碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)
ワーケーションは地方活性化に繋がるのか?ただの流行りで終わるのか?
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

ワーケーションは地方活性化に繋がるのか?ただの流行りで終わるのか?

碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)

ワーケーションで盛り上がる地方

コロナ禍は数多くの変化を生んだが、その変化によって新しい契機を見出している人々もいる。ワーケーションは、地方活性化の新たな施策として、コロナ禍にあった一気に広まった。とりわけ、テレワークが首都圏の大企業を中心に広まり、所得に余裕のある層が海外旅行に行けない代わりに地方旅行で代替するニーズと合致した。富士通やリクルートのように、地方在住でテレワークで勤務を推進する企業も増えた。このような背景もあって、いまや日本全国の地方都市がワーケーションの誘致合戦で盛り上がっている。

ワーケーションは地方の何に貢献するのか?

ワーケーションはたしかに新しいビジネスとして期待できるとともに、ワーケーションによって訪れた首都圏の人々が関係人口として、その地方のファンになってくれることも期待できる。その反面、あまりに草の根活動過ぎるところが、一時的なブームで終わりそうな予感を与える。
地方都市の抱える最も大きな問題は、人口の減少だ。特に、高齢化が進み、若者が大都市圏に移住するため、若者不足は深刻だ。若者にとっても、地方都市は働く場所として魅力のある企業や産業が少なく、給与も安い。首都圏で働いて地元に帰りたいなと思っても、仕事の魅力も低く、低賃金なために転職する気までは起きない。特に若い女性にとっては深刻で、地元が好きだとしても、地方を生活の拠点にしたいと思わせる誘因がない。そのため、多くの自治体が2040年までに消滅可能性都市に選ばれてしまっている。消滅可能性都市と呼ばれるか否かの基準はシンプルで、20 ~39歳の若年女性人口が5割以下に減少すると予想される自治体のことを指す。つまり、地方都市の人口減少で、解決すべき一丁目一番地は若い女性を如何に惹きつけるかにある。
さて、ワーケーションに話を戻すと、日経新聞の記事にもあるように移住者の女性が頑張ってサウナとワーケーションで鳥取を盛り上げようと頑張っている姿が描かれている。ワーケーションのような新しい話題は、担い手が若者となることも多い。その縁があって移住してくる人もいる。このような事例単位でみると、悪いことではないようにも思われる。

草の根活動の満足感と課題解決は混同しない

消滅可能性都市から脱するためには、若い女性にとって魅力的な都市となる必要がある。それでは、具体的にはどれくらいの女性を惹きつける必要があるのだろうか。ここで、人口3.5万人の豊後大野市を例として考えてみる。国勢調査の結果を参照すると、2010年時点で20歳から39歳までの女性は3,213人だ。これが2040年には1,542人になると予想されている。30年間で47.99%にまで減るという予測だ。そして、2015年の国勢調査では2,735人(85.12%)に減少し、このままのペースで進むとおおよそ予想通りの展開となる。これを覆すためには、できれば1,000人規模、少なくとも100名前後の若い女性を移住もしくは定着してもらう必要がある。
さて、ワーケーションで関係人口が増えることで、豊後大野は20~39歳の若い女性を100名以上増やすことができるのだろうか。ワーケーションを頑張った結果として、若い女性を100名増やすことができると言い切るのは楽観に過ぎるだろう。また、ワーケーションのビジネスモデルで年商数十億を稼ぐような規模の事業にすることも現実的ではない。規模が大きくならないと行政に影響を与えるほどの雇用を生むことはできない。
だが、個人や企業がワーケーションを事業とすることは良いことだ。成長している新しいビジネスであり、伸びているビジネスに投資をすることは悪いことではない。家族経営の規模であれば、地方でワーケーション事業を営むことで食べていくこともできる。宿泊業や観光施設の場合には、新たな収入源としてサービスに取り入れることも悪い話ではない。つまり、個人や企業レベルの話として、ワーケーションを取り組むことは悪い話ではない。しかし、それを地方活性化だといって社会問題の課題解決に繋げようとするところに無理がある

地方は社会課題に対して悠長過ぎないか?

筆者自身も首都圏から地方への移住者だが、地方の人々は陥っている危機的な状況に対して、解決策が草の根活動過ぎて、解決すべき問題を直視していないと感じることがままある。草の根活動で盛り上がること自体は悪いことではないが、それで「地方活性化です」と言うには無理がある。悠長なことを言っていると、地方は本当に破綻する。なぜそういうかというと、私の母方の地元は北海道赤平市であり、同市は財政破綻間際までいき、人口0人の消滅集落が次々と出ている状況だ。赤平市では、市営病院の運営費が財政を逼迫しており、その運営を地域住民のボランティアの協力に頼っている。2020年の時点でボランティアスタッフの最高齢は92歳、高齢者が無償労働することでなんとか支えている。赤平市は2019年に人口が1万人を割り込み、人口1万人以下の市として歌志内市、三笠市、夕張市に次いで4例目だ。
ワーケーションは、個人や企業の取り組みとして応援して、あわよくばで関係人口という言葉を使って地方活性化とするのは避けよう。しっかりと解決すべき問題を直視し、問題解決のためのストーリーを作ることが地方活性化には求められている。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
碇 邦生(大分大学/合同会社ATDI)
大分大学経済学部の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピック:採用や育成等の人材マネジメント、新規事業開発など)※日経電子版キーオピニオンリーダー ※コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。