ミルクボーイ漫才「P&Gマフィア」
角刈り「どうもー、ミルクボーイです」
マッチョ&角刈り「お願いしますー」
(マッチョ、前に移動して何かを受け取る仕草)
角刈り「あー、ありがとうございますー…今、モロゾフのプリンのガラス容器を頂きましたけどね」
マッチョ&角刈り「ありがとうございますー」
角刈り「こんなん、なんぼあっても良いですからね。関西人は、これに麦茶入れて飲むんですよ。水屋(台所にある棚)に10個は常備してますからね」
マッチョ「関西人はコップなんて買ったことないですから」
角刈り「ねー有り難いですよ、ほんとにね」
マッチョ「いきなりですけどね、うちのオカンが好きなマーケターの総称があるらしいんやけど、その名前をちょっと忘れたらしくて」
角刈り「好きなマーケターの総称を忘れた? どうなってんねん、それ」
マッチョ「色々聞くんやけどな、全然分からへんねん」
角刈り「分からへんの? ほな俺がね、おかんの好きなマーケターの総称ちょっと一緒に考えてあげるから、どんな特徴ゆうてたか教えてみてよ」
マッチョ「アメリカ合衆国オハイオ州に本拠を置く、世界最大の一般消費財メーカー出身のプロマーケター集団やねんけど、メーカー名よりもブランド名の方がより知られてるらしいねん」
角刈り「おー…P&Gマフィアやないかい。その特徴はもう完全に、P&Gマフィアやがな。SK-ⅡがP&Gのブランドやと知った時は衝撃やってんから。ブランドとメーカーがマッチしてないんよ」
マッチョ「P&Gマフィアなぁ」
角刈り「すぐ分かったやん、こんなん」
マッチョ「でも、これちょっと、分からへんのやな」
角刈り「何が分からへんのよ」
マッチョ「いや俺も、P&Gマフィアと思ってんけどな」
角刈り「いや、そうやろ?」
マッチョ「オカンが言うには、総称と見た目が完全に一致していて、めちゃくちゃ怖い姿して夜の街を闊歩してるって言うねんな」
角刈り「あー…ほなP&Gマフィアと違うかぁ。マフィアとは言え、吉野家の伊東正明さんも、ナイアンテックの足立光さんも、キリンビールの山形光晴さんも温厚そうな顔してるもんね。目の奥は笑ってないけど」
マッチョ「そやねん」
角刈り「だから、このネタもどこまで書いて良いか正直ビビってますよ。でもアホのフリして最後まで書き切りますからね。元USJの森岡さんぐらいちゃうか、刀が大好きって公言してマフィア感が出てるのは。でも本人は、某洋菓子店のシュークリーム大好きやからね。かわいいんよ」
マッチョ「そうそうそう」
角刈り「元P&Gの音部大輔さんもね、今でこそ坊主にヒゲでマフィアっぽいけど、14年前に神戸大学経営学部主催の講演会で、ネスレコンフェクショナリー(当時)の高岡社長、神戸大学の石井淳藏さん、BCGの内田和成と並んで写真に写ってたんやけど、その頃の方がマフィアっぽいんよ」
マッチョ「せやなぁ」
角刈り「会場が神戸だけにね、僕もちょっと震えました。たぶん本人的には今の格好はオシャレ坊主やと思ってはるんちゃうかな。僕はすごく素敵やと思うよ」
マッチョ「そやねんな」
角刈り「P&Gマフィア側もね、リアルなマフィア感求められたら、荷が重いよ〜! それに本人たちも自らマフィアは名乗ってないからね」
マッチョ「そやねん、そやねん」
角刈り「ほなP&Gマフィアちゃうがな」
マッチョ「そやねん」
角刈り「オカンは他に何て言うてたのよ」
マッチョ「オカンが言うには、すぐに市場を定義したがるらしいねん」
