見出し画像

いつ頃ワクチン接種受けられそうか、外野からデータで簡易予測してみた

ようやく我が国でも新型コロナウイルスワクチンの接種が本格化し始めそうだ。

どうしても感染者数や死亡者数に目を奪われ、ワクチン接種に関する注目は二の次になってしまっている感じがしている。

しかし、日本に先行して接種が進む国では、確実にワクチン接種による感染者数低下の効果が表れているようだ。効果が認められるということは、人命を救う上でワクチン接種の進捗がまさに文字通り「死活問題」であることは間違いがない。

そして、経済の面でもワクチン接種が進むことによって再稼働が図られる動きが徐々に出てきている。例えば英国ではワクチンの接種の進捗及びそれによる感染抑制の効果が出始めていることから、不要不急の旅行についても徐々に制限を緩和する動きが発表されている。

UK to reopen international travel in May

こうなると、新型コロナウイルスで大きな打撃を受けていた旅行や観光関係の業界にとって大きな復活に向けてのインパクトがあり、まさに経済の面でもワクチン接種の進捗が「死活問題」になっていると言ってよいだろう。当然、旅行観光以外の業種の景気も回復してくる。

さらにはニューヨークではビジターに対しても新型コロナウイルスワクチンを無料で接種することによって観光経済復活の呼び水にしようと検討をしているということで、私の周りでもちょっとした話題になった。こちらは実現するかどうかはまだわからないが、こうした動きすら出てきているということに注意をしておく必要がある。

もちろん人命の「死活問題」が最優先なのだが、こうした経済の復調に後れを取りビジネスの「死活問題」になることの影響が、私の仕事の関係では気になっている。実際にビジネスの不調で自殺する人が出てくるので、こちらも人命にかかわる問題だと言える。

とはいえ、私自身は医療関係者ではなくそちらの知識や人脈もないので、公開されているデータから、今後のワクチン接種進捗の簡易なシミュレーション・予測を試みてみた。それによって、たとえばいつ頃から上に紹介した英国のような旅行制限緩和が可能になりそうか、それに伴って旅行者向けの施策の実施可能時期を推測する、といったことが可能になる。

医療者の立場からは、水野先生がワクチン接種についての見解を述べられており、大いに参考になっている。

高齢者については7月いっぱいまでに2回の接種を完了するという首相や大臣の発言があったものの、なかなか進みそうにない、ということが書かれており、実際にそうした報道もされている。

医療者に次いでワクチンを優先接種される日本の高齢者(65歳以上)は約3,600万人おり、そのうち5月上旬の段階ですでに1回目の接種を受けているのはまだ24万人に過ぎない。また高齢者に先行して接種が始まっている医療者約480万人についても1回目の接種が完了しているのはまだ6割程度、2回接種完了者は1/4に満たないということで、こちらもまだ十分に進んでいるとは言えず、むしろ途上国並みかそれ以下、と言われるような状況だ。

ワクチン自体は接種対象者全員の分が確保できる見通しという報道もあるが、果たして私たち、特に高齢者以外の国民がワクチンの接種を受けられる見通しはいつになるのだろうか。

ここでは仮定として、

・ワクチンの輸入自体は接種に必要な分が遅滞なく確保される
・ワクチンの効果は全国民が2回接種完了するまで初期接種者も持続する
・現行ワクチンが効かない変異種が出現しない

の3点を前提条件として予測してみたい。

まず、厚生労働省が発表している接種計画は、来年2月までに16歳以上に対して2回のワクチン接種を終えるというものだ。

対象者は15歳以下の人口約1,600万人をのぞいて約1.1億人、接種回数は2.2億回になる。これを単純な月割りで表したのが青い棒グラフになる。

昨今首相や河野大臣が発言をしている7月末までに高齢者の2回の接種を完了するという場合の予測がケースAのオレンジの線。ここには、高齢者の接種完了時には当然完了しているはずの医療者の接種も含めた。同じペースで8月以降も接種が継続されると、年明け頃に2.2億回の接種が完了する。もしこれが実現するなら厚生労働省の計画よりは少し前倒しで接種は完了することになる。ただし、実現には1日に100万回程度、土日も休みなく打ち続けることが前提になる。

