的に数値で推定する。そのインパクト・ポテンシャルが現在の他の施策よりも大きそうであれば、優先的に新規施策として取り組むといったアクションに落とせる。

予算の上振れは、今まで見落としていた機会発見のチャンスでもある。予算を定めることで定常的な状態が定められるため、非定常的な上振れに気付ける。これを分析することで次の大きな成長仮説を得られるということも少なくない。

モデルの見直し

恒久的な改善のヒントと思ったものがただのノイズだった、一時的な外的要因によるものだったというケースも少なくない。そういうケースでも反復される外的要因(たとえば5月はGWがあり営業日が短い。GWは毎年やってくるみたいなもの)は、反復的で法則性のある外的要因としてモデルに入れ込む必要がある。そうすることでより緻密でブレのない予算が生まれる。

また先行指標的な変数でそれぞれの予算を達成しているが、totalの目標値(たとえば売上)が未達の場合も、モデル修正が必要なケースである。この際はモデルの修正を行う。大抵は、混ぜてはいけない(前提が違う、法則性が違う)変数が1つの変数に混ざっていたり、リードタイムなど時間の要素が入ってないことで目標値がブレることがおこる。こういうときはメッシュを細かく変数を分けることで修正する。

たとえば先行指標である商談数は達成しているが、結果指標である売上が未達の場合は、商談の中に受注率か単価を下げる要因であったりリードタイムを伸ばす要因が混じっているはずである。

よくある例としてSDR(インバウンド)とBDR(アウトバウンド)の性質は違う。こういうときは、商談数を一括りにせず、SDR商談数, BDR商談数というように分解しないといけない。商談数 * 受注率 * 単価*リードタイムというモデルを選択する場合は、受注率や単価、リードタイムが一定となるような商談をグループとしてまとめ分割する必要がある。

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