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米国の関税引き上げが物流と生活に与える影響

Willbox 代表の神です。
物流業界を中心に話題になっているトランプ米大統領が公約に掲げる関税の引き上げについて取り上げていきます。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2425E0U5A120C2000000/

ご存知の通り、米国の関税引き上げが本格化すれば、日本企業のサプライチェーンに大きな影響を与えます。特に、自動車業界のようにグローバルに部品を調達し、各国で生産・輸出を行う産業は、直接的な打撃を受ける可能性が高いです。国交相も「国際的な貨物輸送への影響を精査する」とコメントしていますが、物流業界としてもこの変化を冷静に見極め、対応を考えていく必要があります。


1. 関税の影響は物流だけにとどまらない

関税の引き上げというと「企業側の問題」と思われがちですが、これは私たちの日常生活にも直結する話です。影響の流れをザックリと整理すると、以下のようになります。

①関税が上がると、輸出が減る
 日本の自動車、電子機器、工作機械、家電、半導体などが米国市場で売れにくくなる。

②輸出が減ると、国内の工場の生産量が減る
 大手メーカーが生産縮小やコスト削減を検討。発注量が減るため、関連する中小企業もダメージを受ける。

③工業製品全体に影響が波及する
 自動車や家電、機械部品などの生産が減ることで、その原材料となる鉄鋼、化学、電子部品、物流など多くの産業に波及する。

④仕事が減ると、雇用や給料に影響が出る
 ボーナスカット、賃金抑制、派遣・契約社員の雇い止めなどが発生する可能性。

⑤消費が落ち込むと、物価上昇と相まって生活が厳しくなる
 収入が減る一方で、輸入コストの上昇によって食料品や日用品の価格が高騰し、家計が圧迫される。

つまり、関税の問題は「海外の話」ではなく、「私たちの生活」に直結するのです。

2. 工業製品への具体的な影響

関税の影響は自動車業界だけでなく、電子部品、半導体、精密機械、工作機械、鉄鋼、化学製品など、あらゆる工業製品に及びます。
たとえば、日本の半導体や電子部品は米国の製造業にとって欠かせない存在ですが、関税が引き上げられれば、価格競争力を失い、台湾や中国、韓国メーカーに市場を奪われるリスクが高まります。これにより、半導体関連の工場での生産縮小や、国内メーカーの設備投資抑制が進み、結果的に雇用や地域経済に打撃を与える可能性があります。

また、工作機械や精密機器の輸出も落ち込めば、日本国内の製造業全体が弱体化します。日本の産業は、グローバルなサプライチェーンの中で強みを発揮しているため、関税の影響でその流れが滞ると、国内のものづくり全体に悪影響を及ぼすのです。

中でも一番注目して見なければならないのが、自動車産業です。
日本が外貨を稼ぐ強力な出稼ぎをしてくれている産業です。この自動車も「工業製品」としてカテゴライズできるでしょう。この工業製品の雄である自動車産業が、海外の規制にさらされると、付随する工業製品も大きな影響となり、人々の暮らしにも大きく影響するのです。

3. 物流の視点から考えるべきこと

物流業界もこの影響をダイレクトに受けます。輸出量が減れば、港から出ていくコンテナの数も減少し、トラックや倉庫の稼働率も下がる。当然、物流企業の売上にも影響が出て、結果的に物流業界で働く人たちの収入にも影響を及ぼします。
また、輸入品の価格も上がる可能性があります。例えば、関税が上がったことで、米国産の食料品や工業製品の価格が上昇し、輸入が減ると、日本国内の市場に影響が出る。物流業者は、新しいルートを開拓したり、輸送コストを抑える工夫をする必要に迫られます。

最後に

関税引き上げのような貿易政策の変更は、経済全体の流れを大きく変える可能性があります。このような外部環境の要因による変化の波を乗りこなすために、これまでの歴史を見ても、変化の中で企業は新たな方法を見つけ、環境に適応してきました。物流業界も例外ではなく、より柔軟な輸送ネットワークの構築や、新興市場へのシフト、デジタル技術の活用などで、この荒波を乗りこなすことが求められると考えます。


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