同様に、菅総理の発言にある1日100万回接種の場合を予測したのが、ケースのBとC。すでに5月なので、これまでの接種実績と、5/19までは50万回/日、5/20以降を100万回として計算している。これによれば、土日も休みなく1日100万回の接種をすれば、年内に接種が完了する(ケースB・赤線)。

土日も返上で実施することが現実的なのか、人員的なキャパシティーが不明なので、土日や祝日を休んで、月20日の稼働で1日100万回のペースで接種すると仮定した場合がケースCの黄色線。これによれば厚生労働省の計画よりは若干遅れるが来年の春頃には2.2億回の接種を完了することができそうだ。

ただし土日休む場合であっても1日100万回接種が現実的なのかが、資料がなくよくわからない。

官邸のページでこれまでの接種実績を見ると、1日あたりで最も多い接種回数が医療者で33万回、高齢者で約2万回であることから、合計して35万回接種が現在の1日あたりのキャパシティであると考えられる。

報道されるところでは大規模接種会場が東京で1日1万回、大阪で5000回のキャパシティがあるという。これを足しても1.5万回/日にしかならないが、仮にこれらと同規模の会場がそれぞれ10か所ずつできるとすると、1日当たり15万回接種のキャパシティがプラスされる。

そこで既存の35万回に加え、1日あたり50万回の接種を休日あり(月間20日稼働)で行った場合をシミュレーションしたのがケースD(青線)だ。これによると2.2億回の接種が完了するのは再来年(2023年)の1月頃になる。

最も遅いケースとして、接種回数が現状維持レベルで、土日祝日も休みつつということになると、接種が完了するのは再来年末、2023年11月頃までかかる予測になるが、さすがにもう少しキャパシティは上がるものだと期待したい。

実際にはどのくらいまでキャパシティが上げられるかについて、判断する資料がないので何とも言うことができないが、順当に行っても、1年後でもまだ接種完了できないでいる人が残される可能性はありそうだ。

それを考えると、仮にニューヨークで計画されているビジターに対してワクチンを打つプログラムが実施されるのであれば、1回目の接種から2回目の接種までの期間が3週間から4週間、また出入国に伴う自己隔離期間が合計で1ヶ月かかるとしても約2か月あれば接種を完了できるのかもしれない。国内で2か月以内に接種の順番が回ってくると考えられる場合除けば、海外で接種するほうがより早く自分の生命の安全を確保しまた経済活動を元に戻せるようになる可能性もある。ただし移動に伴う感染リスクは考慮しなければならない。また、ニューヨークの無料接種に使用検討されているのは、J&J社製のベクター系ワクチンということであり、その良しあしの判断はあると思う。だが、国内でも今後必ずmRNAワクチンが自分に割り振られるのかは不明だ。

いずれにしても接種のスピードを少しでも早めるためには、私たちに出来ることとしては、引き続きなるべく感染しないようにして医療のリソースを感染者の対応から接種にどれだけ振り向けられるかもカギになる。

行政側としては、現実に問題となっている、接種体制はあるのに予約の受付で電話やネットがパンクしていて、接種が進まない問題をいかに解決できるかが問われ、地域住民の生命だけでなく地域経済を守ることができるのか自治体とその首長の力量が問われることになると言えるだろう。

小さな自治体であれば、今月内にも全対象住民の接種を完了する見込みも出てきている。

少なくても、全国平均の接種完了率を下回る実績しか残せない自治体の首長は、政治生命の「死活問題」になるかもしれない。それも含めて、ワクチン接種は様々な意味で生殺与奪のカギを握っている。

いずれにしても、予測のどのケースが現実になりそうか、上記の公表データのなかでは、接種がある程度軌道に乗ったと思われる時点で官邸が発表する1日当たりの接種回数がどの程度であるかをキーにすると判断できるのではないかと思う。今後のビジネスの計画を立てる上で、ひとつの参考になれば幸いだ。

いいなと思ったら応援しよう!