角刈り「ほー…P&Gマフィアやないかい。P&Gマフィアは直ぐに私たちの戦っている戦場はどれくらいなのかと定義して、市場を拡大するか、軸をズラすか、とにかく新規顧客を増やそうとすんのよ。ほんで認知度がどれぐらいで、第一想起がどれくらいでって人間の脳をハックしおるからね」
マッチョ「分からへんねん、でも」
角刈り「何が分からへんの。USJを"大人が集まる映画のテーマパーク"から"エンタメの総合テーマパーク"に変貌させた手腕はさすがよ」
マッチョ「そやねん」
角刈り「消費者をセグメントで分けてターゲティングする手法が持てはやされていた時代に、自社ブランドのプレファンス(消費者の選好性)を狭めてはいけないと言い切る姿勢に好感を抱いたよ。当時は、関西風情が何言ってんのって感じやったけど、結果出たら皆さん褒めちぎったからね」
マッチョ「でも、オカンが言うには、クリエイティブなんかAIで大量生成させたら良いって力説してるねん」
角刈り「ほなP&Gマフィアちゃうやないかい。彼らはロジックより感情が大事だとわかってるからね。インサイトがすごく重要やから」
マッチョ「そやねん」
角刈り「元P&Gの松山一雄さんがアサヒビールの取締役に変わって、CMなんか大きく変わったもの。菅田将暉さん中村倫也さんが登場して”ビールを飲む理由”に変わったわけよ。明らかに「First Moment of Truth」を意識してたんとちゃう? そういうのはAIにできひんからね、できるって言うてんのはサイバーエージェントぐらいやから」
マッチョ「そやねんそやねん」
角刈り「画像とタイトルの組み合わせでABテスト走らせて、CVRが良い広告のみ生存させるロジックやけど、結局は最初にどの画像を選ぶか、タイトルは何をするかが人間が考えなあかんから。CVR1%あげる改善ができたとしても、CVR100%あげる改革はできひんから」
マッチョ「そやねんそやねん」
角刈り「そういうカラクリやから」
マッチョ「そやねんな」
角刈り「P&Gマフィアちゃうがな。他に、なんか言ってなかった?」
マッチョ「会社辞めたら、みんなマーケティングのカンファレンスに登壇し出して、いつの間にか体験本を出すらしいねん」
角刈り「P&Gマフィアやないかい。みんな森岡さんのUSJ本が走りやと勘違いしてるけど、実際は大先輩の和田浩子さんが走りやから。『すべては、消費者のために。』は2006年よ。こちらも名著ですよ」
マッチョ「そやねん」
角刈り「書籍になるほどの体験本なんて、出せるサラリーマンそういませんよ。みんな憧れてるよ」
マッチョ「分からへねん、だから」
角刈り「なんで分からへんの、これで」
マッチョ「俺もP&Gマフィアと思うてんけどな」
角刈り「そうやろ」
マッチョ「オカンが言うには、CRMを導入して運用してアップセルできてこそマーケティングって力説してるらしいねん」
角刈り「ほなP&Gマフィアちゃうやないかい。彼らはCRM的なアプローチに対して、ものすごく懐疑的な目を向けてるのよ」
マッチョ「せやねん」
角刈り「P&Gマフィアの中でも意見は分かれるやろうけど、足立光さんなんかCRMは幻想と切り捨てたわ。でも、大炎上したんやから。九州のマーケターが東京を殲滅せんと出征するんちゃうかと言われたぐらいやからね。炎上の臭いを嗅ぎつけた切り込み隊長・山本一郎さんまで出るくらいよ」
マッチョ「せやねんせやねん」
角刈り「ただ、ロイヤリティマーケティングはどこまで有効なんかは学術的に検証せなあかんわ。単品通販でよくあるダイレクトマーケティングも、ブランディングの科学で語られた『ダブルジョパディの法則』『購買行動的成果の法則』に近しいところあると俺は睨んでるねん」
