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ファシリテーションに学ぶ、会話の中で問いを立てる技術とは?

「一人一人の考え方の違いによって問題が起こります。対話を通して意見を合わせることが大切です」

という話はよく聞いてきました。

コロナウィルス感染拡大後の社会においても、新しい時代を生きていくための知恵や経験を対話によって共有することの重要性が各所で指摘されています。(静岡大・竹之内教授、ポストコロナへ「対話する社会」に

しかし、ぼくが子どもの頃には、対話をするためにはどのような技術が必要なのかを学ぶ機会は多くありませんでした。大人になってから「ファシリテーション」という方法を学ぶなかで、「対話」の技術を学ぶ機会を得ました。そのおかげか、生活が少し楽になったように思います。

たとえば、妻との対話を通して家族の方針を決めたり、子どもとの対話を通して喜びを共有したり、友達との対話を通して新しい発見をしたりすることが増えたり。

今日は、ファシリテーションを通して学んだ、会話の中で問いを立てるコツについて、ちょっと文章を書いてみます。

「よく聞くこと」は、「問いを立てること」

「相手の話をよく聞きましょう」とか「傾聴しましょう」とはよく言われますが、具体的に何をしていいかわからないですよね。

自分の意見も言いたいのに、相手が一方的にしゃべるばかりで、相槌をうったり、共感コメントを挟むだけになってしまう。「相手が話したいことがあるときは傾聴すべきだ」という思い込みから結局自分の意見に蓋をしてしまう、ということもしばしばあります。

そんなとき、問いを立てて深めていくと、関係性がフラットになり、楽しくなっていきます。

「あえて問う」から初めてみる

対話の中で問うためのコツは、「なんとなくニュアンスでわかる気もするんだけど、あえて問うてみる」というスタンスをもつことです。

たとえば「私、アニメでは『エヴァンゲリオン』が一番好きなんですよね」みたいな話になったとします。「へ〜そうなんですね、ぼくは『ガンダム』かな〜」「私は『進撃の巨人かな〜』」などと会話がつづきます。

こんなふうに、暗黙のうちに”お題”が決まり、一人一人が語っていくシーンってよくありますよね。

そのときに、あえて自分の好きなアニメを言うまえに、相手に問いを立ててみます。

「エヴァンゲリオンのどんなところが好きなんですか?」とか、「何がきっかけでエヴァを見始めたんですか?」とか「好きな登場人物は?それはどんな人物なんですか?」など、いろんな問いが考えられます。

それらをあえて問いかけてみると、相手は意外と考えて語ってくれます。また、問いによってこちらの発話機会も増え、関係性もフラットになっていきます。

こんなふうに、会話の中であえて問う実験を積み重ね、「問いによって会話が深まるんだな」という実感をおぼえることで、どんどんスムーズに問いが出せるようになっていきます。

対話型鑑賞から学んだ「問い」の技術

ぼくは対話型鑑賞のファシリテーションを通して、この感覚が養われていくのを実感しました。

対話型鑑賞のファシリテーションとは、アート作品を鑑賞しながら参加者同士の対話をうながす技術です。

作品を見ながら、ファシリテーターは参加者に向けて「この作品から感じたこと、考えたことは?」と問いかけます。

その問いにぽつりぽつりと答える参加者に対して「それはこの作品のどこからそう感じたんですか?」と問いをたて、作品に対する観察の解像度を高めます。

さらに「作品のその部分から、どんなことを考えましたか?」と問うと、さらに考えを深めて聞くことができます。

対話型鑑賞は「ニュアンスで伝わってるだろう」と参加者が思い込みがちなところを、「この作品のどこからそう考えた?」「その部分からどう考えた?」と、「あえて問う」ことで、作品や他者、あるいは参加者自身への理解が深まっていくのです。

ぼくは、こんな風に対話型鑑賞を通じて、こちらが投げかける問いによって思考のベクトルが変わることを体感し、問いを立てる楽しさを味わっています。

筆者が実践している対話型鑑賞についてはこちら。(オンラインで「対話型鑑賞」やってみた アートの探索遠足イベントレポート

問いをつくるうえで気をつけるべきこと

しかし、気をつけなければならないこともあります。

「問い」は、他者の思考のベクトルを操作する「力」を持っています。その力を不当に行使しないために、意識するべきことがあります。

それは「相手がその思考のベクトルに進みたいかどうか?」を察知し、話が進む方向を合意することです。

先ほどのアニメの例で言えば、自己開示することが合意されていないにも関わらず、「エヴァンゲリオンはあなたの人生にどんな影響を与えたのですか?」と問われたら、相手は不快な思いをするかもしれません。

「今日はお互いのことを深く知りましょう」といった目的が合意されていることが必要だとぼくは考えています。

良い問いをつくるための参考文献

こうした「問い」をつくりだす技術やその論理については、こちらの本で詳しく紹介されています。


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