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過去の失敗は、未来への助走に変わる

僕は、独身研究家というふざけた肩書(本人的には真面目です)で、テレビなどメディアに多数出させていただいていますが、名乗っているだけではなく、ちゃんと独身生活者を研究しています。最近は、一度結婚して離婚してソロに戻った男女との対面調査を数多く実施しています。

離婚原因は人それぞれですが、特に、離婚男性ほど過去を失敗として引きずる傾向があります。対面調査中、後悔の念を延々と吐露する男性もいます。誰かに聞いてもらいたかったんでしょうね。一方、女性は切り替えが早い。こんなところにも「ソロで生きる力」の男女差が見て取れます。

どんなに後悔したところで、物理的に過去は変えられません。

これに対して異論はないと思います。


さて、日本最大のオンラインサロンを運営するキングコング西野さんが、近畿大学の卒業式で行ったスピーチをご存じでしょうか?

とてもいいスピーチでした。こちらにその全文が掲載されています。ぜひお読みください。

記事のタイトルになっている「僕たちは、過去を変えることができる」という部分について、ちょっと長いですが、以下引用します。

想像してください。僕たちは今この瞬間に未来を変えることはできません。そうでしょ?
「10年後の未来を、今、この瞬間に変えて」と言われても、ちょっと難しい。
でも、僕たちは過去を変えることはできる。
たとえば、卒業式の登場に失敗した過去だったり、
たとえば、好感度が低い過去だったり、
たとえば、アホな相方を持ってしまった過去だったり、
たとえば、友達と一緒に恥をかいてしまった過去だったり…
そういった過去を、たとえば僕の場合ならネタにしてしまえば、あのネガティブだった過去が俄然、輝き出すわけです。
「登場に失敗して良かったな」と思えるし、
「嫌われていて良かったな」と思えるし、
「相方がバカで良かったな」と思えるし、
「友達と一緒に恥をかいて良かったな」と思える。
僕たちは今この瞬間に未来を変えることはできないけれど、過去を変えることはできる。
これから皆さんは社会に出ます。
様々な挑戦の末、最高の仲間に出会えることもあるでしょうし、最高のパートナーに巡り会えることもあるでしょうし、最高の景色に立ち会うこともあるでしょう。
一方で、涙する夜もあるし、挫折もあるし、傷を背負うし、言われのないバッシングを浴びることもあるでしょう。
挑戦には、そういったネガティブな結果は必ずついてまわります。
でも、大丈夫。
そういったネガティブな結果は、まもなく過去になり、そして僕らは過去を変えることができる。
失敗した瞬間に辞めてしまうから失敗が存在するわけで、失敗を受け入れて、過去をアップデートし、試行錯誤を繰り返して、成功に辿りついた時、あの日の失敗が必要であったことを僕らは知ります。
つまり、理論上、この世界に失敗なんて存在しないわけです。
このことを受けて、僕から皆さんに贈りたい言葉は一つだけです。
挑戦してください。

「過去の失敗は、現在の行動次第で、未来に必要な助走になる」ということを言っているのだと僕は解釈しました。

これから社会に出て行く学生たちにとって、これ以上ない追い風の言葉になっていると思います(この内容と同様のことは西野さんの著者「魔法のコンパス」の"おわりに"にも書かれてあります)。


とはいえ、ちょっと知識のある方はこう思ったりもするでしょう。

「いやいや、過去は変えられないよ。有名な言葉に"他人と過去は、変えられないが、自分と未来は、変えられる"というのがあるじゃないか。過去を変えるより未来を変える方が現実的だし、前向きだぞ」と。


奇しくも、僕も、2017年1月に上梓した拙著「超ソロ社会」のあとがきの中で、「自分と他人、過去と未来は変えられるのか?」について言及しています。そして、このテーマは、キンコン西野さんに影響を受けた考えであることも明記しています。もっと言えば「超ソロ社会」という本を書いた動機に彼との出会いがあるのです。

せっかくですので、「超ソロ社会」のあとがき全文を掲載します。


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「超ソロ社会」あとがき 全文

20年後の未来、あなたは何をしていますか?
20年後の未来、日本はどうなっていると思いますか?

