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英フィナンシャル・タイムズの有料購読者100万人突破。サブスクリプションビジネスの成功のヒントについて

英国フィナンシャル・タイムズが目標を1年前倒して有料購読者100万人を達成とのこと。ニューヨーク・タイムズは2018年末の段階で有料購読者430万人(電子版は271万3000人、前年比2割増)と急成長を続け、2025年までには1,000万人を目指すといいます。他の多くの新聞、特に地方紙含めたメディア企業が苦戦を強いられる中で、改めてブランド力があり、優れたジャーナリズムコンテンツを誇り、データ活用、デジタルトランスフォーメーションなどの戦略的な取組みを行うことが出来る伝統メディアの強さを見せつけられた印象です。
FTのデジタル購読者は全体の3/4以上、紙版単体でも利益を出していて、FT全体の購読者の7割は英国以外在住とのことです。

Digidayの記事ではFTがこの成長を実現するためにどのような取り組みを行ってきたかが詳細に描かれています。他のメディアでも学び、真似ることが出来る点があるかもしれません。いくつかご紹介してみたいと思います。

まずは大前提として、「長期的な視点」と「データ・ファースト」アプローチを採用し、新しい読者獲得のための商品開発と既存読者の維持に力を入れているとのことです。

データサイエンスの活用に力を入れ、どのコンテンツがよく読まれているか、どのくらいの頻度でサイトを訪れているか、訪問した際の頻度、訪問時に読む記事の数、読者獲得、継続率などの分析にも取り組んでいるそうです。
新しい指標として「品の高いニュース消費」(Quality Reads)を掲げ、少なくとも記事の半分を読む際のページビュー、サイト滞在時間、スクロールの深さ、似たようなコンテンツを分析し、ニュースのデスクは毎週データを参照しながら改善につなげる努力も継続しているとのことです。

学生などの若い世代への戦略にも抜かりがなく、ニュースレター、カスタマイズしたコンテンツ配信、その他にも以前からポッドキャストに相当力を入れていることも報じられています。

ロイター・インスティテュートの調査によると英国で有料購読をする層は約500万人と言われていて、FTの成長は、もちろん楽ではないものの、まだまだ続くと専門家は分析しています。同じく英国発の週間紙であるThe Economistは紙と電子版で合計160万人の読者を抱えているそうです

今後海外のニュースを見渡す際、リベラル寄りとされる米国のニューヨーク・タイムズのみならず、巨大テック企業の規制など含め先頭を走っている欧州の視点を理解するためにも、フィナンシャル・タイムズの視点は是非意識してみたいところです。フィナンシャル・タイムズの日本語訳の記事は平日毎日、日経電子版で約7本ずつ掲載されているので、購読されている方はこちらも活用しないともったいない、と感じます。

FTがどのような新聞で、どのような歴史をたどって今に至るかは小林恭子氏による著書、『フィナンシャル・タイムズの実力』に詳しく描かれています。

以下は2016年2月、3年前に『フィナンシャル・タイムズの実力』が出版された直後に開催したイベントレポートです。併せてご紹介させていただきます。


*[ご案内]4月17日(水)に四谷で開催されるこちらのイベントに登壇させていただきます。


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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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