マッチョ「せやねん」
角刈り「実際、ブランディングの科学で語られた購入回数のヒストグラムって、元USJ森岡さんの「確率思考の戦略論」で登場する『負の二項分布』と一緒やねんな。継続期間を延長させるという意味ではCRM大事やねんけど、実際のところは、新規顧客の獲得やCV時のクロスセル、めっちゃやってるわけでしょ?」
マッチョ「せやねんなぁ」
角刈り「話が脇道に逸れるんやけど、一説によると、ブランディングの科学が世に出る時、多くのP&Gマフィアがついに…と思ったらしいわ。監修に携わった加藤巧さんもP&Gマフィアやし、彼らがどんどん惜しみなくノウハウを提供してくれるから、僕らも感謝せなあかんよ」
マッチョ「せやねん」
角刈り「ほな、P&Gマフィアちゃうがなほな。他に、もうちょっとなんかゆうてなかった?」
マッチョ「フレームワークとか使いがちやねんて」
角刈り「P&Gマフィアやないかい! パーセプションフローモデルに、9セグマップ、POX、3D、いろんなフレームワーク発明されてるよ! いかに皆んなが汎用性も再現性も高いマーケティング手法を開発しているかが分かるわ。発見してるのは心理やのに、その手法は科学なんよ」
マッチョ「分からへねん、でも」
角刈り「なんで分からへんのこれで」
マッチョ「俺もP&Gマフィアと思うてんけどな」
角刈り「そうやて」
マッチョ「オカンが言うには、そのマーケターの人たちが得意とするのはB2Bマーケティングやねん」
角刈り「ほなP&Gマフィアちゃうやないかい、おそらくは才流さんかベイジさんや! P&Gマフィアはいろんなジャンルで活躍されてるから、実際にはB2Bマーケティング界隈にもマフィアはおるんやろうけど、書籍出されている人の大半はB2Cに焦点絞ってるねん」
マッチョ「そやねんそやねん」
角刈り「実際、概念的にはB2BやB2Cに共通ではあるんやけど、いざ手法に関しては違うからね。彼らもB2Bマーケティングやれまっせ言うかもしれんけど、正直、ちょっと間引かないかんところはあるんちゃう?」
マッチョ「そやねん」
角刈り「ほなP&Gマフィアちゃうやないかい! もうちょっと、なんかゆうてなかった?」
マッチョ「彼らのボスは、上司じゃなくて顧客らしいねん」
角刈り「P&Gマフィアやないかい! P&Gマフィアは顧客への理解に執念持って取り組んでるのよ。吉野家の伊東さんなんて現役の頃、訪問調査で顧客の家に行って、玄関見ただけでどんな洗剤使っているかわかったって豪語するくらいやねんから」
マッチョ「そやねんそやねん」
角刈り「彼らのおかげでマーケティングリサーチの魅力が改めて発掘されたのに、リサーチ会社側が三者連続見逃し三振かましてんねんから。どんだけマーケティングセンス無いのよ」
マッチョ「でも、分かれへんねん」
角刈り「分からへんことない、おかんの好きなマーケターの総称はP&Gマフィアです!」
マッチョ「でもオカンが言うにはP&Gマフィアではないって言うねん」
角刈り「ほなP&Gマフィアちゃうやないかい! オカンがP&Gマフィアではないと言うんやから、P&Gマフィアちゃうがな」
マッチョ「そやねん」
角刈り「先言えよ! 伊東さんを真似て、玄関のドア開けて何か考える仕草してる時、どう思っててんお前」
マッチョ「申し訳ないよ、だから」
角刈り「ホンマに分からへんがなこれ、どうなってんねんもう」
マッチョ「オトンが言うにはな、電通ちゃうか?って言うねん」
角刈り「いや絶対ちゃうやろ! もうええわ!」
マッチョ&角刈り「ありがとうございましたー」