本書の冒頭でこんな問いをさせていただきました。少子高齢化と同時に、日本はソロ社会になります。人口の半分が独身者になるのです。これはもはや避けられません。であるならば、我々はそれにいかに適応していくかを考えるべきで、それは個々人が自己の自立を考えることと同じことです。独身とか既婚とか置かれた状態は関係ありません。一人一人がそれに向き合う必要があります。

「他人と過去は、変えられないが、自分と未来は、変えられる」

カナダの心理学者で精神科医のエリック・バーン氏のあまりに有名な言葉です。

自分の思い通りにならない他人を嘆いても、過ぎてしまった過去を悔やんでもどうにもならない。そんなことで無駄にするなら、今の意識と行動によって自分と未来を変えよう、という非常に前向きな言葉です。

他人は変えられない。

その通りです。しかし、他人と自分はつながっています。他人の影響で自己が変わるのと同様に、あなたの影響で誰かが変わることもあります。あなたが相手に強く共感すれば、相手もまたあなたに共感しますし、あなたが相手を嫌えば、同様に相手もあなたを嫌うでしょう。誰か他人とつながった分だけ自分の中に新たな自分が生まれるのならば、あなたが誰かの中に新たな他人を作っていると言っても過言ではありません。

過去は変えられない。

これもその通りです。あの時こうしておけばよかった、という後悔は誰もがするでしょう。恥ずかしい失敗や悲しい失恋をした過去は、完全に消去してしまいたいと思うかもしれません。しかし、過去もまた現在と未来とつながっているのです。過去の出来事それ自体は変わりませんが、過去は今の行動のコンパスになります。過去から学び、行動を変えれば、アウトプットとしての未来は変わる可能性があります。ということは、それは自分にとって過去の意味づけが変わるということです。そうして過去は積み重なって、いつでも今の行動の指針となっていくでしょう。

他人と過去は変えられない。が、変わるのです。

そして、「自分を変えよう」と無理に思わないことも大切な視点です。「自分を変えたい」と思うということは、どこかで唯一無二の自分自身の存在を信じていることの裏返しです。自分を上書きして塗り変えたいという気持ちは、一見ポジティブなようでいて、どこか現在の自分自身を否定したり、嫌悪するネガティブな想念を喚起してしまいます。

「自分を変えよう」ではなく、自分の中に新たな「自分を育てよう」と考えていきましょう。

そのために他人とつながることが重要です。誰かと相対することでしか、新たな自分というものは生まれてこないのですから。

自分と他人も、過去と未来もすべてつながっています。一人一人が「ソロで生きる力」を育み、新たなコミュニティを育み、未来を育んでいければいいと心より思います。

本書の執筆に当たっては、未婚・離別を含むたくさんの独身生活男女の方とマンツーマンでお話をさせていただく機会を得ました。年齢も職業も、今まで過ごしてきた環境も違う皆さんとお話できたことは、私自身「自分」に向き合い、新たな自分を生みだすよいきっかけとなりました。ありがとうございました。

また、おもしろ絵本作家の西野亮廣さん、絵本作家ののぶみさんには、ニコ生出演させていただいた時よりお世話になり、たくさん刺激をいただきました。その縁で西野さんの町づくりプロジェクトである「おとぎ町」を知り、少しだけ参加もさせていただきました。「おとぎ町」では、独身も既婚も子どもたちも分け隔てなく、見知らぬ者同士が知り合って、それぞれが自分の中に新たな自分を生みだすきっかけの場となっています。まさに従来とは違う新しいコミュニティの形だと感じましたし、これが、本書執筆の強い動機付けとなったことは確かです。ありがとうございました。

2017年1月
荒川和久

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人も時間も経験も、きっとつながっているのだと思います。


きっかけのニコ生出演の一部はログミーで記事化されています。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。